VW、伝説のサンドバギーを現代風にアレンジした「ザ・ビートル」限定車を販売
伝説的なファン・カーの再来
フォルクスワーゲン グループ ジャパンは、「ザ・ビートル」では初めてとなるクロスコンセプトモデルの特別限定車、「The Beetle Dune(ザ・ビートル・デューン)」を、5月21日から販売する。
限定販売台数は500台、ボディカラーは「ザ・ビートル」では初設定の「サンドストームイエローメタリック」で、価格(消費税込)は、321万9,000円となる。
「ザ・ビートル」をベースに企画・開発された「ザ・ビートル・デューン」は、1960年~70年代にカリフォルニアで一世を風靡した伝説のサンドバギー「Dune Buggy」をフォルクスワーゲンの最新技術で現代風に再現したモデル。
これまで日本に導入した数々のクロスシリーズと同じように、個性的な外観と、ボディ同色でコーディネートされたインテリアなど、フォルクスワーゲンのクロスモデルに共通する数多くの特徴を備えている。
例えば、鮮やかな「サンドストームイエローメタリック」は、インテリアとアルミホイール(スポーク部分)にも使われている。さらに、個性的な外観を強めるアイテムとしては、専用サスペンション(車高+15mm)、新デザインの専用バンパー(前後)、ホイールアーチからボディの周囲を取り囲むブラックのボディプロテクションモール等を標準装着した。
また、さらに現代版の「デューン」では、「ザ・ビートル」としては初めての設定となるブルーモーションテクノロジー(アイドリングストップ機能のスタート&ストップシステムとブレーキエネルギー回生システム付き)の1.4リッターTSIエンジンとダイレクトな走行感覚と7速DSGトランスミッションを採用した。
1960年代に北米で大ブレークした「フォルクスワーゲン(Type1 通称:ビートル)」は、その当時、東海岸では社会的に認められた人たちの移動手段として、西海岸、特にカリフォルニア周辺では、サーファーに代表される若者たちのファッション・アイテムとして愛用されるほか、ヒッピー、サブカルチャー、ポップアートにも受け入れられるなど、まさに、社(車)名である「Volkswagen=People’s Car」として、人種、文化といった、あらゆる社会の垣根を越えて、さまざまな人々のライフスタイルに溶け込んでいた。
こうした時代の流れをリードしたのがカリフォルニアで、燦々と降り注ぐ太陽の光に象徴される明るく健康的な“カリフォルニア・スタイル“は、「ビートル」にも個性的なライフスタイルをもたらした。
ライフスタイルの意欲的なクリエーターである若者たちによって、個性的に改造された数多くのカスタム「ビートル」は、‘70年代に入ると“Cal Look(キャルルック)”と呼ばれる独自のスタイルに進化していく。当時、日本でも多くのメディアがこうした西海岸の“カリフォルニア・スタイル“や”Cal Look“を紹介したことで、日本の若者たちの間にも“憧れの文化の象徴”として広がっていき、社会現象にもなると同時に、「ビートル」もサーフシーンやゲレンデのスターとして、その独自の存在感を高めていった。
「ザ・ビートル・デューン」は、こうした時代に花開いた1台のカスタム「ビートル」にそのルーツがある。
誕生のきっかけになったのは、「Dune Buggy」と「Baja Bug(バグはBeetleのさらなる愛称)」と呼ばれるオフロード用「ビートル」。1960年代のカリフォルニアでは、多くの人たちがカスタムカーで海岸沿いの砂丘や砂漠を走ることをレジャーのひとつとして楽しんでいて、その中でも人気だったのが「ビートル」をベースに、どんなところでも走れるように改造した「Fun Car(ファン・カー)」だった。
1964年、カリフォルニア在住のブルース・メイヤーズが、軽量のグラスファイバー製モノコックボディに、「ビートル」のエンジンや足回りなどを移植して販売したファン・カー「Meyers Manx(メイヤーズ・マンクス)」は、「Dune Buggy」の代名詞的な存在となった。
その後、「ビートル」のシャシーを切り詰めて使用するキットに変更したブルースは、この抜群の走破性と耐久性を誇るバギーで、1967年10月31日に開催された第1回「バハ1000」に出場し、優勝。このレースはバハ・カリフォルニア半島の北部にあるティファナ(メキシコ合衆国)から南のサンルカス岬までの約1,250km(大半は砂漠地帯)を不眠不休で走り切ることから、世界最長のノン・ストップ・レースにして、もっとも過酷と言われる伝説のレースである。この勝利がきっかけとなって、「ビートル」の優秀性があらためて注目されることになった。
毎年11月に開催されるこのレースには、毎回、多くの「Baja Bug」が出場している。その大きな特徴は、「ビートル」のボディシェルはそのままに、高められた車高、タイヤが見えるほど大きく切りとった前後のフェンダー、幅の広いマッドテレーンタイヤ、切り詰められたエプロン、リアにむき出しのまま搭載されたチューニング・エンジンなど、その姿は誰が見ても悪路を走るクルマと想像できるワイルドな外観である。15mm高くなった車高や新しいデザインの前後バンパー(ディフューザー付)を持つ「ザ・ビートル・デューン」のラフロードスタイルは、この「Baja Bug」を彷彿とさせるものとなっている。
ブルースは、その後のテレビ・インタビューで、「このクルマで伝えたいものは“fun(喜び)”だ」と語っているように、約50年もの時を経てフォルクスワーゲンのクロスシリーズの一員として現代に蘇った「ザ・ビートル・デューン」にも、その印象的で個性的なデザイン・エッセンスが至る所に採用されている。
そして、もっとも大切なのは、その当時の人々が感じていたフォルクスワーゲンの“fun”、“Emotion”、“Lifestyle”という感性が、新しい時代のフォルクスワーゲンにも、しっかりと受け継がれていることだ。
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