縛りが鍵!? 超人気レース「スーパーGT」を支える2つのルールとは

縛りが鍵!? 超人気レース「スーパーGT」を支える2つのルールとは
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スーパーGT、四半世紀にわたる人気のカギ「2つのルール」とは!?

スーパーGT第三戦300クラス

超人気レースである「スーパーGT」をGT300クラスを通して理解するコラム。

第2回目は、スーパーGTの人気を支える2つのルールについてお話しよう。

前回お話した通り、スーパーGTは今年で24年目を迎える長寿カテゴリー。それは、人間で言えば生まれたばかりの子供が成人を迎え、さらに4年経って「そろそろ結婚ですかね~」と言われてしまうほど長い年。ざっと四半世紀! という長さである。

そのスーパーGTが、どうしてこれだけの期間、人気を保つことができたのか?

その影には「性能調整」と「ウェイトハンディ制」という、ふたつの大きなルールがあったのである。

>>スーパーGT 第3戦 オートポリスの様子を写真で見る

縛られるからこそ面白い!? 1つ目のカギ「性能調整」とは

スーパーGT第三戦300クラス

「性能調整」とは、文字通りマシンの性能を主催者が調整することである。

その狙いは一定のマシンがひとり勝ちしないこと。現在、GTではこれをバランス・オブ・パフォーマンスを略して「BoP」と呼んでいる。

もともとレーシングカーは、ルールによってそのサイズや車高、エンジン排気量などが決められており、これに即してチームやメーカーがマシンを作る。

しかし、それだけだとより多く資金を投じたメーカーが勝つ可能性が高くなり、結果開発競争が激化する。そして、「開発競争が激化するとレースは廃れる」というのは、歴史が物語る事実である。

直近で言えばグループAやJTCC(全日本ツーリングカー選手権)、また第一期DTMを国際レース化したITC(インターナショナル・ツーリングカー選手権)が、参戦コストの高騰でエントラントの首を絞める結果となった。

こうした状況を、はた目で見ていたGTアソシエーション(GTA)は、自らのレースにBoPを盛り込んだのである。参戦車両の性能をルールで拮抗させれば、開発競争は抑制され、レースでは激しいバトルが展開されるからである。

マシンの性能を一番調整しやすいのはエンジン。そこで、GTAはリストリクター(制限装置)を採用し、そのパワーを絞った。

現在GT500クラスでは、これを燃料噴射に装着し(燃料流量リストリクター)、GT300クラスでは吸気口の大きさに用いている(吸気リストリクター)。それ以外にも、必要であればウェイトを搭載したり、空力やタイヤ径などにも制限を設けた。

ちなみに、JAFーGT/JAFーGT MC(マザーシャシー)と、FIA-GTは、GTAが性能調整を行う。 そして、“外来種”であるFIA-GT3車両については、ブランパンGTシリーズをオーガナイズしているSROモータースポーツグループのBoPを採用した。

よって、FIA-GT3車両を選んだチームは、シーズン前にSROが発表するBoPによって、マシンの性能が左右されてしまう。また、それでも調整できなかった場合は、シーズン中の改訂も行われる。

>>2017 スーパーGT レースクイーン特集 (181枚)

2つ目のカギは、「ウェイトハンディ制」勝利の重みを感じて走れ!!

スーパーGT第三戦300クラス

そして、もうひとつの独特なルールは、獲得ポイントに応じて課される「ウェイトハンディ制」だ。

これは、第一期DTMの衰退から学んだ新生DTMが始めた手法で、スーパーGTの場合はドライバーズポイントに応じたウェイトが、シーズン中に搭載されて行く。

具体的には、2戦目から1ポイントにつき、2kgを換算した重りがマシンに課せられ、これが6戦目まで続く。7戦目からは獲得ポイント×1kgとなり(実質ウェイトが半分降ろされる)、最終戦ではノーウェイトとなる。

このふたつのルールによって、各車の性能が整うと、レースで、速いチームだけが勝ち続けることは難しくなった。

また、多くのチームが勝つ可能性を見いだしたことで、多彩な車種がレースに参加するようになった。その結果、スーパーGTは日本で一番の観客動員数を誇るレースになったのである。

もちろん、このふたつのルールに反対する声もある。「強いクルマが勝つのが、純粋なレースだ!」という意見である。ルールによってバトルを演出するレースに、一部では「プロレス的」と揶揄する声もある。

しかし、今のスーパーGTは、そんなに甘いレースじゃない。たとえ、強いチームがウェイトを積んでる間に弱いチームが優勝したとしても、それは一時のこと。強いチームは、得意のコースで大きく、苦手のコースでもコツコツとポイントを獲得し続け、第7戦や最終戦で、再びその牙を剥くからだ。

そして、そういうしぶといチームでなければチャンピオンが獲得できないほど、スーパーGTでの闘いは熾烈なのである。

スーパーGTは「多彩な車種によって行われるワンメイクレース」!?

