あの手・この手でタイヤの面白さを実感!「YOKOHAMA スタッドレスタイヤ勉強会」(4/4)
- 筆者: 山田 弘樹
- カメラマン:横浜ゴム・オートックワン編集部
テスト3、テスト4・冬用タイヤ3種の性能の違いを体験せよ!
<3>と<4>は日本ではなかなか比較する機会のない、冬用タイヤの性能が試せた。
用意されたのは真打ちスタッドレス「IG60」とウインタータイヤ「BluEarth WINTER V905」、そしてヨコハマが北米向けに発売するオールシーズンタイヤ「Avid ASCEND S323」の3種。これを一周1km弱のハンドリングコースで履き比べたのである。
試乗車がミニバンだったこともあるが、ここでも安定した性能を発揮したのは当然IG60。最新モデルはその出番が少なかっただけに性能差はまさに圧倒的だったが、驚いたのはウインタータイヤの走破能力だった。
氷上路面は確かに弱い。しかし、そもそも非降雪地帯に住む雪に慣れないユーザーが、雪の中で我々のようにクルマを積極的に動かしながら雪道を走るわけがなく、その部分さえ気をつければ雪上性能は、下手なスタッドレスよりも遙かに高いのだ。
そしてこれをひもとけば、つまりウインタータイヤは非降雪地域における高速巡航性能、そして雪よりも確率の高い雨天時のウェット性能において、スタッドレスよりも優れた能力を発揮すると考えられる。だからぜひ筆者も冬期の非降雪時に「V905」を試してみたいと思ったが、日本では残念ながらその発売がなされていない。これはスタッドレスとの混同を避けるためで、導入にはユーザーのタイヤへの更なる理解や自己責任の考え方が必要なようだ。
各社性能の異なるオールシーズンタイヤ
オールシーズンタイヤは、路面が磨かれれば磨かれるほど、そして日光によって氷が溶けるほどにロードホールディング性能やトラクション性能が厳しくなった。
そもそもオールシーズンタイヤは各社によって求める性能が異なり、ヨコハマの場合は主に北米用の冬タイヤを指す。よって求められる性能は雪上及び氷上性能というよりも「耐摩耗性」を重視したもので、自宅のガレージから除雪が行き届いた幹線道路へ出るまでの道をゆっくりと走破でき、長持ちすることが重要なのだという。所変われば常識も変わる。北米ではそれが冬場のスタンダードとなっているようである。
さらに言うとIG60のすごいところは、ステアリングを切るほどにグリップが増すことだった。
具体的には舵角が10度未満の領域はコンパウンドの能力で反応よく進路変更をすることができる。これを今回は用意されていなかったが、運動性能の高い車輌に用いると素早くロール体制に入ることが可能となり、大げさに言うと夏タイヤのような操縦感覚で雪道を走れてしまう。そして路面に対するタイヤの密着性も高いから、乗り心地が快適で静かに走れてしまうのだ。
そしてミニバンのように車体の動きがスローなクルマの場合は、そこから切り込んで行くことでノーズが入って行く。これは8の字旋回でも確認したことだが、パターンによるエッジ効果が大きく影響しているはずだ。
そしてさらに舵角を増やすと、車速によってはフロントグリップが高まり、オーバーステアまで誘発できてしまう。
ただこれは限界領域の確認や、ハイスピードコーナリングにおけるひとつの“ワザ”であって、一般的に推奨するものではない。
むしろヨコハマとしてはあまりフロントのゲインを高くしないことで、リアのグリップ低下を防いでいる、もしくは遅らせた結果なのだろう。個人的にはこのバランスをもう少しだけフロントよりにしてミニバンでもナチュラルなハンドリングを与えたらとも感じたが、それだとよりニュートラルステアのクルマには過敏過ぎるし、スタッドレスを車種専用で用意するにはもう少し市場の熟成も必要だろう。
IG60は最も日本の降雪地域に向いているタイヤ
ともあれ今回は、とても多くのテストによって冬用タイヤの性能を確認することができた。そしてIG60は、その中でも最も日本の降雪地域に向いているタイヤである、ということも実感した次第。ヨコハマが自ら「冬の怪物」と呼ぶだけのことはある。
さて来年は、どんな勉強会が待っているだろうか、今から楽しみである。
[Text:山田 弘樹/Photo:横浜ゴム・オートックワン編集部]
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