三菱自の補償金「10万円」は本当に“妥当”なのか、ユーザーへの損失を計算してみる(3/3)
- 筆者: 渡辺 陽一郎
では、「eKスペースカスタム」ではどうなるのか
では、eKスペースカスタムT・e-アシスト(新車価格は175万8,240円)はどうか。
3年後の買い取り価格は新車時の43%として75万6,000円。燃費偽装問題による10%の減額は7万5,600円に相当する。そしてeKスペースカスタムT・e-アシストは、ターボを装着しているから、JC08モード燃費は新届け出値が22.0km/L、旧数値は24.0km/L、悪化率は8%になる。
前述のように1km当たりの燃料代を計算すると、新届け出値では7円。旧数値では6.4円だ。1km当たり0.6円の違いだから、3年間なら1万8000円の差額になる。
購入後の減税については、初回車検時の自動車重量税は、ターボ車では以前から減税の対象外。軽自動車税は、旧届け出値では2700円の減額を受けられたが、新しい数値では対象外になる。
つまり3年間の燃費損失(1万8000円)+3年後の買い取り価格の下落(7万5600円)+税金の上乗せ(2700円)=9万6300円になる。
以上のように大雑把な計算をすると、10万円はおおむね妥当な金額だと分かるが、三菱自動車は損害賠償の内容として、燃料代の差額、今後の車検時等に想定される税差額のほかに「ご迷惑をおかけしたお詫び」も盛り込んでいる。
最後の慰謝料については、総額10万円では補償できないと考えるのが妥当だ。慰謝料まで持ち出すと「10万円では足りない」という話になるので、余計な記載はしない方が良い。
また業界内の話をすれば、中古車業者が在庫として持っているeKシリーズやデイズシリーズの市場価値も低下している。特に燃費偽装問題の発覚直後には、該当する4車種の買い取りを停止した店舗もいくつか見受けられた。ユーザーとしては「売却したくても売れない」という現実もある。
これから三菱自動車は、事実関係を詳細に説明せねばならない。どの部署が不正にかかわったのか、ということから、先に述べた走行抵抗によって15~16%に達する燃費数値の粉飾が行われた理由まで、内容は多岐にわたる。そこを明確に説明しない限り、ユーザーは「三菱自動車に軽く見られている」と受け取るだろう。
ていねいな説明をすれば、今後の道が開けるかも知れない。
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