[試乗]「3シリーズツーリング」「Cクラスワゴン」「V70」人気欧州ステーションワゴン車 徹底比較(5/5)
- 筆者: 渡辺 陽一郎
- カメラマン:茂呂幸正・和田清志
3シリーズツーリング/Cクラスワゴン/V70 徹底比較[総括]
以上の3車種を比べると、改めて3台がそれぞれ異なった強い個性を持っていることが実感出来る。
基本的な持ち味だが、3台の中では3シリーズツーリングがいちばんスポーティーな印象だ。
Cクラスワゴンは快適性と走行性能を両立させ、V70は少し古いがリラックス感覚を重視している。
ただし3シリーズツーリングとCクラスワゴンは、グレードによる運転感覚や乗り心地の違いが大きい点にも注意したい。Cクラスの「スポーツ」や、BMWの「Mスポーツ」など、スポーティ仕様はベースモデルに対し固めの足回りを備え、機敏な走りを強調する傾向にある。可能な限りディーラーで比較試乗をしておきたいところだ。
中でも、Cクラスをベースにしたスペシャルモデル「AMG C63」(1275万円~)となれば、走行性能が大幅に高まって乗り心地はガッシリと硬めだ。このように欧州車では、1車種の中でいろいろな持ち味を選べる点も、日本車とは違う魅力のひとつだろう。
メルセデス・ベンツはAMG、BMWはMシリーズと高性能モデルを用意するから、ベースとなるボディとシャシーをしっかりと構築する必要がある。そこに比較的大人しいエンジンを搭載すれば、高い安全性を確保できる。
逆の表現をすれば、ベースを入念に造り込んでいるから、高性能バージョンも成り立つわけだ。
欧州車が魅力的に感じられる背景には、日常的に高速走行の機会が多く、走りを煮詰めたこともあるが、このようにワイドなグレード構成も影響していると思う。
かつては日本でも魅力的なステーションワゴンが多数存在していたのだが・・・
欧州車でセダンから派生したワゴンの人気が根強い理由も同じだ。
今でこそドイツ車もSUVを増やしたが、2000年頃までは高重心のためにSUVには懐疑的な立場を取っていた。その意味で、セダンをベースにするワゴンは低重心で走行安定性が優れ、日米に比べ常用速度域が高めな欧州でのニーズも満たしている。
こうした欧州車らしい走りの良さと、荷室の便利な使い勝手を両立させているのが、今回取り上げたステーションワゴン3車種というワケだ。
ミニバンとSUVの売れ行きが増えるほど、かえってワゴンモデルの良さも際立ってくるように思う。
かつては日本にも魅力的なワゴンが多かった。例えば「日産 スカイライン」と基本部分を共通化した「ステージア」、海外向け「レクサス IS スポーツクロス」と共通の「トヨタ アルテッツァジータ」など、個性が強いモデルも選べた。
日本のメーカーは、ワゴンを早く諦めすぎたのかも知れない。
[レポート:渡辺陽一郎/Photo:茂呂幸正・和田清志]
この記事にコメントする