ホンダ S660 Modulo X 試乗|ノーマルとの差は歴然!軽自動車で285万も納得の走り

モデューロの乗り味の原点は初代NSX!果たしてS660の走りは変わるのか!?

モデューロは、ホンダの純正アクセサリーの開発・販売を行なう「ホンダアクセス」のエアロパーツやサスペンション、ブレーキ、ホイールと言った機能系アイテムに与えられるブランド名である。ホンダ車のいい部分も悪い部分も知り尽くしたエンジニアが、量産の枠を超えて手掛けたアイテムは、「ノーマルの良さを研ぎ澄ます」と高い評価を受けている。

いい意味でも悪い意味でも過去を振り向かない(!?)ホンダと違い、モデューロには一貫したコンセプトがある。一つ目は運転に自信がある人だけでなく、ビギナーでも楽しめる走りであること。二つ目はテストコースやサーキットを基本にせず、あくまでも一般道を重視していること。そして三つ目は、スポーツカーだけでなく軽自動車やミニバンであっても同じ考えであることだ。

実はモデューロの乗り味の原点はドライビングの重要性を強く意識し、それを具体化させた初代NSXであることはあまり知られていない。

その技を後付けパーツで対応するのではなく、トータルパッケージで表現したコンプリートカーブランドが「モデューロX」だ。2013年に先代N-BOXにラインアップされて以降、N-ONEステップワゴンフリードに設定されており、どのモデルも高い評価を受けている。そして今回試乗したのが、第5弾モデルとなる「S660モデューロX」である。

S660モデューロXの開発コンセプトは「プレミアムマイクロスポーツ」

ベースとなるS660は2015年に登場。17年ぶりに復活したミドシップオープンマイクロスポーツとして話題となったが、ノーマルはこの3年間で特別な内外装のモデルが登場したのみで、走りの進化はなかった。

その一方で、ホンダ直系のワークス部隊である「モデューロ」と「無限」は様々なパーツを用意し、S660の世界観を広げた。無限は2016年にコンプリートカー「S660無限RA」を限定660台で発売したが、当然モデューロへの期待も大きかったそうだ。

そんなS660モデューロXの開発コンセプトは「大人のスポーツドライビングの歓びを叶える、もう一つのS660」。スポーツカーを気軽に味わえる「カジュアルマイクロスポーツ」なノーマルに対して、モデューロXは「プレミアムマイクロスポーツ」と言うわけだ。

操縦安定性を実現させる専用バンパーや専用サスペンションを採用

エクステリア

エクステリアは、グリル一体型専用フロントバンパーとリアロアバンパー、専用ガーニーフラップ付アクティブスポイラーなどが特徴となるが、単なるドレスアップ効果だけでなく、操縦安定性に寄与する機能部品なのだ。

実はノーマルは2011年東京モーターショーに参考出品された「EV-STER」のデザインを踏襲したため、空力的にはリアのリフト量が大きい。しかし、モデューロXはボディ上面/下面の空気の流れを味方にする形状を採用することで、前後リフト値を均等にしている。これらはデザイナーと評価ドライバーによって風洞実験と実走テストで煮詰められた物だ。

インテリア

インテリアはボルドー&ブラックでコーディネート、専用スポーツレザーシートやステアリング、チタンシフトノブ(NSX-RとシビックR/インテRのいい所取りの形状)、メーター、コンソールプレートなど、細かい部分まで手を入れることで、スポーティなだけでなく質の高さにもこだわっている。

フットワーク系

空力性能とバランスさせながらセットされたモデューロX専用のサスペンションは、減衰力5段階調整式にすることで、走行環境の変化への柔軟な対応とユーザーの好みに合わせて調整できる楽しみもプラスした。

また、剛性バランスまでこだわったアルミホイールは、モデューロX専用のステルスブラック仕様。止まる性能はドリルドローター&スポーツブレーキパッドが奢られる。

乗り比べてわかった!ノーマルモデルとモデューロXの違いは!?

