スズキ ジムニー燃費レポート|唯一無二“本格SUV”の軽自動車の燃費を計ってみた!
- 筆者: 内田 俊一
スズキ ジムニー燃費レポート|結果まとめ
1998年に3代目に進化したスズキジムニー。それから19年を経た今も改良を重ねながら連綿と作り続けられており、今もなお確固たる地位を築き、人気の衰えも聞こえてこない。
そんなジムニーの燃費はどうなの?という声が意外にも読者からよくいただくことから、今回は、改めて借り出して街乗り、郊外、高速道路と計測してみた。その結果は以下の通り。
スズキ ジムニー実燃費レポート、結果まとめ | ||
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スズキ ジムニー | ||
JC08モード燃費 | 13.6km/L | |
街乗り実燃費 | 9.1km/L | |
高速道路実燃費 | 9.3km/L | |
郊外路実燃費 | 12.7km/L | |
総合実燃費 | 10.4km/L |
残念ながら、かつての三菱 パジェロミニの様なジムニーの競合車が存在しない今、この数値が優秀かどうかの判断基準はない。しかし、20年近く前に開発され、その後、大きな変更もなく現在に至るクルマとして考えれば、JC08モード燃費に対する達成率が76%というのは優秀だといえよう。
また、郊外での実燃費12.7km/Lという数値は十分満足すべきものだ。一方、市街地での9.1km/Lは具体的な燃費改善のための施策を持っておらず、3気筒インタークーラーターボ付きのK6A型660ccエンジンと“普通”の4速ATが、990kgのボディとパートタイムとはいえ4WDを持つ駆動系を引っ張りまわすのだから致し方なし。
高速燃費は9.3km/Lを記録。軽自動車がまだ上限80km/hだった時代に開発されていたのだから、このくらいは妥当な数値といえよう。
本格派オフロード軽自動車 スズキ ジムニーとは
スズキ ジムニーは1970年に登場以来、本格的なオフロード性能を備えた4輪駆動の軽自動車として、一般ユーザーのみならず、山岳部や積雪地域での法人用途として根強い需要を保ち現在に至っている。
特に3代目となる現行モデルは、街乗りを意識しながらも、基本姿勢はやはり悪路走破性を重視。スイッチによる切り替えが可能になったパートタイム4WDシステムなど、使い勝手は向上させながらも、ラダーフレームを用いることで、強度と耐久性を維持し続けている。
搭載する3気筒インタークーラーターボ付きのK6A型660ccエンジンは、64ps/6500rpm、103Nm/3500rpmを発揮。ミッションは5速のMT、あるいはOD付4速ATが選べる。アイドリングストップは装備されない。
今回のテスト車は、2014年8月にデビューした特別仕様車の“ランドベンチャー”。通常モデルとの違いは、外観にブラック塗装を施した専用メッキフロントグリルや専用フェンダーガーニッシュを採用されている点。また、内装は、黒を基調として随所にシャンパンゴールドの加飾が施されている点が、ノーマルモデルとは異なる。
ジムニーのフロントシートは背もたれと座面にクオーレモジュレという素材を採用しているため、撥水機能に加え、夏は熱くなりにくく、冬は冷たく感じにくい、快適性と機能性を両立させているという。更に、シルバーステッチを施した本革巻ステアリングホイールと本革巻シフトノブ、色調を合わせた専用フロアマットなども装備される。また、特別仕様車の発表と同時に、メーターやシート表皮などを新しいデザインに変更されている。
テスト概要
・テスト期間:2017年6月14日~27日
・テスト距離:市街地 281.6km 郊外 307.8km 高速 108.9km 合計698.3km
・エアコン:マニュアルエアコンは常時使用。温度はダイヤル操作で適宜
・駆動方式:2WDを常時選択
・タイヤ:ブリヂストンDUELER H/T 684 175/80/R16
・燃費計測方法:車載平均燃費計が設定されていないため、各工程走行後満タン法により計測。正確を期するため、極力平たんな場所で、目視で給油口ギリギリまで給油。
実燃費:9.1km/L
走行距離:281.6km
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およそ低燃費に至る装置が搭載されておらず、かつ、オフロードを想定されているクルマであるから、この燃費は致し方ないが、軽自動車で10km/Lを割るというのは、現在市販されているクルマの中では最悪といってもいいだろう。
