【比較】オデッセイ・エルグランド・アルファードハイブリッドを徹底比較 ~豪華な内外装と充実した装備が自慢のLサイズミニバン~(2/4)
- 筆者: 渡辺 陽一郎
- カメラマン:茂呂幸正
新たに開発された低床プラットフォームにより、天井が低く外観もスポーティ
ミニバンは床面の構造によって2種類に分かれる。今回取り上げる3車種については、すべて「フラットフロア」構造だ。燃料タンクをカバーできる位置まで床を持ち上げ、3列目まで平らに仕上げた。車内の移動がしやすく、3列目に座っても膝が持ち上がらないが、その代わりに天井は高くなる。
逆にフラットフロア構造を採用しない車種は、3列目の床が燃料タンクの張り出しで高く、1/2列目は快適でも、3列目は膝が持ち上がる。ただし天井は低く、走行性能では有利になる。
ホンダ オデッセイの場合、先代モデルまでは後者だったが、新型はプラットフォームを刷新してフラットフロア構造を採用、3列目の居住性を大幅に向上させている。
この変更を行った上で、オデッセイは、全高を試乗車のアブソルートEXで1685mmに抑えた。従来は、フラットフロア構造のミニバンはすべて全高が1700mm以上だったが、今回の新型オデッセイで初めて全高1600mm台の車種が登場した。先に、「全高が1680mmを超えるフラットフロア構造の車種」と述べたのも、今では1700mmでは線引きができないためだ。薄型の燃料タンクを開発し、背の高いミニバンの機能を備えながら床面と天井は低い。そのために外観もスポーティだ。
両側スライドドアを装着しながら、ワゴンのように見える。特にアブソルートは、エアロ形状のバンパーや専用グリルを装着して、外観を精悍に仕上げた。
エンジンは直列4気筒の2.4リッターのみだが、アブソルートは直噴式を採用。動力性能が高く、燃費も良好だ。
内外装を豪華に仕上げながら、日産らしい走りのイメージも追求
背の高いLサイズミニバンを人気のジャンルに育てたのが、1997年に登場した初代エルグランドだった。存在感の強いエクステリア、広くて豪華な室内、V型6気筒エンジンの搭載など、趣味の対象として選べるミニバンであった。
2002年には2代目に一新されたが、プラットフォームは初代と同じで後輪駆動だったこともあり、設計の古さを感じた。その後、前輪駆動で新登場したトヨタ アルファードが販売攻勢を仕掛けたこともあり、エルグランドの人気は伸び悩んだ。
そこで改めてクルマ造りを見直して、2010年に登場したのが現行型だ。前輪駆動を採用し、内外装の質感が高められて「フーガのミニバン仕様」という雰囲気を醸し出している。
グレード構成は、標準ボディとエアロパーツを備えたハイウェイスターで、前者は最廉価の250XGのみ。大半がハイウェイスターになる。2014年1月のマイナーチェンジでは、ハイウェイスターのフロントマスクをさらに大型化し、メッキグリルを際立たせた。
全長は4945mmと長く、全幅も1850mmとワイドだが、全高は1815mmだからアルファードに比べて背が低い。外観にはミニバンのボリューム感を漂わせながら、エアロパーツの装着と相まってスポーティな感覚も併せ持つ。
このあたりは、人気の高いトヨタのアルファード/ヴェルファイアとの直接対決を避けたところでもあるだろう。豪華さと走りの良さをアピールして、日産車の持ち味も明確に打ち出した。
エンジンはV型6気筒の3.5リッターと、直列4気筒の2.5リッターを設定。今回は2.5リッターの最上級グレードとなる250ハイウェイスタープレミアムを試乗した。
存在感ある背高のボディとメッキグリルの組み合わせ、ハイブリッドモデルも設けられた
トヨタは1990年代の後半にグランビア、グランドハイエース、レジアスといったLサイズミニバンを用意したが、日産 初代エルグランドの人気に太刀打ちできなかった。
そこで2002年に統合車種のアルファードを発売。駆動方式をFFに改め、乗降性や居住性を向上。内外装は「打倒!エルグランド」とばかりに豪華なものへと仕上げられた。結果、アルファードは好調に売れて販売合戦にも勝利した。
2008年には2代目になり、トヨペット店の取り扱いはアルファード、ネッツ店はヴェルファイアと車種を分割している。アルファードとヴェルファイアは、異なるフロントマスクを採用することで区別された。
今回取り上げるアルファードは、メッキグリルを目立たせながら高級指向に仕上げられている。ヴェルファイアは少しワルっぽい表情だが、アルファードは品行方正な印象だ。トヨペット店は、かつてコロナとマークII(今はプレミオとマークX)を扱ったことで法人ユーザーも多く、ビジネスユースまで視野に入れてデザインされた。
全高は1900mm前後に達し、ミニバンの中でも特に背が高い。フラットフロア構造の採用で床が高くなった結果でもあるが、大型メッキグリルとの併用で、外観の存在感も強調している。この見栄えの良さも人気の秘訣だ。
エンジンの選択肢は、直列4気筒の2.4リッター、V型6気筒の3.5リッター、さらに2.4リッターをベースにしたハイブリッドも選択できる。ハイブリッドは後輪にもモーターを装着して4WDを成立させた。
今回試乗したグレードは、ハイブリッドSRプレミアムシートパッケージ。エアロパーツの装着で外観をさらに際立たせ、内装も豪華だ。
デザイン・スペックの総評
今回取り上げた3車種は、エンジンの排気量がすべて2リッターを超える。フラットフロア構造の採用で居住性を向上させ、スライドドアを装備している点も共通だ。
つまりライバル車同士だが、全高の数値には差が付く。試乗したグレードで見ると、最も背が高いアルファードが1905mm、エルグランドは90mm下がって1815mm、オデッセイはさらに130mm低い1685mmだ。
全高の違いには、床面地上高と室内高が関係する。アルファードはスライドドア部分の床面地上高が約490mmで、室内高も1400mmということもあり背が高くなった。エルグランドの床面地上高はアルファードと同等だが、室内高は1300mmにとどまり、全高の数値も中間的だ。そしてオデッセイは、室内高はエルグランドを少し上まわる1325mmだが、床面地上高は340mmと大幅に低い。その結果、全高も1700mmを下まわった。
オデッセイは低床設計により、十分な室内高を確保した上で背を低くしたから、走行性能も良く、乗り降りもしやすい。ただし外観の存在感はやや薄れた印象がある。
低床設計は機能的には「正義」だが、見栄えや人気度は裏腹になることも多い。そこにミニバン開発の難しさがある。
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