国内新車販売500万台以下のクルマ需要は本当の姿なのか?それとも不本意?(1/3)
- 筆者: 渡辺 陽一郎
保有台数が飽和状態に達し新規需要が減った日本
2016年に国内で販売されたクルマの総台数は497万台であった。2015年が505万台だから、対前年比は2%弱のマイナスだ。リーマンショック直後の2010年頃と同等で、さらに遡れば1980年頃に近い。国内販売がピークに達した1990年の778万台に比べると、64%(36%のマイナス)であった。2016年には三菱の燃費偽装問題を受けて、三菱と日産の軽自動車が販売を中止する場面もあったが、それにしても落ち込みが大きい。
国内需要は深刻だが、読者諸兄の感覚はどうだろう。自動車業界ではなく、ユーザーの目線で見れば、新車を買わなくても困らないのではないか。家族が増えるなど生活環境が変われば話は別だが、1年間の走行距離が1万km以内なら、点検や整備を怠らない限り、今の乗用車は10年くらい使える。
ちなみに30年くらい前のクルマは、製造されて10年も経過すると老朽化が目立った。駐車場が直射日光の当たる場所だと、ボディやインパネが色褪せて、内装のはく離も生じた。しかし今は特殊な使われ方を除くと、10年/10万kmなら問題はない。
実際、小型/普通乗用車の平均車齢は、2016年の統計で8.44年であった。平均使用年数(平均寿命)は12.76年で、10年は普通に使えることを示している。
大雑把な計算だが、日本国内で保有される4輪車の総数は7740万台だ。毎年500万台の新車が売られ、同等の台数が抹消登録されたとすれば(中古車輸出も含めると実数は400~500万台)、約15年で入れ替わる。そうなると平均使用年数が約13年なら、500万台前後でもバランスは崩れない。
ただしそうなると別の疑問が生じる。1990年の778万台から、2016年の497万台に減った背景には何があったのか、ということだ。
理由はいくつか考えられる。まずは保有台数の推移。2000年以降はわずかな増減を繰り返して若干の増加だが、それまではほぼ一貫して増え続けた。1970年の国内保有台数は1758万台だったが、1980年には3786万台、1990年には5770万台になった。国内販売は前述の1990年がピークだが、保有台数はその後も増加して2000年には7265万台だ。今はそこから少し増えて前述の7740万台になる。
つまり今は国内の保有が飽和状態に達して新規需要が減り、代替えが中心になって売れ行きが下がったという見方が成り立つ。
海外向けのクルマは日本ユーザーの好みやニーズに合わず
2つ目は新型車の性格と購買意欲の変化だ。クルマを実用重視と趣味性重視に区分するのは難しいが、それでも1990年頃は、比較的求めやすい価格で手に入るコンパクトなスポーティクーペなどが多かった。
それが減少傾向に入った背景には、1989年の消費税導入に伴って改訂された自動車税制がある。それまでの3ナンバー車の自動車税は、2001~3000ccは年額8万1500円と高額だったが、改訂後は2001~2500ccが4万5000円と段階的な課税に移行した。車両の卸売価格に課税される物品税も廃止されている。旧税制の物品税は、5ナンバー車の18.5%に対して、3ナンバー車は23%と高額。そのために車両価格も高かったが、廃止によって3ナンバー車が値下げされた。
そこで各メーカーは、生産規模の多い海外向けの3ナンバーセダンやクーペを、国内にも流用するようになった。国内と海外で共通化できれば開発と生産が合理化され、ボディが大型化されると日本のユーザーも喜ぶと考えたからだ。
ところが海外向けの車両は日本のユーザーの好みやニーズに合わず、売れ行きを下げた。
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