CX-3/ヴェゼル/XVを徹底比較 ~ディーゼル vs ハイブリッド 人気の低燃費コンパクトSUV~(2/4)
- 筆者: 渡辺 陽一郎
- カメラマン:和田清志
躍動感を伴ったスポーティなボディスタイル
マツダ CX-3は、「スカイアクティブ」と呼ばれるマツダの新しい技術シリーズをフルに活用している。CX-5を筆頭に、アテンザ・アクセラなどのマツダ車と同じ手法だ。
プラットフォームの基本部分はデミオと共通で、ホイールベース(前輪と後輪の間隔)も2,570mmで等しい。サスペンションは前輪側が独立式のストラット、後輪側は車軸式のトーションビームになる。
ボディサイズは全長が4,275mm、全幅が1,765mmなので、プラットフォームをデミオと共通化しながら215mm長く、70mm幅広い。デミオよりひとまわり大きい。
全高は1,550mmだからデミオよりも50mm高いが、立体駐車場を使いやすい数値に抑えた。つまりSUVでありながら、コンパクトカーの使い勝手も考慮しているというわけだ。その意味でCX-3は、CX-5の縮小版というよりもデミオの派生モデルに近いと言えるだろう。
外観は「魂動/こどう」デザインと呼ばれる今日のマツダ車に共通する持ち味に仕上げた。フロントマスクには大きなグリルが備わり、左右には切れ長のLEDヘッドランプを配置している(XDはオプション設定)。睨みを利かせた表情だ。
そしてボディの側面は波打つようなデザインで、サイドウインドウの下端は後ろに向けて大きく持ち上げた。斜め後方と真後ろの視界を確保するには不利な形状だが、躍動的な雰囲気を感じさせる。フロントウインドウの位置を後退させ、ボンネットを長く見せてスポーティ感覚を強調したことも特徴だ。
エンジンはデミオと同型のクリーンディーゼルターボのみが搭載され、ガソリンエンジンの設定はない。排気量は1.5リッターで、最高出力は105馬力(4,000回転)、最大トルクは27.5kg-m(1,600~2,500回転)。トランスミッションは6速のATとMTを選択できる。
105馬力の最高出力はデミオが搭載する1.5リッターのディーゼルと同じだが、最大トルクはCX-3が高く、6速ATで2kg-m、6速MTでは5.1kg-mの差が生じた。
プラットフォームはフィットと共通でも足まわりはオデッセイに近い
ホンダ ヴェゼルハイブリッドは、プラットフォームの基本部分をフィットと共通化した。なので燃料タンクは前席の下に設置するが、相違点も多い。ホイールベースはフィットよりも80mm長い2,610mmだから、セダンのグレイスの2,600mmに近い。ホイールを固定する穴の数は、フィットは4つだがヴェゼルは5つになる。
プラットフォームはフィットに準じるものの、サスペンションはオデッセイと共通点が多い。ショックアブソーバーも、オデッセイと同様にザックス製だ。
サスペンションの形式は、前輪側がストラットの独立式、後輪側は2WDがトーションビームの車軸式になる。4WDの後輪側は、ドディオンタイプの車軸式とした。ドディオンはホンダの4WDに多く、構造は比較的単純だが路面をしっかりとつかみやすいという特徴がある。
ボディサイズは全長が4,295mm、全幅は1,770mm、全高は1,605mmだ。今回取り上げる3車種の中では最も背が高く、外観のボリューム感を強めた。3車種の中では最もSUVらしいスタイルともいえるだろう。
フロントマスクは今のホンダ車に共通するデザイン。「吊り目」風の形状ながら、睨み付ける雰囲気ではない。
側面から見ると、サイドウインドウの面積はリアにいくほど狭まる。加えてボディ後端のピラー(柱)は太めだ。CX-3と同様、斜め後方の視界は良くないが、後ろ姿はクーペのように見える。リア側のドアノブは、リアウインドウの後ろ側(ブラックの部分)に配置して、クーペ感覚をさらに強調した。
エンジンは直列4気筒の1.5リッターで、ノーマルタイプとハイブリッドがある。試乗車は先に述べたハイブリッドで、直噴エンジンということもあり動力性能が高い。エンジンとモーターの駆動力を合計したハイブリッドのシステム最高出力は152馬力になる。
インプレッサスポーツをベースにした馴染みやすいSUV
5ドアハッチバックのスバル インプレッサスポーツをベースに、外観をアレンジしてSUVに仕上げたのがXVだ。インプレッサスポーツの最低地上高(路面とボディの最も低い部分との間隔)は145mmだが、XVは本格的なSUVと同等の200mmまで拡大している。
そして前後のバンパーの下側はアンダーガード風にデザインされ、ボディの側面にはサイドグラッディングを装着した。これらの変更により、XVの全長はインプレッサスポーツよりも30mm長い4,450mm、全幅は40mm広がって1,780mm、全高は最低地上高の拡大を伴って85mm高い1,550mmになっている。
このような既存の車種をベースにしてSUVにアレンジするクルマ造りは、日本車ではスバルが先駆けだろう。1995年、2代目レガシィにツーリングワゴンをベースにしたSUV風のアウトバック(日本名はグランドワゴン)を設定。今日に通じるヒット作となった。
ちなみに1980年代の「4駆ブーム」の時も、フロントガードバーなどを装着してSUV風にドレスアップした派生車種は存在したが、モデルチェンジを続けて定着させたのはレガシィアウトバックだけだ。XVはこの実績のある手法を踏襲している。
ボディの基本がインプレッサスポーツだから、XVになって若干拡大されたとはいえ、視界や運転感覚は馴染みやすい。そして全高が1,550mmだから、立体駐車場も利用しやすい(ルーフレールを装着すると1,595mmになる)。
試乗したXVハイブリッドは、水平対向の2リッターエンジンを搭載。最高出力が13.6馬力のコンパクトなモーターを組み合わせて、ハイブリッド化している。エンジンとモーターの駆動力を合計したシステム最高出力は約164馬力だ。
デザイン・スペックの総評
今回取り上げた3車種の中で、最も背が高いのはホンダ ヴェゼルだ。全高が1,550mmを超えるために立体駐車場を利用しにくい場合もあるが(最近は利用できる施設も増えた)、外観はSUVらしさが濃厚だ。スバル XVはインプレッサスポーツがベースだから、5ドアハッチバック風に見える。
中間に位置するのがマツダ CX-3。ボリューム感があってSUV風でもあるが、ブラックのホイールアーチ、ドアの下側に装着されたサイドシルガーニッシュなどをはずすと、少し背の高い5ドアハッチバックになる。最低地上高も160mmだからSUVでは低い部類に入る。なのでホイールアーチなどの外装パーツが目立たないブラックのボディカラーでは、SUV感覚も薄れる。
そして今回取り上げた3車種は、いずれも環境&燃費性能に配慮した。CX-3は1.5リッターのクリーンディーゼルターボを搭載し、JC08モード燃費は4WDの6速ATが21.0km/L。ヴェゼルハイブリッドの4WDは21.6km/L、XVハイブリッドは20.4km/Lになる。CX-3はガソリンエンジンでいえば2.7リッター並みの最大トルクを発生し、燃費数値はヴェゼルが搭載する1.5リッターのハイブリッドと同等だ。しかも軽油の価格はレギュラーガソリンに比べて1リッター当たり20円ほど安い。CX-3は高トルクで低燃費とあって効率が良い。
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