新型EQSのレベル3は手放し運転も緊急回避技術も超自然! 260億円投資したメルセデス・ベンツの研究施設に潜入

  • 筆者: 竹花 寿実
  • カメラマン:メルセデス・ベンツ日本
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アンチロック・ブレーキ・システム(ABS)をはじめとする、今当たり前の安全技術を数多く生み出してきたメルセデス・ベンツ。現在、ほとんど多くの自動車メーカーは自動運転技術の開発に取り組んでいるが、メルセデス・ベンツも実現を見据えた技術開発を進めている。そこで今回はメルセデス・ベンツがドイツ郊外に建設した最新の研究施設に潜入し、まもなく発売予定のレベル3車両をテスト。一体どんな仕上がりとなっているのか? 研究施設の紹介とともに、今後投入される見込みの運転支援システムをご紹介する。

目次[開く][閉じる]
  1. メルセデス・ベンツの開発拠点はドイツ郊外に存在
  2. 投資額は約260億円! 全長68kmのテストコースはさまざまな環境を再現
  3. 新型EQSはマイナーチェンジでレベル3に対応! 制御が超自然
  4. 自動運転が当たり前になっても主役は人!

メルセデス・ベンツの開発拠点はドイツ郊外に存在

スイス・チューリッヒで7月下旬に開催されたメルセデス・ベンツ 新型EQSの国際試乗会では、最終日午後にチューリッヒ空港へ向かう前に、特別プログラムが用意されていた。

チューリッヒから北へ110kmほど走り、国境を越えたドイツ・バーデン=ヴュルテンベルク州のイメンディンゲンという小さな街に向かった。そこにあるのはメルセデス・ベンツの最新開発拠点である「TTC(テスト&テクノロジー・センター)」。ここでメルセデスの最新自動運転技術である「DRIVE PILOT」を体験したのだ。

投資額は約260億円! 全長68kmのテストコースはさまざまな環境を再現

元々は旧ドイツ軍の訓練施設があったイメンディンゲンの丘陵地帯にあるTTCは、計520ヘクタールもの面積を持つ巨大施設で、2015年に建設がスタートし、2018年末に完成。ちなみに東京ドームは約4.6ヘクタールのため、その10倍以上の敷地となる。

メルセデスは、SUVやEVのラインアップ拡大や、市場のグローバル化による世界中の安全基準への対応など、近年開発作業が増加したため、2010年代半ばから開発施設を増強しているのだ。今回訪れたTTCにもこれまでに総額2億ユーロ(260億円)以上も投資しているという。

市街地コースからオフロード路面まで! 世界のあらゆる道路を再現してテスト

TTCの中核は多岐にわたるテストコースである。以下は主なコース。

・Berthaエリア:10万平方メートルの面積を持つ総合試験路面

・4×4モジュール:傾斜率が40%と70%の斜面があるオフロードコース

・アルプス耐久コース:ドイツ南部シュヴァーベン地方のアルプスの急勾配の道を再現したコース

・ハンドリングコース:ニュルブルクリンクを模した高低差31m、長さ4.1kmのコース

・スキッドパッド:散水設備を備えた直径260mの旋回路

・高速周回路:1周4kmのオーバルコース

・ラフロードサーキット:傾斜率10~20%、全長7.1kmの未舗装路

・コンフォートモジュール:快適性の評価に用いる様々な路面を再現したコース

・市街地コース:Car-to-Xコミュニケーションや様々な運転支援システムのテストに用いるコース

・直線路:横風テストなどを行う直線コース

・ウェットハンドリングコース:ウェット路面を再現できるハンドリングコース

世界随一の巨大施設! 自動運転技術もテスト中

これら多種多様なテストコースの総延長は、なんと68kmにもおよぶ。今回は施設内の比較的高い場所から眺めてみたが、まるで迷路のように複雑に入り組んだコースが、見渡す限り眼下に広がり、もはや地上からではその全貌を把握できない規模だ。

私は過去に日米欧で多くのテストコースを訪れた事があるが、ここまで巨大な施設は見たことがない。

新型EQSはマイナーチェンジでレベル3に対応! 制御が超自然

今回は取材時間が限られていたため、EQSに来年から設定される予定のDRIVE PILOTの機能を、高速周回路で助手席から体験する事しか叶わなかった。DRIVE PILOTは、高速道路上で車速が60km/hの渋滞時にのみ、ドライバーから運転の主導権をクルマ側にハンドオーバーできるSAE(米国自動車技術者協会)が規定するレベル3の自動運転技術である。

>>イヤな渋滞が快適な時間に!? 世界初の自動運転レベル3を搭載したレジェンドを試してみた

操作は簡単! レベル3稼働中はスマホ操作もOK

走行条件が整っている時に、ステアリングホイール上の親指の位置に備わるボタンを押すと、DRIVE PILOTがアクティブになる。

すると、クルマは先行車両に追従して走り始める。これだけだと従来のレベル2のADASであるACC+LKAと変わらないが、DRIVE PILOTでは、ドライバーはディスプレイで動画コンテンツを楽しんでも良いし、ケータイでSNSをチェックしてもOK。つまり、運転行為から解放され、他のタスクが可能になるのである。

割り込み車両が出現してもスムースに回避! 緊急時は路肩へクルマ自ら移動

DRIVE PILOTによる自動運転中は、隣の車線からクルマが割り込んできても、スムーズに車間を空けて衝突を回避し、路肩に故障車が停まっていれば、何事もなかったように避ける。

また車速が30km/h以下になると、路肩側(追い越し車線走行中は中央分離帯側)へ自動的に寄り、緊急車両通行のための道「Rettungsgasse(レットゥングスガッセ)」を空ける。

日本の渋滞時でも活躍必至の仕上がり

それらの動きには全く不自然なところがない。ドイツのアウトバーン上で使用しても周囲のドライバーは、自動運転とは気付かないだろう。

現在はコロナ禍で交通量は少ないかもしれないが、例年であれば8月のアウトバーンは大渋滞となる。そんな時にこのDRIVE PILOTがあれば、とてもありがたいと感じるはず。日本でも盆暮れ正月の帰省時にぜひ使ってみたいと思えた。

>>メルセデス・ベンツ 新型EQSはフル充電で780km走行可! 注目は巨大モニター抜群の操作性と全長5m超のサイズを感じさせない運転のしやすさにあった

自動運転が当たり前になっても主役は人!

これほど洗練されたDRIVE PILOTを開発できたのも、TTCの存在が大きく寄与しているのは間違いない。もちろんリアルワールドでのテストも必要だが、その前段階において、TTCが大きな役割を果たしている事は容易に想像できる。

たとえEVが普及し、AIがクルマの中心になっても、クルマを使う主体は人間であり、リアルワールドで安全、快適に移動するためのクルマを、メルセデスはまさに「最善か無か」という思想の元で追求し続けている。そんな事をTTCで改めて感じた。

【筆者:竹花 寿実】

メルセデス・ベンツ/Sクラス
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新車価格:
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樺田 卓也 (MOTA編集長)
監修者樺田 卓也 (MOTA編集長)

自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。

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