日産自動車、完成検査における不正の調査結果と対策を公開

一連の不正検査に関する最終報告を国土交通省に提出

日産自動車は、完成検査における抜取検査の不適切な取扱いについての詳細調査結果についてとりまとめ、本日、国土交通省に報告したと発表した。

発表内容によると、同社は完成検査の燃費・排出ガス抜取検査において(1)試験環境を逸脱した排出ガス・燃費測定試験の実施、(2)測定値書き換えによる検査報告書作成、といった不適切な行為があったことを社内自主点検によって把握し、本年7月9日、国土交通省にその概要について報告していたが、同省より完成検査における不適切な取扱いへの対応等についての徹底調査、さらに再発防止策を検討の上、改めて報告するよう指示を受けていた。

そして本日、それらの内容を含む最終報告を完了した形になる。

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完成検査における不適切な抜取り検査の調査結果

1. 燃費・排出ガス抜取検査の概要

本年7月9日に発表した通り、九州工場を除く、日産の全車両製造工場において、国内向け型式指定自動車の燃費及び排ガス検査を行う際に、測定値の書き換え及び測定条件の書き換え・逸脱といった不適切な検査が行われていた。

検証が完了していなかった日産 GT-Rについても、8月末までに調査対象を増加させて追加測定を実施した結果、諸元値の担保を確認するに至った。これにより全ての車種において燃費及び排ガスの諸元値について担保できていることを確認した。

7月9日に発表した不適切な燃費・排ガス抜取検査が行われた台数は1,171台だったが、詳細調査の結果、1,205台となった。(データ重複、無効データの追加、計算ミスなどによる)

2.精密車両測定検査の概要

燃費・排出ガス抜取検査以外の自動車の構造、装置及び性能に関する一連の抜取検査である精密車両測定検査において、測定値の書き換え、試験条件の書き換え・逸脱及び一部検査項目の不実施の証言がヒアリング調査によって確認された。これを受けて事実確認を行い、一部不適切な検査が行われていた車両の品質確認結果については、いずれも保安基準又は検査規格に適合していることを改めて確認した。

各事案の概要は以下の通り。

■試験の不実施

・ブレーキ液残量警告灯

■試験の一部不実施

・車外騒音

・最大安定傾斜角度

■測定値の書換え

・トーイン、キャンバ及びキャスタ

・前照灯の照射方向

・全幅

・警音器の音量

・ハンドルの最大回転数

・ブレーキペダルの踏み代・駐車ブレーキの引き代

■試験条件の書換え・逸脱

・車外騒音

・重量測定

問題の背景及び原因

日産の車両製造工場において、不適切な抜取検査が行われた背景及び原因としては、以下の事情が存在すると結論づけた。

1.完成検査員の規範意識の鈍麻

2.現場管理の不在

3.完成検査員に対する不十分な教育

4.完成検査員の人員不足

6.車両製造工場管理の在り方

7.車両製造工場のマネージメント層の在り方

8.日産のコンプライアンス体制の不十分さ

9.不合理な検査規格

10.完成検査軽視の風潮

再発防止策について

同社は2017年9月に発覚した不適切な完成検査の実施を受け、53件の再発防止策を策定し、さらに新たに見つかった課題については、逐次追加しながら、現在58件の再発防止策に取り組んでいる。その多くは、テスターラインでの全数検査工程を主眼においた対策となっていたこともあり、完成検査の他の工程における不適切行為の防止に十分機能したとは言えない実情があった。

一方、コンプライアンスの徹底及び現場実態の把握における改善はまだまだ道半ばであり、現場実態の把握や現場が声をあげられるようにするために、阻害要因の排除及び後押しする仕組み作りを行う必要があると考えており、これらを踏まえ、抜取検査固有の対策を策定するとともに、昨年来取り組んできた再発防止策の見直しを行うとしている。

■抜取検査における不適切行為を受けた再発防止策

1.緊急措置

・抜取検査工程に監督・管理者の立ち会いをつける

・抜取検査工程における完成検査員の配置換え及び増員

・排出ガス測定装置のプログラムのデータの書き換えができないように修正

・排出ガス測定に係る不明瞭な基準の改訂

2.抜取検査体制

・抜取検査体制の見直し

・抜取検査の監督・管理者及び技術員の育成

3.抜取検査のオペレーションの修正

・作業観察の徹底

・抜取検査の業務手順の再確認・整備

4.抜取検査の検査装置・設備の整備

・排出ガス測定において試験条件を逸脱したデータを自動的に無効化

・排出ガスの測定結果、試験条件、及び走行データを保存・管理

・排出ガス測定装置の最適化及び試験環境の整備

・抜取検査における計測の自動化検討

5.抜取検査における完成検査員の人員管理

・抜取検査における完成検査員の育成計画策定

・抜取検査の人員管理に係る基準書の改訂

・抜取検査の完成検査員を増員

6.モニタリング・監査

・抜取検査におけるモニタリング計画策定及び基準書の改訂

・抜取検査工程の監査強化

7.抜取検査における完成検査員の任命・教育

・抜取検査の技能習熟を定義(ILU基準)

・任命教育における法令・社内規定に関する追加教育の検討及び教育内容の見直し

8.関連法令・社内規定等の社内教育

・完成検査の理解を正すための教育

・CSマインド教育

9.コンプライアンスの徹底

・工場内緊急職場点検の実施

・工場内ルールの総点検

・生産部門を対象としたコンプライアンスマインド教育の実施

・現場におけるコンプライアンス意識の向上

10.現場実態の把握

・現場からの問題提起をフォローする仕組み

・現場の問題を議論する場の強化

・品質保証部 部課長による現場把握

11.工場管理の在り方

・コンプライアンス・安全・環境等に関するコスト・投資管理の仕組みの見直し

・12.対策の実施及びフォロー体制について

・CCOを対策実施総責任者とし、関連役員が担当・統括する実施体制 を構築

・経営会議への月次報告

・内部統制委員会での定例報告事項化

・国土交通省への進捗報告

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樺田 卓也 (MOTA編集長)
監修者樺田 卓也 (MOTA編集長)

自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。

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