上海で“春のEV祭り”!? 中国が進める日本では想定外の技術開発計画(2/2)
- 筆者: 桃田 健史
- カメラマン:VW AG/Audi AG
技術開示という大きな壁
2030年までの次世代車開発の施策における中国の狙いは、シンプルだ。EVの技術を踏まえたうえで、燃料電池車の技術で世界をリードし、燃料電池、二次電池、インバーターなどの制御装置、水素タンク、そして水素ステーションなどのインフラで、事実上の世界標準であるデファクトスタンダードを握ることである。
こうした中国の積極的な動きに、日本やアメリカも“従わざるを得ない”状況だ。先進国での販売が頭打ちとなる中、現状での世界最大の自動車生産・販売マーケットである中国の存在感が増しているからだ。
ここで日系メーカーにとって大きな問題なのが、中国政府に対する技術開示だ。中国政府は海外メーカーが中国国内で次世代車を販売する際、中国国内での技術開発を推奨している。これは事実上、技術開示であり、EVや燃料電池車の技術で世界をリードしている日系メーカーは、極めて難しい選択を迫られる。
そうしたなか、トヨタは燃料電池車「MIRAI」を使用した実証試験を2017年~2020年に中国で行うことを発表した。トヨタとしては“やむを得ないこと”という経営判断に基づく決定なのだろう。
成果報告がうやむやになるのは当然?
こうして本格化する中国の新しい次世代自動車戦略。
将来的に、その成果の詳細が中国政府から一般、または海外メディアに対して公開されることはまずないだろう。
なぜならば、2000年代後半から2010年代前半に中国全土で実施された、バスなどの商用車を中心としたEV、プラグインハイブリッド車、及び燃料電池車による大規模な実証試験が、なんの前触れもなくいきなり終了したことに、当時筆者は驚いたという経験があるからだ。
その後、修正案としての別の施策がいきなり始まったのだが、その経緯を各方面の中国人関係者に聞いても明確な答えが見つからなかった。
今回の施策では、2030年までの長期計画とされているが、これから先で何度も内容が修正され、またはいきなり休止したり、またいきなり復活したりと、予期せぬ出来事が繰り返される可能性は十分にあると思う。
それでも、日系メーカーは中国政府の意図するところを探りながら、ひたすらフォローアップしていくしかない。
今回のオート上海がEVバブル化現象となったのは、中国における次世代自動車開発の大きな波の序章に過ぎない。
[Text:桃田健史]
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