“即日完売”の伝説を生んだスバル WRX STI「S207」試乗レポート(5/5)
- 筆者: マリオ 高野
- カメラマン:和田清志
スムースさと過給レスポンスの鋭さが見事な羨望の「バランスドエンジン」
羨望の「バランスドエンジン」の回転フィールについては、アクセル全開時の高回転域での官能というより、街乗りでの何気ない状況下におけるスムースさと過給レスポンスの鋭さのほうに垂涎&羨望ポイントを感じました。
標準車に搭載されるノーマルのEJ20もまた、長年鍛え抜かれたおかげで8000回転まで回してもまったく罪悪感を伴わない高回転型ユニットなので、全開時の刺激性ではS207のバランスドエンジンに遜色がなく、ピークパワーの差もそれほど大きくはないように感じましたが、サーキットなどで高回転域を使い切るような走り方で乗り比べれば、如実に差が出るかも知れません。
市街地をインテリジェントモードで転がしてるときのアクセルのツキの良さと、カムに乗ってる感には、重量バランス調整の恩恵や旨味がしっかり出ていると思います。
ブースト計を表示すると、過給の立ち上がりの早さが視覚的にも実感できるでしょう。
蘇る!?不等長サウンド!
さらに、個人的に強く訴えたいのが排気サウンドの秀逸さ!なんと、等長等爆になる前の旧世代エキゾーストに近い、いわゆる「ドコドコ音」(不等長エキマニの音)が強まっているのでした!
自分も含め、いまだに旧世代のボクサーサウンドへの未練を残す守旧派スバルファンは少なくありませんが、この音色なら、ついに未練を断ち切ることが出来ます!といいながらもS207はもう買えないので、結局未練は残るのですが!(笑)
車内の静粛性が高まり、あらゆるノイズの雑音が大幅に遮断されるようになったおかげで、耳に心地よい音色だけが聴こえやすくなったこともサウンドの魅力度アップに繋がったのでしょう。
車外にいると高回転域まで回したときのサウンドの方が刺激的ですが、運転している状況では、アクセル全開時よりも高めのギアでパーシャルスロットル巡航をしているときの音色が一番だと感じました。
即日完売の伝説を生んだことも納得の甘美マシン「S207」
内装に関しては、前述したステアリングの手応えは700万円級のクルマとして申し分なし!と掛け値なく言い切れます。
それ以外の加飾パーツについては、個人的には不満を感じませんが、欧州の高性能車ユーザーから賞賛されるためには、もう少し新しい工夫や試みが必要かも知れません。やはり、オーダーメイドでしょうか。
このように、総じてS207は即日完売の伝説を生んだことも納得の甘美マシンであることは間違いありません。抽選に当たった方は、12月から始まる納車を愉しみにお待ちください。
S207は内容的にも販売的にも大成功を納めたので、惜しくも抽選に漏れた方のためにも、次なる新しいSシリーズが発売されるのはそう遠い先ではないはずです。
私のような貧窮ライターにとっては、さらに果てしなく遠い夢の雲上カーとなってしまうのでしょうが、次のSが出る頃には700~800万円の予算を捻出できるようになっていたい!などと、不毛ながらも前向きな目標を立てる源泉になりました。
さらに、S207のベースとなった標準のWRX STIが十二分に魅力的なマシンであることをあらためて思い返せたのも有意義です。
S207の存在により、WRXというスポーツセダンの認知度と存在価値が高まったことは何よりの収穫でありました!
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