スズキ スペーシア人気急上昇の鍵はライバルにないSUVテイスト“スペーシア ギア”の成功にあった

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2018年に登場したスズキの軽スーパーハイトワゴン、2代目「スペーシア」シリーズが好調な売れ行きを示している。ライバルのダイハツ タントがフルモデルチェンジを実施した2019年以外、首位のホンダ N-BOXに次ぐ2位のポジションに収まったのだ。後発組であるスペーシアが、市場開拓のパイオニアであるタントに勝った理由とは。モータージャーナリストの鈴木 ケンイチがレポートする。

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  1. 初代の頃はN-BOX、タントに続く3位のポジションだったスペーシア
  2. 2018年登場の2代目スペーシアがクラス2位のタントを抜いた
  3. 時代の空気を敏感に感じ取ったスズキの戦略勝ち! この差はしばらく埋まりそうにない

初代の頃はN-BOX、タントに続く3位のポジションだったスペーシア

スズキの「スペーシア」の販売が好調だ。スペーシアは背の高いボディに両側スライドドアを備えた、いわゆるスーパーハイトワゴンに類するモデルだ。

ライバルは、このジャンルの圧倒的王者であるホンダのN-BOX、ダイハツのタント、それに日産 ルークス/三菱 eKスペースとなる。販売のランク付けでいえば、王者がN-BOX、それに続くのがタント。そしてスペーシア。新参が日産/三菱という格好だ。

2013年に登場した先代スペーシアは、販売面で、王者N-BOXはもとより、このジャンルの創設者であるタントにも及ばなかった。2016年のスペーシアの年間販売ランキング(一般社団法人 全国軽自動車協会連合会調べ)は8位。一方、N-BOXはもちろんの1位、タントも2位であった。その後2017年12月に、2代目となる現行型スペーシアはフルモデルチェンジしている。

2018年登場の2代目スペーシアがクラス2位のタントを抜いた

しかし、現行モデルが登場した翌2018年にスペーシアは、年間ランキングで一気に2位にまでアップ。1位は不動のN-BOXであるが、4位のタントを抜く快挙であった。ただし、タントは翌2019年7月、4代目へフルモデルチェンジを行っている。つまり、2018年のタントはモデル末期であったのだ。

そんな2018年の暮れ、12月にスペーシアは、SUVテイストの「スペーシア ギア」を追加する。これによりスペーシアは、「標準」「カスタム」に加え「ギア」という3つのデザインを持つことになった。

ただ2019年7月にダイハツ タントがフルモデルチェンジしたこともあり、2019年の年間販売ランキングは、タントが2位、スペーシアが3位という結果に。ちなみに1位はやっぱりN-BOX。あっさりとスペーシアは、タントに抜かれてしまったのだ。

だが、ここでスズキ スペーシアが踏ん張った。翌、2020年の年間ランキングでスペーシアは2位を奪い返す。タントは3位。その勢いは続き、2021年も1~9月の販売ランキングでも2位スペーシア、3位タントという順位をキープしている。つまり、タントのフルモデルチェンジした2019年こそ負けたが、それ以外では、すべてスペーシアが販売数で上回っているのだ。

時代の空気を敏感に感じ取ったスズキの戦略勝ち! この差はしばらく埋まりそうにない

スペーシアがタントに勝てている理由はどこにあるのだろうか?

個人的に思うのは、クルマの出来という意味では、スペーシアとタントは甲乙つけがたい。走行性能や燃費性能、室内の広さ、使いやすさに関しては、ほとんど差がないのではないかと思う。ハッキリわかる違いと言えば、スペーシアにはSUVテイストのギアがあるくらいだろう。そこで、スズキにスペーシアにおけるギアの販売比率を問い合わせてみた。すると、スペーシアの販売の内訳は、標準車が4割強、カスタムが3割強、ギアが2割ほどだという。ギアは、それほど、たくさん売れているわけではないのだ。

そこで、もう一度、スペーシアとタントの販売の数字を見返してみた。すると、この2割のギアの存在は、重要であることに気づいた。どういうことかといえば、スペーシアとタントの販売数の差は、ほんのわずかなものであったのだ。

タントとスペーシアの販売台数差自体はごくわずかだが、商品力の違いは大きい

実数を言えば、2021年1~9月のスペーシアの販売が106045台に対して、タントは90669台だ。その差は約1万台。約10万台と約9万台であるから、その差は1割ほどしかない。2020年1~12月の販売数では、スペーシアが139851台に対して、タントは129680台。約14万台と13万台で差が約1万だ。こちらは1割未満の差だ。

つまり、昨年から現在まで順位は動いていないけれど、その差は、常に10%を切るほど、わずかなものであったのだ。

差が小さいことで、スペーシア ギアの存在が効く。スペーシアにおけるスペーシア ギアの販売比率は2割だが、その数は、スペーシアとタントの差よりも大きいのだ。標準とカスタムが同じだけ売れていれば、ギアの分だけスペーシアが有利となると言える。

また、現在のトレンドはSUVだ。ハイトワゴンにSUVテイストを盛り込んだのは、スペーシアが初となる。このアイデアも見事なもの。

現世代のスペーシアVSタントの戦いでスペーシアが有利に進んでいるのは、トレンドをキャッチしたワイドバリエーションを用意した、スズキの作戦勝ちと言えるだろう。

[筆者:鈴木 ケンイチ/撮影:和田 清志・茂呂 幸正・SUZUKI]

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鈴木 ケンイチ
筆者鈴木 ケンイチ

1966年9月15日生まれ。茨城県出身。国学院大学卒。大学卒業後に一般誌/女性誌/PR誌/書籍を制作する編集プロダクションに勤務。28歳で独立。徐々に自動車関連のフィールドへ。2003年にJAF公式戦ワンメイクレース(マツダ・ロードスター・パーティレース)に参戦。新車紹介から人物取材、メカニカルなレポートまで幅広く対応。見えにくい、エンジニアリングやコンセプト、魅力などを“分かりやすく”“深く”説明することをモットーにする。最近は新技術や環境関係に注目。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員 自動車技術会会員 環境社会検定試験(ECO検定)記事一覧を見る

樺田 卓也 (MOTA編集長)
監修者樺田 卓也 (MOTA編集長)

自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。

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