CX-5の特別仕様車「フィールドジャーニー」の設定はユーザーの幅を広げるためだった! 内外装だけでないオフロードへのこだわりとは

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マツダ CX-5といえば、どんなイメージだろうか。

「都会的で洗練されたSUVでオフロードはあまり似合わない」と思う人は多いのではないだろうか。

しかし、2021年11月8日(月)に行われた商品改良によってそんなCX-5に「フィールドジャーニー」というアウトドア寄りの特別仕様車が登場した。都会の街並みに映えるSUVになぜアウトドアライクなグレードを用意したのだろうか。

2代目CX-5を所有するジャーナリストの工藤貴宏さんに解説してもらった。

目次[開く][閉じる]
  1. CX-5は都会の街並みに似合うクーペライクなSUV
  2. 内外装はアウトドアウェアのような雰囲気に仕立てられている
  3. デザインだけでなく走行モードに「オフロードモード」も用意!
  4. アウトドアユーザーにも親しみを持ってもらうための新しいグレード追加

CX-5は都会の街並みに似合うクーペライクなSUV

実際に2代目CX-5を所有しているボクはオフロードには似合わない思っているし、同様に感じている人も多いのではないだろうか。トヨタでいえばアクティブな「RAV4」よりもエレガントな「ハリアー」といったイメージだ。

そう思わせるのは単に内外装のデザインだけではない。CMやカタログ写真などでマツダ自身がイメージを作り上げてきたブランディングの結果でもある。だからこそ、多くの人がCX-5のことを都会が似合う上質なSUVだと認識しているのだ。

それは決して悪いことではない。クルマを売るにはキャラクター付けが重要で、そのクルマを買ったらどんな生活になるのかが見えやすいほうがいい。せっかく高い買い物なのだから、多くの人はクルマ購入に「そのクルマを所有することによるライフスタイル」を期待するのだ。

CX-5を買ったら都会的でおしゃれな生活になるというイメージは大切。実際にはクルマを買っただけでは生活の変化など起こらないことがほとんどだが、そう思わせることが大切なのである。

しかし、そんなイメージ戦略は突き詰めるとそのイメージに溺れてしまうこともある。CX-5でいえば、「キャンプへ行くのに都会的なCX-5は似合わない」とか「レジャー中心だからCX-5はちょっと違う」というすれ違いで、ユーザーを逃しかねないのだ。

というわけで、今回のマイナーチェンジの大きなトピックである新たな特別仕様車「フィールドジャーニー」の設定につながる。

内外装はアウトドアウェアのような雰囲気に仕立てられている

マツダによると、フィールドジャーニーのテーマは「家族や仲間とともに日常生活もアウトドアライフも楽しむため、都会と自然を自由に行き来するお客様のためのクルマ」。

他のグレードとの違いは、まず内外装のデザインだ。

エクステリアは、シルバー塗装のフロント&リヤバンパーガーニッシュやサイドガーニッシュ(いずれも車体下部の加飾)を採用することで、アクティブなイメージを創出。CX-5の標準タイプに対して、無骨さが増している。

室内に入るとシートステッチやパイピング、そしてエアコンルーバーベゼルにライムグリーンを採用して、アウトドアウェアのような雰囲気に仕立てている。あのエレガントだったCX-5の室内空間が、ちょっとしたアクセントの追加だけでカジュアルに感じられるのだ。

ただ、補足しておきたいのはCX-5の持つ上質さがしっかり保たれているということ。上質かつカジュアルという、絶妙なバランスなのが嬉しい。

デザインだけでなく走行モードに「オフロードモード」も用意!

