テスラで往く”オトナの遠足”|世界最先端のロボット工場へ潜入(1/3)

  • 筆者: 嶋田 智之
  • カメラマン:オートックワン編集部 取材協力:FANUC
テスラで往く”オトナの遠足”|世界最先端のロボット工場へ潜入
テスラ モデルS P100D(右)とモデルX 75D(左奥) レポーターの自動車ライター、嶋田智之さん FANUC(ファナック)が誇る多関節ロボット。自動車をはじめ、あらゆる分野での自動化に貢献。2016年6月には累計生産42万台を突破している! ファナック株式会社の社屋と並ぶテスラ モデルS。黄色いカラーはファナック社のイメージカラーだ。 <テスラ モデルS P100D> <テスラ モデルS P100D> <テスラ モデルS P100D> <テスラ モデルS P100D> <テスラ モデルS P100D> <テスラ モデルS P100D> <テスラ モデルS P100D> 画像ギャラリーはこちら

■ちょっと前の“夢”や“未来”が今、そこにいる

考えてみたら、iPhoneのようにパーソナルコンピュータ(死語!?)まで内蔵されてる「持ち運びのできる電話」なんて、子供の頃にはSF小説やマンガの中にしか出てこない飛び道具中の飛び道具だったものな・・・というと「あんたはナニ時代の人? 安土桃山時代?」なんて嘲笑する人もいるだろうけど、ほんの40年ほど前にはそういうものだった。夢の道具、未来の道具、だ。

メイルが送れないどころか、重さが3kgもあるくせに通話もなかなか繋がらない肩掛けのポータブル電話(ショルダーホン)が発売されたのが1985年、重量が1kgを切った本当の意味で携帯できる電話ができたのは1987年。PHSでショートメイルが送受信できるようになったのが1996年で、インターネット接続ができる携帯電話が発売されたのは1999年。そして2008年(註:アメリカ本国では2007年)にiPhoneが発売されてスマートフォン時代に突入すると、それは一気に普及して従来型の携帯電話を駆逐し、そこから先も“できること”はどんどん増える一方、気づけば“人と繋がる”という概念すら変えてしまった。そして僕達は、それを特別なモノと感じることもなしに使ってる。

ちょっと前の“夢”や“未来”が、当たり前のようにカタチになって、当たり前のようにそこにあるのだ。

いったいなぜそんなことを徒然なるままに考えたのかといえば、その日の“オトナの遠足”であらためて体感してきたことと初めてこの目で見てきたものが、まさしくそういう世界だったからだ。

>>今そこにある”未来”をフォトギャラリーでもじっくりチェック[画像95枚]

■世界の並み居るスーパースポーツを置き去りにするEV

<テスラ モデルS P100D>

その日、僕達はテスラモーターズジャパンからお誘いをいただき、テスラの最新ラインナップに乗って山梨県の忍野村に向かった。そこには、日本で有数というより世界ランキングで語れるくらいのロボット工場と研究所があって、日頃は公開されていないロボットそのものや工場を見学させていただけるのだという。

僕達の往路に用意されたのは、テスラ モデルSのP100Dだった。「P」はパフォーマンス、つまり強力なモーターを搭載していることを、「100」はバッテリー容量が100kWhであることを、「D」はデュアル・モーター、すなわち前後にモーターを備えるAWDであることを意味している。システム全体でのパワーとトルクは612psに98.6kgm。最高速度は250km/hで、0-100km/h加速タイムは2.7秒、隠しコマンドを使えば2.5秒。いうまでもなく、テスラの全ラインナップの中で最も高性能なモデルだ。

0-100km/hが2.7秒っていうのがどれほどのものかといえば、フェラーリの488GTBが3.0秒、最新フラッグシップの812スーパーファストは2.9秒、ポルシェ991ターボSの最速仕様も2.9秒、ランボルギーニ・アヴェンタドールの最速限定車、LP750-4SVが2.8秒。つまりモデルS P100Dの発進加速は、それら並みいるスーパーカー達を凌いでいる、というわけだ。しかもテスラはEVだから、その気になればアクセルペダルを踏んだ瞬間に最大トルク98.6kgmを一気にドン!と立ち上げさせることができる。この領域のクルマのフル加速はただでさえ別世界といえるほど激しいものだけど、EVの特性でそれ以上のダッシュを見せるP100Dの加速力は、異次元といっても過言じゃないほど。慣れない人にこのうえないスリルを体験させるには充分だし、三半規管の弱い人がそれに見舞われたら一発で気持ち悪くなっちゃうかも知れない。そういう領域だ。

