日産 高規格救急車 新型「パラメディック」に緊急試乗!|20年ぶりのフルモデルチェンジでハイエース独占に“待った!”(2/3)
- 筆者: 中込 健太郎
- カメラマン:MOTA編集部・日産自動車
総重量2.8トンの車体も軽々と走らせる頼もしさ!
実際走り出すと、ことのほかパワフルで感心させられました。納入先ごとの仕様はあるにせよ、基本的には2.8トンに迫る車重の新型パラメディック。2000回転を超えたあたり、実用上大変重要な回転数領域でのトルクがリッチでしっかり加速していきます。実はベース車「NV350キャラバン」の数ある仕様の中でも、パラメディックだけ5速オートマチックのギヤ比が変更になっていて、よりローギヤードで加減速をより機敏にしているのです。試乗したグランドライブの直線コースでは、80km/hくらいまで加速させました。普段はなかなかそんなに高速で走る救急車は見ないですが。とめどなく加速していく様は力強く、ワイドトレッド化でしっかりと踏ん張り、ハンドリングもよく、図らずも楽しいドライブができました。赤色灯など高いところに位置する装備に目が行くので高重心のようですが、実は案外低重心でもあります。大きく姿勢を傾けないようにしっかりと減速してハンドルを切ると、重量級のボディはしっかり向かうべき方向を向きます。
ドライビングプレジャーのためのハンドリングではなく、患者さんのための、クルマとしての挙動におけるある種の余裕。しっかり感じ取ることができました。
ストレッチャーにも“試乗”してみた!
と、ここで中込さんからバトンタッチ。取材に同行したMOTA編集部Tが、貴重な“後席インプレッション”をお届けしちゃいます。
後席って言っても、乗った(というか寝た)のはストレッチャー。そう、患者を搬送する車輪が取付けられた担架で、足を折りたたんで救急車にそのまま載せることが出来る、アレです。上半身と下半身はベルトで固定され、不用意に体が動かないよう拘束されます。広い室内でもプラズマクラスター搭載のクーラーが良く効いていますね。ハイルーフ化で室内高1850mmを確保し、救急隊員が立ったまま作業が出来ます。
車内を見回すと、観察モニターや人工呼吸器、酸素ボンベなどが所狭しと並ぶ機能的なレイアウト。救急の現場特有の緊迫感が想像され、健康なはずの私も脈拍が上昇してしまいそう。ストレッチャーの下にはさらに空気式の防振架台が備わり、道路の段差や凸凹を乗り越えた際の振動をしっかり吸収。救急隊員の救命措置をサポートします。これは高規格救急車必須の装備だそう。
ちなみに高規格救急車とは、患者搬送の際に救急救命士の処置が可能な機能を備えた車両のこと。現在では自治体に配備されるほとんどの救急車が高規格仕様となっているようです。
…などと難しいことを考えていると、防振架台の柔らかな揺れと日頃の不摂生から不意に眠気が・・・体が拘束されているので左右の揺れには強いのですが、前後の加減速Gにはちょっと弱いかも。ちょっと運転手さん! いくら新型パラメディックの走りが良いからって、もう少し丁寧な運転、頼みますよっ!
現場からは以上です。運転席の中込さーん!
早くも納入先自治体からは好評の声も
実際この新型パラメディック、2018年11月末の発表以来、全国ですでに続々と納入も始まっていて、中でも先代のパラメディックからの代替えで納入した自治体からは好評だとのこと。現場からの声によれば、燃費の向上がかなり目覚ましいのだそうです。これは運用上避けて通れないコストに直結する話です。
朝から晩まで常に走り回る救急車は、これまで1日に3回給油していたそうで、新型パラメディックならそれが2回でよくなったというから驚きます。単純に考えて3割前後は改善されているということ。つねに稼働し、大活躍なのはいいですが、3回の給油はタイヘン。この差は確かに大きいですね。
ちなみに先代モデルでは2WDの設定もありましたが、現行型はこのガソリンエンジンと4WDの組み合わせに限られるのだそうです。どんな気象環境でも出動しなければならず、満載の装備に対応するために、実際、降雪地域でなくてもガソリンエンジン×四駆なのだそうです。住宅街でも静粛性が高いというのが、ガソリンエンジンが選ばれる理由なのだとか。ユーザーの選択が、あるべき姿に導かれた。そういうこともできるかもしれません。
>>高規格救急車「パラメディック」って、実際に日産のお店で購入できるの?[次ページへ続く]
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