具体的に走行シーンを再現してみると、信号が変わりそこから一気に加速をすると3000rpm強あたりで変速しながら、望む速度に到達する。その際、アクセル開度は半分以上。必要に応じて更に踏み込むこともあった。
最新の軽自動車と比較をすると、かなり高速までエンジンは回転しているので、効率的な面でも劣らざるを得ない。更にアイドリングストップなども装備されないため、常にエンジンは始動状態であるから、なおさら燃費は悪化してしまう。
一方、走りそのものに目を向けると、ダイレクト感が目立ってくる。例えばボールナット式の電動パワーステアリングは、近年の基準からすれば重めだが、設計年度が古いにも関わらずしっかりとした手ごたえをドライバーに伝えて来るし、4速ATも踏めば踏んだだけ動力をタイヤに伝えている。 もちろん乗り心地は決していいとは言えないし、ローギヤードであるからエンジンはぶんぶん回り煩いこと甚だしいが、ドライバーの五感の全てにクルマの状態がストレートに伝わってくるのは、現代のクルマでは味わえないジムニーならではの魅力である。
また、着座位置が高く、視界も広いため、本当にストレスなくどこへでも潜り込んでいけそうだ。特に後方左右の視界は現代車としてはトップレベルで、左折時の目視による歩行者等の確認がこれほどやりやすいクルマは他にないだろう。
実燃費:12.7km/L
走行距離:307.8km
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郊外路のバイパスや空いた国道では一定速度、しかも、そこそこ速い流れに乗って走るので燃費は大幅に向上する。やはりというか、当然というべきか、それはジムニーでも変わらない。ジムニーの郊外路での実燃費は、JC08モード燃費に対し93%の達成率なので、特に不満はない。
しかし、絶対値としては決して褒められたものではなく、この辺りは設計年次の古さゆえ致し方ないが、テスターとしては、十分満足できるものと評価したい。
郊外路走行中に一番気になったのはステアリングの曖昧さだ。街中では平均速度が高くないので、それほどでもなかったが、切り始めからちょうどこぶし1個分弱の不感帯が存在し、50km/hあたりからは両手で握っているステアリングに力が入ってしまう。これは2つの要因が考えられる。
ひとつはステアリングそのものの味付けだ。悪路を想定したクルマであるが故、それほど機敏な動きを想定していないことから、あえて切り始めに甘い部分を残していること。もうひとつは扁平率の高い大径タイヤが装着されていることから、タイヤの横剛性が弱く、それが甘さとなってステアリングに伝わってきていることが想像された。
信号からのスタートは深くアクセルを踏み込み、およそ4000rpmまで引っ張りながら変速させていけば、十分流れをリードできる。当然そこまで回すのでエンジン音はかなり車内に侵入してくるので、ステアリングについているオーディオのボリュームは操作が必要になりがちであった。
実燃費:9.3km/L
走行距離:108.9km
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もしかしたら、ジムニーの最も苦手とするシチュエーションは高速道路かもしれない。100km/hでほぼ4000rpm、80km/hでも3400rpmほどエンジンは回っているので、決して燃費に有利とはいえず9.3km/Lに留まった。
更に高速の上り坂などでは速度を維持するために、よりアクセルを踏み込み、場合によってはキックダウンさせることもあったので、より燃費に悪影響を及ぼしていた。
ドライバー以外の乗員にとっても、高速は退屈の一言。ブンブン唸るエンジン音と共に、CDが音飛びしてしまうほどの足の硬さなので、快適とは程遠い状況だった。
一方、ドライバーも退屈かといえば、いい意味でも悪い意味でもそうでもない。郊外路でも記述したがハンドルの曖昧さ故、直進安定性も決して良くはなく、特に緩い高速コーナーでは若干緊張を強いられる。また、ステアリングの取り付け位置の剛性があまり高くないようで、段差などでぶるぶるとステアリングが震えることがあった。
そういった気になる点を除くと、ドライバーはこの先は上り坂なので少し助走をつけておこうとか、どこで追い越しをかけるかのタイミングを計るなど、ないパワーを有効に使うために色々考え、想像しながら運転することになるので、意外と頭を使い忙しいのだ。
総合評価|ジムニーにあるもの、新型車に無いもの。
実際にジムニーを普段使いをしてみて、とにかく良好な視界は非常に魅力的だった。