試乗ステージはウエットが箱根の長尾峠、ドライが日本のニュルブルクリンクと呼ばれる“グンサイ”こと群馬サイクルスポーツセンターのクローズドコース。どちらも比較用としてノーマルにも試乗できた。

ステアリングフィールは、走りはじめから心地よいダルさを持ちながらも応答性が高く、いいベアリングに交換したかのような滑らかさを感じた。路面の凹凸を超える際のショックの吸収のさせ方も、軽自動車とは思えない質感の高さが印象的である。

しなやかな足の動きと快適性の高さから、筆者は減衰力5段階調整式サスペンションのセットは中間の「3」だと思っていたが、試乗後に「5」だと聞かされビックリ!ただ、それはモデューロXの序章に過ぎず、ペースを上げていくと違いはより明らかになるのだった。

ノーマルは限界域では意外とピーキーな特性(もちろん最終的に電子デバイスがカバーしてくれるが)なので、探りながらの走行となるが、モデューロXは4つのタイヤが路面にビターっと張り付きながらギャップもしなやかに吸収。コントロール性も高くクルマの挙動や限界が解りやすく、まるでトレッドが拡大されたような安心感がある。

また、タイヤの接地感の違いや路面から伝わる情報の的確さなどから、同じタイヤを履いているとは思えないほどの違いも感じた。

更にグンサイではクルマがフワッと跳ねるようなギャップがいくつかあるのだが、モデューロXは姿勢が全く乱れないので、ドキッとすることがない上に、ドライビングも楽。その結果、これまで躊躇していたコーナーも、冷静かつドンドン踏めるようになった(笑)。

つまり、クルマに対する信頼度が大きく向上しており、初心者には「安心感」、上級者には「懐の深さ」を感じさせる仕上がりなのである。これらの変化はサスペンションだけの効果ではなく、サスペンションの一部のように機能させているホイールや空気の力を味方にしたエクステリアデザインと、全てが上手にバランスして実現しているのだ。

モデューロパーツを後付けするのとは訳が違う!

今回、特別にモデューロXのホイールのみノーマル、フロントバンパーのみノーマルのモデルに乗せてもらったが、「ここまで変わってしまうの?」と言うくらい走りが変化。具体的にはホイールは「吸収性とタイヤの状況の解り易さ」、フロントバンパーは「空気の力は大事である」の差を実感した。モデューロXに乗る人は、このバランスを崩さないようなパーツ選びをしてほしい。

その一方で、口の悪い人は「市販のモデューロパーツを装着してお買い得にしたモデルでしょ?」と言うが、それは半分正解で半分間違いである。確かに市販のモデューロパーツも同じコンセプトで開発されているが、クルマ一台分でのセッティングのほうがストライクゾーンを真ん中にしやすい上に、バランスよく性能を引き上げられることが可能…と言うわけだ。

ノーマルから+66万4千円高でも十分納得!

また、これまでモデューロXでは背の高いモデルを開発してきたが、空力的に厳しいモデルで空力操安の知見を高めてきたことが、ディメンジョン的に有利なS660で更に活かされたことも大きいと言う。やはり“人”の力は大きいのである。

ただ、ハンドリングがここまでレベルアップすると、ノーマルと同じパワートレインでは物足りなさを感じるのも事実だ。クルマとしてのバランスを考えると、個人的にはこのままの状態で80~100psくらいのユニットを搭載しても何も問題はないと思っている。

更にブレーキは、タッチやコントロール性は非常に高いのだが、制動時にドリルドローター特有の「ゴーッ」と言う音が気になった。走りや内外装の仕上がりに対してアンマッチなので早急の改善を期待したい所だ。

とはいえ、S660モデューロXはノーマルの素性を活かしながら、より走りにこだわる人のために、ストライクゾーンを真ん中にしたモデルで、S660シリーズのフラッグシップにふさわしいモデルだと感じた。

価格はノーマル+66万4千円高の285万120円。「軽自動車にしては高い」と言う声も分かるが、個人的にはこの完成度の高さを体感したら、納得価格と言わざるを得ない。

[Text:山本 シンヤ/Photo:小林 岳夫]

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山本 シンヤ
筆者山本 シンヤ

自動車メーカー商品企画、チューニングメーカー開発を経て、自動車雑誌の世界に転職。2013年に独立し。「造り手」と「使い手」の両方の気持ちを“解りやすく上手”に伝えることをモットーに「自動車研究家」を名乗って活動をしている。西部警察は子供時代にリアルでTV放送を見て以来大ファンに。現在も暇があれば再放送を入念にチェックしており、当時の番組事情の分析も行なう。プラモデルやミニカー、資料の収集はもちろん、すでにコンプリートBOXも入手済み。現在は木暮課長が着るような派手な裏地のスーツとベストの購入を検討中。記事一覧を見る

樺田 卓也 (MOTA編集長)
監修者樺田 卓也 (MOTA編集長)

自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。

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