「タクシー配車アプリ」国内発・海外発が競争激化?! 神奈川で急成長を遂げたDeNAが東京・京阪神へ[“モビリティの世界” Vol.6]

日本の配車の99%は“アプリ以外”

「99%」。

ウーバー・テクノロジーズのUber(ウーバー)や滴滴出行(ディディチューシン)のDiDi(ディディ)などスマートフォンのライドシェアアプリが世界中で着目させる中、じつは日本のタクシー利用の99%は、流し、電話、タクシー専用乗り場などのアプリ以外での配車なのです。アメリカでは約50%がアプリによる配車なのに比べ、日本のタクシー配車は、まだまだIT化を進める“伸びしろ”があります。

日本のタクシーは世界的にみても非常に質が高いと言われています。アジアなどでタクシーといった業態が成熟する前に、スマートフォンを介して顧客と送り手をマッチングするサービスモデルに対して、成熟したタクシー産業を持つ日本では、どのように対応すればよいのか。既存の交通との調和、道路運送法、さらにはアプリ者の行政に対する姿勢、タクシー事業者の反応などの問題もあり、じっくりと議論が深められてきました。

2018年に入り、その環境も少しずつ変わりつつあります。ライドシェアに対して好意的に思わないタクシー事業者からも「ウーバーやディディの配車システムはすばらしいので使いたい」といった声を聞くようになり、淡路島や名古屋でウーバーの配車システムを活用する動きが、さらに大阪でも、ディディの配車システムを活用したサービスがはじまりました。

海外発のウーバーやディディの配車システムを活用すると、中国や海外からのインバウンド旅行客が使ってくれるメリットもあり、高く評価されていることもあるでしょう。

>>【画像】0円で乗れる!? 都内を走る「どん兵衛タクシー」とは

日本国内の配車アプリの現状

日本国内のタクシー配車アプリは、いま海外発が「ウーバー」と「ディディ」、国内発がJapan Taxi(ジャパンタクシー)の「全国タクシー」、そしてDeNA(ディー・エヌ・エー)が神奈川県タクシー協会と取り組んだ「タクベル」、ソニーおよびソニーペイメントサービスと都内タクシー5社の合弁会社「みんなのタクシー」の競争がはじまっています。

中でも最近、利用者を急激に増やしたのがディー・エヌ・エーの「タクベル」です。2018年4月にサービスを神奈川県でスタートさせ、客を乗せずに走ることの多いタクシーの質を改善させたとして、神奈川県のタクシー事業者から高い支持を得たのだそうです。2018年12月5日に「タクベル」の名称を「MOV(モブ)」に改め、東京都内23区・武蔵野市・三鷹市でもサービスを開始しました。さらに2019年春ごろに京阪神への進出を予定しています。

国内発のアプリは「全国タクシー」以外にも東京ハイヤー・タクシー協会の「スマホdeタッくん」東京交通無線グループの「東京無線」、第一交通産業グループの「モタク」第一交通が独自に作るタクシー配車アプリがありますが、ここまで短期間に急激に利用者数を伸ばしたアプリは稀のようです。

※画像:MOV(モブ)使用イメージ

配車アプリに囚われないDeNAの野望とは

ディー・エヌ・エーオートモーティブ事業本部執行役員/事業本部長の中島宏氏は「海外の模倣では限界があり、日本独自のモデルをつくる。日本の課題をインターネット+AIで仕組みそのものからアップデートしたい。タクシーの乗務員の方がお客さんを乗せている時間を少しでも伸ばしたい」と、タクシー事業の実情を踏まえて話します。

MOVの配車システムの強みは、配車や送迎時間が短いことです。他社のタクシー配車アプリは既存の配車システムとつなげた無線配車型ですが、MOVでは、既存の配車システムにタクベル配車システムを組み合わせた並行稼働型で実現しています。

AIを活用して需要予測をおこない、新人タクシー乗務員でも即戦力になるようなテクノロジーについては、NTTドコモも法人向け配車アプリの「AIタクシー」で取り組んでいます。ともに、高齢化問題が深刻で若いドライバーの獲得が課題のタクシー会社としては、うれしいサービスです。

MOVは単なるタクシー配車システムでは終わりません。これまでと変わらず“タクシーを軸”に、新たな移動体験や働き方を創出するため、アプリのユーザーと交通事業者をマッチングする2者間マッチングから「企業」、「店舗」、「行政」なども巻き込んだ、他社間マッチングモデルへと進化しようとしています。「タクベル」から「MOV」へと名称変更したのも、タクシーに限らない「移動」を連想させるためです。

MOVへと生まれ変わった第一弾としてはじまるのが「0円(ゼロエン)タクシー」です。法律の枠内で、企業から広告やスポンサーを募りながら、ユーザーに対して利用料金を0円にするフリービジネスモデルです。

0円タクシー、まずは日清食品によるどん兵衛ラッピング仕様から

この1社目の企業として組んだのは日清食品です。2018年12月5日から12月31日の7:00~22:00まで、日清食品のどん兵衛の世界にラッピングされた「0年タクシーby日清のどん兵衛」をMOVアプリで配車すれば、目的地までの利用料金(迎車料金+運賃+有料道路通行料)が無料+日清のどん兵衛天ぷらそばもプレゼントされます。呼べるエリアは渋谷区、新宿区、港区、中央区、千代田区付近で、東京23区内全域を走ってくれます。

ディー・エヌ・エーでは今後、レストランを予約すると同時に迎車される、仕事のスケジューラーに合わせて迎車される、通勤通学時のドア・ツー・ドア、出前をとる、ものをいつでも取り寄せられる、予約時間に合わせて美容師も医者も来てくれるなど、貨客混載なども視野に入れながら、さらにMOVのサービスを充実したいと考えています。

このようにディー・エヌ・エーのようにEコマース、ゲーム、SNSといった既存の交通事業者以外のサービスを経験したプレイヤーも入ることで、交通事業者の課題を解決するのみならず、移動体験は潜在的なニーズを発掘するとともにおもしろいものに進化していくことでしょう。

[著者:楠田 悦子 / 撮影:楠田 悦子、DeNA]

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楠田 悦子
筆者楠田 悦子

「暮らしや社会をより"心豊か"に」をテーマに、新進気鋭のモビリティジャーナリストとして活躍中。 欧州生活、バックパーカー、NGOなどの経験を基に、クルマ、鉄道、バス、自転車、飛行機‥身近な人やモノの移動やその手段の進化に着目。暮らしや社会の問題を考察したり、新たな価値を提案するなど、具体的にアクションをとることがライフワークになった。自動車業界紙、(株)自動車新聞社の記者出身で、モビリティビジネス情報誌「LIGARE」の初代編集長。国や自治体の検討会委員なども務める。記事一覧を見る

樺田 卓也 (MOTA編集長)
監修者樺田 卓也 (MOTA編集長)

自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。

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