最近のクルマは、スタイルを重視することでAピラーが寝ていたり、空力のためにリアウインドウが狭まり、Cピラーが絞られることで死角が生まれたりと、意外と見えないところが発生している。
しかし、このジムニーの場合、クルマの四隅がしっりと把握でき、かつ、ナローなボディのため乗りやすさは他をはるかにしのぐ出来だ。
また、ペダル類の操作はダイレクトで剛性に富んでいる。ブレーキペダルなどは思い通りに踏力コントロールが可能で、しかもそれが見事に反応するので、停止する瞬間に踏力を緩めることで、ショックなく停止させることも十分に可能であった。この辺りは最近のオーバーサーボ気味のクルマや、アイドリングストップが付いているために、そのオンオフでブレーキサーボの浮力が変わり、ブレーキコントロールがシビアになるクルマたちは見習ってほしいものだ。
気になった点としては、運転席側にはウォークイン機能が付かないこと。助手席に人が乗る場合、荷物は後ろに置かねばならず、そういった時に一度バックレストを倒すと、元の位置には戻らず直立位置になってしまうのだ。その結果改めてシートポジションを合わせなければならず面倒であった。
また、ライト点灯時にメーター内に認識させるためのランプがつかないのは少々不便で、トンネルから出た時に消灯を忘れることもあった。
さて、ここまである程度ジャーナリスティックな視点でジムニーを評価してきた。その理由は、現代においても新車を購入できるという点で、他車とのレベルの違いを明確にしておきたかったからだ。そこから生まれる結論は、当然のことながら時代遅れということに尽きる。20年前のクルマなのだから今の基準と比較すればそうなることは火を見るより明らかだ。
では、なぜ未だにスズキはこのジムニーを作り続け、ユーザーは求めているのか。それは、ジムニーが唯一無二の存在だからだ。
ジムニーに求められる価値は現代のクルマたちに備わる快適性や操作性、省燃費性能でなく、SUVとしてのタフネスさや走破性、サイズや取り回しのしやすさなのだ。
そういう視点で改めて見直すと、ステアリングの曖昧さや取り付け位置の剛性の低さは、悪路からのキックバックや衝撃を逃がすためと捉えられるし、何よりも視界の良さは狭い林道や、ジムニーが最も輝くであろう山林での取り回しに直結する(もちろん仕事や生活など必要に迫られて入っているはずだ)。
今回の試乗中、山梨県の山間部、八ヶ岳まで出かけたのだが、その地域のジムニーの密度は非常に高く、生活の足として十分に機能していることが理解できた。つまり、家に入るまでは木の生い茂る細い林道を進み、かつ、その林道も舗装はされていない。冬になれば雪が降り、道路環境は一変する。そういった過酷な状況下で誰が最新の軽自動車や、大型のSUVを買おうと思うだろうか。
それよりも近所のスーパーまでどういった状況でも安全に、苦労なく買い出しに行ける、まさに“アシ”が必要なわけで、まさにジムニーはそういったシーンにうってつけ、これ以外に選択の余地がないクルマなのだ。
最後にテスターの個人的な意見を述べるなら、年を取ったらジムニーの5速MT1台だけで過ごしてみたい。そうすれば、きっとボケないんじゃないだろうかとさえ思う。
スズキ ジムニー主要スペック|テスト車両:ジムニーランドベンチャー 4AT
スズキ ジムニーランドベンチャー 主要スペック | |
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グレード | ランドベンチャー |
駆動方式 | パートタイム4WD |
トランスミッション | 4速AT |
価格 | 1,691,280円 |
燃費 | 13.6km/L |
全長 | 3,395mm |
全幅(車幅) | 1,475mm |
全高(車高) | 1,680mm |
ホイールベース | 2,250mm |
トレッド:前 | 1,265mm |
トレッド:後 | 1,275mm |
乗車定員 | 4人 |
車両重量(車重) | 990kg |
エンジン | 水冷4サイクル直列3気筒インタークーラーターボ |
排気量 | 658cc |
エンジン最高出力 | 47kW(64PS)/6,500rpm |
エンジン最大トルク | 103N・m(10.5kg・m)/3,500rpm |
燃料タンク容量 | 40L |
燃料 | 無縁レギュラーガソリン |
ステアリング | ボール・ナット式 |
ブレーキ:前 | ディスク |
ブレーキ:後 | リーディング・トレーリング |
タイヤ | 175/80R16 91Q |
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