[試乗]世界一厳しい日本のディーゼル排ガス規制に適合/メルセデス・ベンツ Cクラス「C220d」ミニ試乗レポート(4/4)
- 筆者: 渡辺 陽一郎
- カメラマン:オートックワン編集部
世間を騒がせる「VWのディーゼル問題」について、ここで改めて考える
VWの問題については、同社に帰責性が生じるのは当然だ。排出ガステストにおいて、そのパターンを検知すると不正な制御に切り替えて規制をクリアできるように細工していた以上、責任は取らねばならない。
このことを前提に今後明らかにすべきは、なぜ通常の走行では違う制御にする必要があったのか、という点だ。違法な制御を行った理由を明確にせねばならない。規制をクリアできる制御で一般の走行を行うと、排出ガスを浄化する機能の耐久性が危ぶまれたり、動力性能、燃費性能、快適性などが悪化することがあったと推測されるが、この事実関係が明らかにされないと話は先に進まない。
そして何よりも大切なことは、今後の再発防止だ。ほかのメーカーの対応を精査することも必要だが、VWが違法に至った理由と経緯を明らかにして、その内容をユーザー、ディーラー、メーカー、サプライヤーが幅広く共有することが求められる。
責任の所在も同様だ。排出ガスの浄化機能は高度な技術だから、数多くの人達がかかわっている。社会通念でとらえて、直接関与していなくても、違法な制御に薄々気付いていた人は少なくないと思われる。
エンジニアとも一体になって規制自体の見直しを図る必要も
何事によらず、いろいろな人達が「これはマズイんじゃないのかなぁ」と見過ごしている間に、事態が悪い方向へ進むことは多い。理由と経緯を明らかにした上で、再発防止の対策を講じる必要がある。理由と経緯次第では、規制の方法自体を、将来的に見直す必要も生じるだろう。
いかなる理由があってもVWの帰責性が払拭されることはないが、再発防止という観点に立てば、開発者の意見をある程度は汲み取ることも考えたい。だからといってメーカーの意見ばかりを尊重していたら都合の良い方向に進む危険があるが、実情とのズレや制度の矛盾点などについて、開発者の意見を参考にしながら改善すべき点は、例えば日本のJC08モード燃費に基づく燃費基準とエコカー減税の内容を見ても数多くある。
輸入ディーゼル普及のためにも、VWのさらなる説明が求められる
今回の一連の騒動を受けて注意しなければならないのは、東京都が1999年に「ディーゼル車NO作戦」を展開した時のように、世間の考え方がディーゼル技術を否定する方向に進むことだ。
当時と違って極端な状態に陥ることはないと思うが、今の乗用車におけるクリーンディーゼルが、メルセデス・ベンツなどのいわゆるプレミアムブランドとセットになって普及を開始していることには不安を感じる。言い換えれば、ディーゼル技術が一種の嗜好品のようになっていて(ハイブリッドにも当てはまるが)、気分的に選ばれなくなるのが心配だ。
日本でも1980~1990年頃にはディーゼル乗用車が多く、いわば普通の存在だったが、今は状況が違う。事実関係を曖昧にしておくと、VWもディーゼル技術も、これからイメージが悪くなるばかりだ。「C220d」をはじめ、今後も続々と登場する予定の輸入ディーゼルモデル普及のためにも、VWには今、分かりやすい説明が求められている。迅速に対応して欲しい。
[レポート:渡辺陽一郎]
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メルセデス・ベンツ新型Cクラス「C220d AVANTGARDE」[FR] 主要諸元
全長x全幅x全高:4690x1810x1435mm<4715x1810x1430mm>/ホイールベース:2840mm/車両重量:1650kg<1690kg>/駆動方式:後輪駆動(FR)/エンジン種類:直列4気筒 ターボチャージャー付 直噴ディーゼル「BlueTEC」エンジン/総排気量:2142cc/最高出力:170ps(125kW)/3000-4200rpm/最大トルク:40.8kg-m(400N・m)/トランスミッション:「9G-TRONIC」電子制御9速オートマチックトランスミッション/燃料消費率:20.3km/L[JC08モード燃費]/タイヤサイズ:225/50R17<(前)225/45R18(後)245/40R18>/車両本体価格:5,590,000円[消費税込]
[※< >内はAMGライン装着時の数値]
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