■“何か新しいモノに乗ってる”という感覚が心地良い

<テスラ モデルS P100D>

が、今回はそうした狂気の世界に触れる場面じゃない。僕達を乗せたモデルS P100Dは、忍野のロボット工場に向かって静々と進んでいく。ちなみに今回はステアリングを編集部のTさんに預けて、僕は往復とも助手席担当だ。残念なことに右足のカカトに故障を抱えていて、ペダル操作ができないからだ。

とはいえ、助手席にいても解ることっていうのは結構たくさんあるものなのだ。まず加速が全般的に力強いこと。Tさんが気合いを入れてアクセルペダルを踏んでるわけでもないのに、2.2tを超える車体が全く重さを感じさせることなくスイスイと前に進んでいく。高速道路の合流時にちょっと強めに踏み込んでもらったら、おっ!と思うくらいグイグイ加速する。

それに、加速していくときのモーターが作り出す滑らかなフィーリングとエンジン音が皆無であることによる静けさが生み出す、何ともいえない高級感。そして確実に存在する“何か新しいモノに乗ってる”感覚。この辺りは内燃機関を持ったクルマがどう頑張っても、なかなかEVには太刀打ちできないところだ。それに回生を強く効かせるモードにセットしての、ワンペダル・ドライブもそうだろう。一般道を走っているときなど、カーヴ手前で減速するにも信号で停止するにも、アクセルペダルを緩めるだけで回生ブレーキが予想以上に働いてくれるから、慣れればブレーキペダルに触れることなく速度調整することも思った位置に停止することもできる。Tさんも一般道ではほとんどの時間、アクセルペダルだけで走っていた。

■日々進化をし続ける”オートパイロット”

インパネ回り<テスラ モデルS P100D>

まだある。オートパイロット機能の進化、である。もちろんステアリングやペダル類を即座に操作できる状況にしておく必要はあるが、アダプティブクルーズコントロールとオートステアリングとでもいうべきレーンキープ&レーンチェンジシステムは、物凄くしっかり機能するのだ。最新式では8台に増えて360度の角度と最長250mまで視認するカメラとレーダー、超音波センサーを用いたこのシステムは、オートパイロットのモードに入れていれば、ドライバーが操作をしなくても自動的に設定した速度まで加速するし、前走車との距離が縮まったり目の前に他車が入り込んでこようとすれば自動的に減速するし、道路の曲率に合わせて勝手にステアリング操作をして曲がっていく。レーンを変えようとしても、近くに他車がいるときには応じてくれない。そうしたときのクルマの動きに熟練したドライバーほどの繊細さはまだないようだが、いずれはソフトウェアが改善されて自動的にワイヤレスでアップデートされていくだろうし、とにかく現時点においても危なげというものが感じられなかった。

テスラのこの機能は自動運転の定義においてはレベル5まであるうちのレベル2、すなわち“部分自動運転”に該当しているわけだが、その出来映えは全身を使った手動運転が大好きな僕にも、強い関心と感慨を持たせるだけの説得力を持っていた。もっと有り体にいうならば、「10年前ならこんなことがフツーにできるようになるとは思ってなかった」であり、「もっと昔だったらSF小説かマンガの中の乗り物だよな」であり、「この先どこまでどう進化していくのかちょっと見てみたい」である。

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嶋田 智之
筆者嶋田 智之

本人いわく「ヤミ鍋系」のエンスー自動車雑誌、『Tipo』の編集長を長く務め、スーパーカー専門誌『ROSSO』の総編集長を担当した後、フリーランスとして独立。2011年からクルマとヒトに照準を絞った「モノ書き兼エディター」として活動中。自動車イベントではトークのゲストとして声が掛かることも多い。世界各国のスポーツカーやヒストリックカー、新旧スーパーカー、世界に数台の歴史的な名車や1000PSオーバーのチューニングカーなどを筆頭に、ステアリングを握ったクルマの種類は業界でもトップクラス。過去の経歴から速いクルマばかりを好むと見られがちだが、その実はステアリングと4つのタイヤさえあるならどんなクルマでも楽しめてしまう自動車博愛主義者でもある。1964年生まれ。記事一覧を見る

樺田 卓也 (MOTA編集長)
監修者樺田 卓也 (MOTA編集長)

自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。

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