マツダは何故ミニバンを諦めたのか、3列シートSUVのCX-8で貫くモノ造り哲学(1/2)

マツダの販売現場の声は

「ミニバンのMPVに、2.2リッターディーゼルのSKYACTIV-Dを積んで欲しい」。2012年、SKYACTIV-Dを搭載した初代CX-5が発売された後、全国各地のマツダ販売ディーラーからそうした声が挙がっていた。

マツダの社内用語「第6世代商品群」における真骨頂、最新ディーゼルエンジンとマツダのモノ造りが各所に生きているMPVとの融合を多くの人が望んでいた。

そうこうしていると、マツダの新型多人数乗車モデルに関する噂が飛び交うようになった。この新型モデルは、待ちに待った最新ミニバンなのか? メディアからは本サイトを含め、マツダに対する期待を込め、様々な憶測記事が出た。

>>マツダ新型CX-8はミニバンの代わりになる?(画像20枚)

しかし、スクープ記事でのスパイフォトやスパイビデオが世に出る頃には、新型多人数乗用車はCX-5ベースの3列シートSUV”新型CX-8”であることが判明。これによりマツダの大型ミニバン開発が終焉したことを、我々メディア、マツダ販売ディーラー、そして買い替えを考えていたMPVオーナー、さらにはプレマシーなどのマツダミニバンオーナーたちが認識するに至った。

そして「やっぱりマツダは、スバルのように北米志向になるから、アメリカ人好みのミッドサイズSUVとしてCX-8は必然だ」といった論調が自動車関連メディアで常識化するようになった。果たしてそれは、事実なのだろうか?

アメリカでは新型CX-8は売らない

2017年12月4日、横浜市神奈川区内の京浜工業地帯にあるマツダの研究開発拠点で、新型CX-8のメディア試乗会が始まり、筆者はその初日に参加した。

四輪駆動のAWDとFFの2WDをそれぞれ1時間強、横浜市内の一般道と首都高速で試乗した。試乗の前後で、商品企画の全般、デザイン、パワートレイン、衝突に対するマツダの取り組みと考え方、そしてパッケージングついて各部門のエンジニアから詳しい説明を受けた。

そうした中、現時点では新型CX-8の仕向け(販売国・販売地域)として発表しているのは日本のみで、北米市場などについては導入の予定はないということが改めて分かった。北米市場では、CX-5とCX-9で対応するという。

その上で、新型SUVのCX-8について「日本市場の社会状況を十分に理解して開発した」と、日本市場最優先を主張していた。パッケージングを担当した企画設計部の説明資料には、”パッケージング開発の想い”として、その一行目に次のような言葉が並んだ。

「CX-8は、”多人数乗車”と”魂動デザイン”、”走る歓び”を、高次元で両立することに挑戦」。

これを筆者として換言すれば「マツダのブランド戦略、および企業・デザイン哲学において、自社開発する多人数乗用車でスライドドア式のミニバンは作らない」となる。

新型CX-8のボディサイズの設定についてマツダは「日本国内の道路環境・駐車環境に対応」という前置きをして、「全長4900mm以下、全幅が1850mm以下とした」と説明する。そして、課題となるのが全高だ。

言うまでもないが、全高を決める最大の要因は室内空間への配慮だ。空間設計の考え方としてマツダは「乗員の体格、着座位置の分析から最適値を見極め、スタイリング/低重心化に活かす」ことを念頭に置いた。

具体的には、乗員の体格の上限値を、1列目で身長189cm、2列目で186cm、そして最も狭い3列目でも170cmとした。これらの値を下に、着座位置(ヒップポイントの高さ)、頭上空間(ヘッドスペース)、足元スペース(レッグスペース)を算出したという。

その結果、2列目のレッグスペースは足首の角度が130度以下の状態でミニバンのMPVよりも9mm、そして3列目では28mmも広がった。

また、2列目シートは、6人乗り用に単独のシートとなるキャプテンシートに加えて、7人乗り用のベンチシートを設定し、ミニバンユーザーに対する配慮をした。

>>次ページは:新型CX-8はマツダブランド確立のため?

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桃田 健史
筆者桃田 健史

日米を拠点に、欧州、BRICs(新興国)、東南アジアなど世界各地で自動車産業を追う「年間飛行距離が最も長い、日本人自動車ジャーナリスト」。自動車雑誌への各種の連載を持つ他、日経Automotive Technologyで電気自動車など次世代車取材、日本テレビで自動車レース中継番組の解説などを務める。近著「エコカー世界大戦争の勝者は誰だ?」(ダイヤモンド社)。1962年東京生まれ。記事一覧を見る

樺田 卓也 (MOTA編集長)
監修者樺田 卓也 (MOTA編集長)

自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。

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