スーパーGT第三戦300クラス

だから、見方を大きく変えると、BoPとウェイトハンディ制によって、スーパーGTは「多彩な車種によって行われるワンメイクレース」だとも言える。

実際、いまスーパーGTで勝つには、マシンチョイス以外に「タイヤの性能」と「2名のドライバーの技量」、そして「チーム能力」が必要不可欠だと言われている。 もちろん実際は、ワンメイクレースよりも各車の特色が色濃く出た、しかしながら超接戦のレースが展開されている。

さらに、マシンとコースの相性やGT500との混走、思いも寄らぬアクシデントなど、様々な要素が絡み合う。

そして24年という歳月がレースを醸成し、スーパーGTは世界でも注目されるコンテンツとなったのである。そのルールが良いか悪いか?は別として、今なお盛り上がりを見せているのは事実である。

第3戦GT300クラスは、まさに現代のスーパーGTを象徴するレースだった!

スーパーGT第三戦300クラス

そして第3戦オートポリス(大分)は、まさにそんなスーパーGTを象徴するようなレースだった。

 ポールポジションを獲得したのは、2016年の王者である#25 VivaC 86 MC(松井孝允/山下健太)。アップダウンが激しく、前半の高速コーナーセクションや後半のテクニカルコーナーがタイヤに厳しいオートポリスで、1分43秒702という一番時計を叩き出したのは、もっとも非力だが最も軽く、高いダウンフォースを発揮するマザーシャシーだった。

レースはその25号車(山下健太)をJAF-GTマシンである#61 SUBARU BRZ R&D SPORT(山内英輝)が追う展開でスタート。

レース序盤では、4周目のターン17でスピンした#8 ARTA NSX-GTに、2台のGT300マシンが突っ込み、セーフティカーが導入されたが、レース再開後も、2台の闘いは最後まで続いた。

25号車が30周目、61号車が31周目に、ルーティンのピットイン。迅速なピット作業によって61号車は、25号車の前に出ることに成功した。しかし既にタイヤのウォームアップを完了していた25号車が、再びこれを抜くという、激しいバトルが展開された。

この間にトップに立ったのは、#55 ARTA BMW M6 GT3(高木真一)。

これは、もちろん見かけの順位で、実質トップ争いをしているのは25号車と61号車だ。

しかし、35周目までピットインを引っ張った55号車は、ここで勝負に出た。タイヤ交換を左側タイヤ2本のみとすることでピットストップ時間を短縮し、みごとにトップで復帰したのである(ドライバーはS.ウォーキンショーに交代)。

だが、タイヤ4本を交換した2台のコーナリングマシンは、この奇襲をものともしないほど速かった。つかの間の夢を楽しむ間もなく、55号車は3番手へと転落し、優勝争いは25号車(松井孝允)と61号車(井口卓人)の争いに絞られた。

懸命に逃げる25号車は、松井が持ち前の速さを発揮して一時3秒以上のマージンを稼ぎ出した。

25号まさかの燃料トラブル!?その差は、わずかに0.091秒!手に汗握る、最終ラップの壮絶な戦い!

スーパーGT第三戦300クラス

しかし、25号車は、終盤になって燃料系トラブルにより、まさかの失速。

これを逃さなかった61号車は、ラスト2周でその差1秒を切るところまで追いつき、最終ラップ突入時には、テール・トゥ・ノーズ状態まで持ち込んだ。懸命に防ぐ松井と、追いすがる井口。

そして、2台は飛び込むようにしてゴールラインへともつれ込んだが、優勝を手にしたのは#25 VivaC 86 MC。その差は、わずかに0.091秒という接戦だった。

3位は、トップ争いからは脱落しながらも、その後ポジションを死守した#55 ARTA BMW M6 GT3がもぎとった。

ちなみに、今季マザーシャシーは25号車のチャンピオン獲得をはじめとした昨年の活躍から、45kgものウェイトハンディを課されている。それでも、25号車は得意のコーナリングコースでポールポジションを獲り、トラブルを抱えながらも、最後は優勝を果たした。

強いチームとは、こういうレースをするのである。そして、これが、現代のスーパーGTなのである。

[Text:山田弘樹]

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山田 弘樹
筆者山田 弘樹

自動車雑誌編集者としてキャリアをスタート。輸入車雑誌 副編集長、アルファ・ロメオ専門誌編集長等を経て、フリーランスのモータージャーナリストに。レース参戦なども積極的に行い、走りに対する評価に定評がある。AJAJ会員。カーオブザイヤー選考委員。記事一覧を見る

樺田 卓也 (MOTA編集長)
監修者樺田 卓也 (MOTA編集長)

自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。

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