コンパクトカー 徹底比較(4/4)
- 筆者: 岡本 幸一郎
- カメラマン:島村栄二
革新的かつ万能なベーシックコンパクトカー
ベーシックなコンパクトカーながら、斬新なデザインを採り入れ、しかも老若男女どんなユーザーが乗ってもおかしくないというフレキシビリティもヴィッツの優位性である。
2代目となり、ちょっと大きめのボディを得てスペースユーティリティが向上し、走りもそつなくまとまっている。その意味でも、万能なモデルであることには違いない。
エンジンやリアシートを3通り設定するなど、幅広いラインアップもライバルをリードする。これだけ革新的なモデルでありながら万能に使えるし、ユーザーの間口が広いこともヴィッツの実力の高さである。
そつなくまとまっていることを前提に述べるが、もしヴィッツに注文をつけるとしたら、もっとヨーロッパのコンパクトカーのようなテイストを味わわせてほしかったことだ。
せっかくこれだけのスタイルを実現していながら、インテリアの質感やドライブフィールについては、まだまだ及んでいないといわざるを得ない。
クルマが放つ雰囲気からして、自然に期待が大きくなってしまうので、それに応える「プラスアルファ」が、もう少し何かあってもいいと思う。
このスタイルを普通に買えることに感謝
このスタイルが好みであれば、他のどんな部分も目をつむってもいいといえるほどのクルマだと思っている。そして、先にも述べたとおり、スタイルこそこれほど奇抜だが、中身は非常にオーソドックスなモデルである。
販売的にはしばしばスズキのスイフトと順位が入れ替わることもあるほどで、日産としても本意ではないはずだろう。とはいえ、このスタイルであれば乗る人を選んで当然だし、筆者としては、このクルマを本当に欲しい人が手に入れればいいのだと思っている。
2005年のマイナーチェンジで、ドライブフィール全般が大幅に洗練されたことは、大いに評価したい。
基本的に1-2人乗りを想定したコンパクトカーだが、意外なことにヴィッツよりも4人乗りに適しているように感じられた。乗り心地がソフトで快適なことも、マーチの美徳だ。
インテリアの素材やカラーに力を入れているところもマーチならでは。個人的な見解だが、マーチというクルマは、まるでパイクカーが普通にカタログモデルとして売られているようなクルマだと思っている。
このスタイルは、こんなクルマが普通に買えることに感謝していいと思う。
全てを身に付けた傑作コンパクトカー
登場から5年が経ったものの、フィットの売れ行きは驚異的だ。価格が安く、愛らしいスタイル、室内が広くて走りもいいという、コンパクトカーとして実に万能な内容を誇る。
このパッケージを、各メーカーが後を追ったほどの傑作である。すでにモデル末期ではあるが、このクルマが持つユーティリティは、このクラスで群を抜いている。
今回はヴィッツとマーチを取り上げたが、スペースユーティリティにおいては、トヨタではラクティス、日産ではノートなど、ひとつ上のモデルがライバルとして妥当であり、それらのモデルは、明らかにフィットをライバル視して開発されたことがうかがえる。
リアシートやラゲッジの広さを見ても、ファミリーカーとして十分に使えるものとなっている。
モデルチェンジまではまだ時間があるが、フィットはこのまま勢いを衰えさせずに売れ続けることだろう。
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