テスラが宇宙を“走った”!? イーロン・マスク氏率いるSpaceX社が世界初の偉業を生中継

なんてこった! これはCGじゃあない!

日本時間の2018年2月7日午前5時45分、テスラ ロードスターを載せたSpaceX社の超大型ロケットFalcon Heavy(ファルコンヘビー)の打ち上げが成功した。そして離陸から7分後、3基あるうちの2基のブースターも再利用できるレベルで無事回収されている。このときの画像がこちら。打ち上げじゃなくて着陸の時の画像というのがスゴイ。

しかし、車好きにとって気になるのは、ファルコンヘビーに搭載された、赤いテスラ・ロードスターのことだろう。生中継動画では、テスラ・ロードスターに宇宙服を着たダミー人形がハンドルを握る姿が映し出されており、その後ろには青い地球が!なんで?これどういうこと? CGじゃないの? いえいえ、これ全て本物。

今現在も、地球から2000km離れた宇宙空間でテスラ・ロードスターが走行?中なのである。

>>偉業?それとも・・・?? 宇宙を飛ぶテスラ ロードスター[画像ギャラリー]

【動画】Falcon Heavy Test Flight[SpaceX]

テスラ初の市販EV「テスラ ロードスター」が採用された理由を考察する

宇宙空間でテスラのハンドルを握るのは、スペースX社が開発した宇宙服を着たダミー人形「スターマン」だ。さらにダッシュボードの中にも極小のダミー人形を乗せたテスラ・ロードスターのホットウィール(トミカサイズのミニカー)も同乗している。

車はもちろん本物で、少し前までアメリカの道路を走っていたテスラ・ロードスターである。実はこちら、テスラ社の創業者であり、スペースXのCEOでもあるイーロン・マスク氏の「愛車」なのである。イーロン・マスクは赤と黒、2台のロードスターを所有しているが、このたびの宇宙旅行に選ばれたのは2010年型の赤い方。

なぜ赤を選んだか?というと、ファルコンヘビーの最終ミッションである「赤い惑星~火星」への旅に合わせたという説が濃厚だ。暗い宇宙空間では、黒よりも赤いボディカラーの方が映えて美しいという理由もあるだろう。

当初はPRを兼ねてテスラの最新車となる「テスラ モデル3」を乗せることも考えられたようだが、「地球をバックにした美しいオープンカーの絵」を優先させたと思われる。オープンであれば中のダミーも良く見えるし、背景の地球も良く映えるし、絵になるのはロードスターだ。また、ロードスターはテスラが世に出た際の第一号であり、イーロン・マスク自身も愛車にしている。アツくて深い「思い」もあったのだろう。

ちなみに、このテスラ ロードスターは、宇宙を走る?上で特別な装備は施されておらず、地球上で乗っていたときとほぼ同じノーマル状態だそう。

イーロン・マスクが繰り広げる“アメリカンジョーク”の数々に思わずニヤリ

小ネタもなかなか面白い。グローブボックスの中には、同型のミニカー+極小のダミー人形、そして「銀河ヒッチハイクガイド」(The Ultimate Hitchhiker's Guide to the Galaxy)というSF小説の本とタオルがセットされているそう。宇宙でヒッチハイクに遭遇した時の対応方法や、スターマンが乗るテスラが運行不能となった時に他車?にヒッチハイクをする際のやり方など、とても便利なガイドブックになりそうだ(笑)

カーナビの画面には「Don’t panic!!」と表示されているという。そう。宇宙では、トラブルが発生しても冷静さを保つことが大切なのだ。

さらに、このたびのファルコンヘビー発射のあと、ブースターと切り離され、シェルの中からテスラが出てきた際には、(もちろん中継で聞こえるわけではないが)、カーオーディオからデヴィッド・ボウイの「Life On Mars? 」(同じデヴィッドボウイの「Space Oddity」から変更された模様)が流れるようセットされていたとのこと。また、車両のとあるスペースにはこのプロジェクトに関わった全員の名前が入ったプレートも装着されている。

なにはともあれ話題作りに事欠かないアイデアマンのイーロン・マスク氏

テスラ・ロードスターが搭載された背景は、「宇宙空間に車をもっていったらどうなる?」という実験ということではなく、ほとんどイーロン・マスク氏の遊び心といっていいだろう。通常、ロケットに「おもり」として積まれるのはコンクリートの塊など、無機質で味気ない「重量物」が主流で、重量について話題になることはあっても、コンクリートの塊そのものが話題になることはほとんどない。

しかし、このたびのファルコンヘビーのデモ運用をするにあたって、「どうせならテスラ積んでみよう!」というアイデアが出された。そしてイーロン・マスクにとって最も思い入れのある「テスラ ロードスター」が搭載され、宇宙に放たれたというのが事の経緯である。

最後にファルコンヘビーについて少し触れておこう。

ファルコンヘビーはスペースX社最大のロケットで、注目すべきはその「PAYLOAD」の巨大さにある。ロケットにおける「ペイロード」とは、最大積載量とほぼ同じ意味で、ファルコンヘビーのペイロード(地球から2000キロの低軌道まで)は約6万3800キロ。ちなみに、次に多いスペースシャトルでも2万4000キロ、日本のH2Bロケットは1万6500キロというから、ファルコンヘビーがいかに大きいかがわかる。そして、ポイントはエンジンが再利用できるということ。再利用するためには当然、宇宙に放たれてからブースター部分を回収する必要があるが、3基あるブースター(エンジン部分)は今朝の打ち上げのあと、2基は予定通り、ケープカナベラル空軍基地のパッドへ着陸に成功し、無事回収されている。

テスラ ロードスターはこの後、火星へ向けたファルコンヘビーのミッション完了後、永久に宇宙空間を走行し続けるそうだ。空のかなたで、地球を見守りながらテスラ ロードスターが道なき道を走り続けている…。何十年か、何百年後か?いつの日か回収される日は来るのだろうか?

ロマンあふれる壮大なテスラの旅は今始まったばかりである。

[Text:加藤 久美子/Photo:“Live Views of Starman”[YouTube]より]

【動画】Live Views of Starman[SpaceX]

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加藤 久美子
筆者加藤 久美子

山口県下関市生まれ 自動車生活ジャーナリスト 大学時代は神奈川トヨタのディーラーで納車引き取りのバイトに明け暮れ、卒業後は日刊自動車新聞社に入社。出版局にて自動車年鑑、輸入車ガイドブック、整備戦略などの編集に携わる。95年よりフリー。2000年に第一子出産後、チャイルドシート指導員資格を取得し、チャイルドシートに関わる正しい情報を発信し続けている。 得意なテーマはオリジナリティのある自動車生活系全般で海外(とくにアメリカと中国)ネタも取材経験豊富。愛車は22年間&26万km超の916アルファスパイダー。記事一覧を見る

樺田 卓也 (MOTA編集長)
監修者樺田 卓也 (MOTA編集長)

自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。

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