フィールドジャーニーの面白いところは、単に内外装のコーディネートだけでお茶を濁していないことだ。今回のマイナーチェンジから採用された新アイテムの、「Mi-Drive(ミードライブ)」という走行モード切り替えセレクターは、フィールドジャーニーだけに他モデルにはない「オフロードモード」が追加されている。

これは従来4WD車に用意されていた「オフロード・トラクション・アシスト」の発展版。低速域におけるスタックからの脱出を想定していた“トラクションアシスト”に対し、オフロードモードでは高速域まで含めたAWDのトラクション向上、Gベクタリングコントロールのオフロード制御、駆動力を最大化するトラクションコントロール制御、急な登りの坂道発進では発進トルクを増やすためにアイドリング回転を上げる制御、そしてガソリン車にはトルク伝達を高めるAT制御と違いは多岐に及ぶ。

この新しいロジックをフィールドジャーニーのためにだけに開発したというのは、ちょっと驚きだ(のちに他仕様や他車への展開があるにせよ)。

ちなみにこのオフロードモードは制御、つまりソフトウェアだけの違いかと思いきや、後輪へ大トルクを伝達する際の応答性とコントロール性を高めるため(より正確に言えば大トルクを送り始める際のショックを抑えるため)にトランスファー(トランスミッションから後輪へトルクを送るためにプロペラシャフトへと出力するパワーテイクオフと呼ばれる部分)にダンパーが追加されるなど、ハード的にも異なる。

また、足元を見るとオールシーズンタイヤを標準装着しているのも他グレードとの違いで新しい。狙いは悪路でのグリップを高めるためだが、多少の雪なら走れるし、水が溜まった路面に強いのもメリット。ユーザーメリットは少なくないとボクは考えている。

さらに荷室も特別な仕掛け。床面ボードはリバーシブルで裏返すと防水だから、濡れたり汚れたアウトドアギアも気兼ねなく積める。さらに、その下の床下ボックス内も防水処理と、実用性を高めているのだ。

アウトドアユーザーにも親しみを持ってもらうための新しいグレード追加

というわけで、フィールドジャーニーを用意した狙いがどこにあるのか。それはより広い範囲の人にCX-5へ振り向いてもらうためである。都会的なイメージだけでは心を捉えることができなかった、アクティブな人たちにもCX-5に親しみを持ってもらおうというわけだ。

マツダの事情に詳しい読者ならば、かつては「ボンゴフレンディ」のオートフリートップでアクティブなユーザーを掴んだマツダながら、近年はそういったユーザーをあえて遠ざける戦略をとっていたように感じていたのではないだろうか。しかし、どうやら向きが変わってきたようだ。

「タフスポーツスタイル」で作り出した新しい選択肢を生み出した

実は、そんな変化の兆候は少し前からあった。それはオフロード・トラクション・アシストがはじめて組み込まれた2019年末の改良時のこと。その際にディーラーオプションとして「タフスポーツスタイル」というエクステリアアイテムが追加されたのだ。

内容は前後バンパー下とルーフレールにクロームの部品を追加することだが、これを装着することによってわずかながらアクティブな雰囲気を強めたのである。

このときに担当の開発主査は「新しい選択肢です。これまでのCX-5とは少し方向が違うでしょう?」とその変化を隠していなかった。今回のフィールドジャーニーは、そのベクトルをさらに伸ばした、CX-5の新しい世界観といえるだろう。

【筆者:工藤 貴宏】

マツダ/CX-5
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新車価格:
291万円422.5万円
中古価格:
53.6万円453.4万円

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工藤 貴宏
筆者工藤 貴宏

クルマ好きが高じて在学中から自動車メディア業界に足を踏み入れ、気が付けば四半世紀。自動車雑誌編集者から編集プロダクション勤務を経てフリーランスの自動車ライターとして独立。自動車関連の雑誌やウェブで活躍している。モットーは「そのクルマは誰を幸せにするのか」。使い勝手などユーザー目線の記事を得意とする。永遠のスポーツカー好きで愛車はフランス製のホットハッチとディーゼルエンジンを積んだSUV。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。記事一覧を見る

樺田 卓也 (MOTA編集長)
監修者樺田 卓也 (MOTA編集長)

自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。

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