本当に若者のクルマ離れが改めて浮き彫りになった……のか?【週刊 クルマ事件簿】

若者のクルマ離れが改めて浮き彫りになった……?

先日、クルマ好きとって衝撃的なニュースが流れた。

元ネタは、日本自動車工業会が発表した乗用車市場動向調査(2017年度版)で、車を保有していない10~20代の社会人のうち、「車を購入したくない」との回答が前回調査に続いて5割超に上った、というものだ。一方でレンタカーやカーシェアリングへの関心は高く、車の維持費などに負担を感じて「所有」にこだわらない若者が増えている傾向が改めて浮き彫りになった……という。

前回調査では59%だったが今回は54%!

このニュースを受け、「クルマを買いたくない若者が急増中」という見出しを付けたメディアもあったが、調査の内容をしっかり読むと、ちょっと待てよ、になる。

まず、クルマを買いたくないと答えた若者の割合だが、2年前の前回調査では59%だった。それが今回は54%。つまり下がっている。少なくとも「急増中」という見出しは、先入観が先走っているように思える。

また、調査対象が「車を保有していない若者」で、調査方法は主にWEBだったことにも、注目する必要がある。

自工会の調査は、この項目を除くと、調査対象者は地域や年齢分布を公平にすべく厳格に配慮され、訪問面接を中心に4500名に対して実施された。しかし若者に関しては、サンプル数が足りなかったせいか、1000名分WEB調査が併用された(うち900名が車の非所有者)。

ぶっちゃけ、若年層分析に関してのみ、車を持ってない若者を、かなり無差別に調査対象に加えたと見ていいだろう。

「急増」ではなく、もはや「定着した現象」

現在の日本は、クルマがないと非常に不便な地域と、クルマがなくても問題ない地域がはっきり色分けされている。たとえば東京23区では、乗用車の保有率は34.3%にすぎないが、地方の郡部では80.0%。複数台所有も多い。

車が必要かそうでないかは、年齢層とはほぼ無関係。地方の若者は、趣味嗜好とは無関係に、必要にかられてすでに車を持っている割合が高く、都市部では逆になる。

つまり、調査対象になった「車を持っていない若者」は、都市部在住者が多数を占めていると推測できる。都市部では車の必要性は低いので、「欲しくない」と答える割合が高くなるのも、カーシェアリング等への関心が高まるのも当然なのだ。

ただし、それでもやはり、54%という割合は高い。若年層のクルマ離れは「急増」ではなく、もはや「定着した現象」と言うべきだろう。

これほどクルマ離れが進行した国も他にない

いったいナゼか?

最大の原因は、バブル崩壊以降、長期にわたってデフレが続いたことにあると見ている。マイカーは、自分のパワーと自由を拡大する装置だが、現在の若者は、実質収入の減少や将来への悲観から、もっと小さなシアワセを求めるようになった。

私のような中高年世代は、若い頃から、いかにいいクルマに乗るかを競っていた。それによって女性にモテる面すらあったから、仲間にクルマ好きがいると、それが周囲の競争意識をあおって伝播する構図があった。しかし今はそんな風潮は微塵もなく、多くの若者は貯金を競っている。

逆に言うと、仮に今後20年間好景気が続けば、この傾向にはブレーキがかかるだろう。

新興国の若者は例外なくクルマを欲しがっているし、日本以外の他の先進国も、日本よりはずっとクルマ好きだ。日本ほど長期のデフレが続いた先進国は、歴史上存在しない。これほどクルマ離れが進行した国も他にないのである。

ただ、日本もここ5年間は穏やかな景気回復が続き、若者の就職事情は劇的に改善された。ひょっとして今回、「クルマを欲しくない」との回答が5ポイント減少したのは、クルマ回帰の前兆なのかもしれない……。だといいな。

[レポート:清水草一]

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清水 草一
筆者清水 草一

1962年東京生まれ。慶大法卒。編集者を経てフリーライター。代表作『そのフェラーリください!!』をはじめとするお笑いフェラーリ文学のほか、『首都高はなぜ渋滞するのか!?』などの著作で交通ジャーナリストとしても活動中。雑誌連載多数。日本文芸家協会会員。記事一覧を見る

樺田 卓也 (MOTA編集長)
監修者樺田 卓也 (MOTA編集長)

自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。

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