欧州コンパクトワゴン 徹底比較(2/4)
- 筆者: 岡本 幸一郎
- カメラマン:島村栄二
精悍さを増したフロントフェイス
丸みを帯びたフロントセクションに対し、リアクォーターピラーは大きく傾斜しており、ハッチバックのリアオーバーハングを伸ばしたような、親しみやすいシルエットが特徴。
2009年11月に発売された4世代目は、現行ゴルフゆずりの水平ラインを基調としたフロントフェイスとなった。ヘッドライトのデザインも変わり、ずいぶんと精悍な印象だ。
コンフォートラインより上のグレードでは、バイキセノンヘッドライトが標準装備され、サイドウィンドウの周囲をメッキのラインで縁取るなど、質感を高める処理が施されている。
さらに、スポーツラインでは、17インチのアルミホイールやクロームルーフレールなどが与えられる。
パワートレインは、ベーシックな1.4リッター(最高出力122ps、最大トルク200Nm)と、同高性能版と(同160ps、240Nm)、2リッター(200ps、280Nm)の3種類のTSIエンジンを用意。1.4リッター車には乾式単板クラッチを持つ7速DSGが搭載され、2リッター車には湿式多板クラッチを持つ6速DSGが組み合わされる。
中でも、1.4リッターのTSIトレンドラインは、従来モデル比11%の向上となる10・15モード燃費16.8km/Lを達成している。全域でトルクフルなTSIユニットに、MTのようなダイレクト感を。そして、ATに近いイージードライブで楽しめるDSGは、ニューモデルが出るたびに進化しているように感じさせる完成度を誇る。
剛性感が高く、ドライバーが操作したとおりにクルマが反応するシュアなハンドリングを、どこにも不快なところのない快適な乗り心地とともに味わうことができるのは、相変わらずVW車に共通する強み。
4代目ヴァリアントでは、従来よりもさらに快適性が高まったように感じられた。
3列シート車と思えないスタイリング
フロントフェイスはいうまでもなく、ボンネットから相当に傾斜のつけられたフロントウィンドウや、クリフカット風のDピラー、そしてリアウィンドウやテールランプサイド面に回りこむように配されたフォルムに、ボディパネルの造形など、非常に特徴的なエクステリアを持つ。一見すると、3列シート車とは思えない。
最高出力140ps、最大トルク240Nmを1400~3500rpmという幅広い領域で発生する1.6L直噴ターボチャージャーエンジンを搭載。組み合わされるATが4速というのは、イメージ面でのマイナスはあるが、実際のドライバビリティにおいては、それほど悪くはない。
少々大味にトルク増幅するATは、出足もグッと前に出て、市街地や高速再加速においても大きな不満は感じられない。ただし、エンジン回転がすぐに2500rpm以上に上がり、ノイズが車内に侵入するので、その点での質感はマイナス要因。Cセグの現代レベルからすると、もう少し静粛性が欲しいところではある。
フロント・ストラット、リア・トーションビームの足まわりは、よくいわれる「猫足」という雰囲気ではあまりない。ダンパーを固め、ラバーブッシュの硬度を上げているようで、往年のプジョーらしさは薄れたものの、より現代的な乗り味を手に入れたともいえる。ステアリングは、操舵力は重くはないが、センターへの戻りが強く、それで直進性を確保している。コーナリングもフロントでグイグイ引っ張っていく印象で、リアは意外とブレイクしやすい。
ただし、右ハンドル車のブレーキはペダルと連結したロッドで左にあるブレーキマスターを動かしているためか、微調整が効かずリニアではない部分があるのは否めない。
運転しやすいパワーシフト
2004年の登場と、かなり時間が経過しているが、ボルボらしいスクエアさと現代的な丸みを巧く調和させたエクステリアデザインは、あまり古さを感じさせない。V50系は、フォードグループで共同開発し、グローバルに展開されている、非常に素性のよいプラットフォームをベースとする。時間の経過にともない、さらにその素性が磨き上げられたように感じられる。
約1年前に登場したパワーシフトは、同じくフォードグループで開発した最高出力145ps、最大トルク185Nmを発生する2Lエンジンに、6速デュアルクラッチトランスミッションを組み合わせる。
従来の2.4L車と比べ、燃費を22%向上、CO2排出量も18%を軽減したという。このエンジンは、それほど力強い印象はないが、低回転域からフラットにトルクを発生し、高回転域まで伸びやかに吹け上がるところが美点。パワーシフトは、ダイレクト感という点ではゴルフに軍配が上がるが、半クラッチのつながりも自然で、ATのようなクリープもあり、ATから乗り換えてもまったく違和感なく乗れる。
シフトチェンジのレスポンスはそれほど早いわけではないが、変速時のショックを嫌う層も少なくないので、万人向けにあえてそうしているのだと思われる。結果、乗りやすさではピカイチの仕上がりとなった。そして燃費も前記のとおりである。
フットワークはことのほか軽快で、乗り心地もよい。ステアリングフィールもスッキリとしている。あまり気になるところのない、まとまりのよい仕上がりである。
総評
ゴルフヴァリアントは期待どおりの進化を遂げ、まったく尖ったところのないまま、洗練度を深めてきた。V50は、V70など上級のボルボ車とはだいぶ異質で、ドイツ車的なドライブフィールを持っている。308SWは、上記2台とはだいぶ印象が異なるが、プジョーと聞いて想像する「猫足」と評されたソフトライドな乗り味とも違う、高速走行や操縦安定性を意識したと思われる、やや固めの乗り心地となっている。
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