”聞く”から”しゃべる”BOSEへ、”高音質でしゃべる”新技術『クリア・ボイス』世界初公開
- 筆者: 桃田 健史
- カメラマン:桃田健史
「オッケー!グーグル」から「ヘイ!グーグル」?
なんだこれ? アップルなんだか、グーグルなんだか?
これまで、スマホの音声認識は、アンドロイドフォンが「オッケー・グーグル」、iphoneでは「ヘイ・Siri (シリ)」と呼びかけることで、機能がスタートした。
それが今後は、「ヘイ・グーグル」だなんて!?
毎年1月の恒例行事となった、米ラスベガスで開催される世界最大級の家電IT見本市のCES。ラスベガスの主要カジノが立ち並ぶ一角から、CESのメイン会場のあるコンベンションセンターまでは、乗車代金片道5ドル(約550円)のモノレールが走っている。その車体には大きく「HEY GOOGLE」とペイントされている。乗車中の車内では、「ヘイ・グーグル」の使い方事例を音声で紹介していた。
アメリカでは一昨年あたりから、アマゾンの音声認識システム「アレクサ」を搭載した各種のIT機器や家電が一気に売れ始めた。それを追うように、グーグルが音声認識「グーグル・アシスタント」の利用拡大を進めている。
こうした音声認識の新時代に、音のスペシャリストが新たなる戦略に打って出た。主役は、あのBOSE (ボーズ)だ。
”高音質で聴く”で、新たなるチャレンジ
CESのメイン会場から車で10分ほど。ラスベガスのダウンタウンに、BOSEの特設展示会場が設けられた。ここは、BOSE製品の新車への採用する自動車メーカーと議論する場であり、一部のメディア向けの広報活動をする場でもある。
今回用意されていたのは、大きく4つの新技術だ。
まずは、”高音質で聴く”技術から体験した。
最初は、第二世代のポルシェ・パナメーラに採用されている「サウンド・トゥルー」。音源を圧縮した際に失われる音の領域を独自のアルゴリズムを使って、高品質な音に再生する技術だ。
二番目は「カー・ウェイブ」。これは、後席でノイズキャンセリングのヘッドフォンをしている状況で、前席にあるマイクとコントローラーによって、音楽などを中断してヘッドフォン越しにクリアな音での会話ができる。こちらは商品化に向けて開発が進む。
三番目は「ボリューム・ゾーン」。ヘッドレスト内蔵型のスピーカーで、前後席でのボリュームバランスを変更できるもの。そして、トリを取るのが、「しゃべり」に関する高音質についてだ。
音声認識の普及への対応は必須
「クリア・ボイス」。
その名の通り、音声をクリアに伝える技術だ。車内にはラジオやカーナビからの音、風切音、そしてタイヤと路面が接触するロードノイズなど、様々な音が存在する。
こうした車内の環境で、「ヘイ・グーグル」と呼びかけて、音声の認識率が低くなることがあり得る。実は、ある調査によると、車内で音声認識をあまり使わない理由は、音声認識率が悪いからという声が多いのだ。以前は、音声認識の技術自体が熟成されていなかったため、音声認識率が低い場合もあった。だが、グーグル、アップル、アマゾン、マイクロソフトなどITジャイアンツによるクラウドを活用した音声認識は急激に性能アップしている。
そうなってくると、「クリアなボイス」でスピーカーに音声を伝えることの重要性が高まるのは当然のことだ。
このような技術領域で、BOSEの強みは、車載のアンプを設計しているところにある。つまり、アンプへの入力・出力する音の種類を整理することで、音声をしっかりと抽出することが可能なのだ。
実際に、欧州向けの日産 マイクラ(マーチ)車内で「クリア・ボイス」を体験したが、音声認識に経て、ハンズフリーの電話でしゃべった際、ラジオやカーナビの音声をしっかりと軽減して相手にクリアな音声としても伝えることができた。
「クリア・ボイス」の採用について現在、複数の自動車メーカーと協議しているという。
「クリア・ボイス」は、すべての音声認識システムに対応する
BOSEの新技術をひと通り体験した後、BOSEオートモーティブ代表のマーク・マンセル氏と意見交換をした。
その中で同氏は「音声認識は今後、家の中での利用がさらに高まり、自動車の車内でも家の中と同様に各種の音声認識が使われる」という認識を改めて示した。
その上で、筆者が「クリア・ボイスを念頭に置いた車内の音声認識について、グーグル、アップル、アマゾンなど音声認識(エンジン)それぞれに対して、BOSEがAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェイス)を用意することになるのか?」と聞いた。
これに対してマンセル氏は「可能性はある。各自動車メーカーとの協業の中で、近年変化の激しいユーザーのニーズをしっかりと捉えながら、我々の開発を進めたい」と答えた。
”聴く”から”しゃべる”まで、BOSEの音声に関するビジネス領域は今後、ますます広がりそうだ。
[Text:桃田健史]
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