S660の走行性能は軽史上「No.1」!ホンダ S660 詳細解説+試乗記/渡辺陽一郎(1/4)
- 筆者: 渡辺 陽一郎
ホンダからオープン軽スポーツ「S660」がいよいよ発売!
手足のように自由に操れる小さなスポーツカーは、理想的なクルマのひとつだろう。
しかし、開発するのは難しい。ボディやエンジンの排気量が小さければ価格の安さも求められるが、スポーツカーは生産台数が少ないためにコストを抑えにくい。特に今の小さなクルマは価格競争が激しく、スポーツカーを成立させにくい状況になった。
その意味で注目されるのが「ホンダ S660」だ。文字どおり660ccエンジンを搭載した軽自動車のスポーツカー。性別、年齢、運転のキャリアを問わず、幅広いユーザーが楽しく運転できるクルマを目指して開発された。
S660がミッドシップを採用する2つの理由
ミッドシップを採用した理由は、大きく分けて2つ。
まず一つめは、スポーツカーを造る上で適性の高いレイアウトになること。
重いエンジンをボディの中央に搭載すれば、前後輪が負担する重量バランスを均衡させやすい。S660の荷重配分は、前輪を45%、後輪を55%としており、ボンネットの内部にエンジンを収めたクルマに比べて前輪側が軽い。慣性の影響を受けにくく、軽快な運転感覚を実現させやすい。また55%の荷重が駆動する後輪に加わるため、駆動力の伝達効率が優れている。
それを踏まえて、S660は前輪のタイヤを15インチ(165/55R15)、後輪は16インチ(195/45R16)とした。旋回時に後輪の接地性を高めて走行安定性を向上、かつ駆動力を路面へ確実に伝えるために後輪を前輪よりも太くしている。
そして、ふたつめの理由はS660が搭載するS07A型エンジンの寸法に制約があるためだ。S07A型エンジンは、天井の高いNシリーズの搭載を目的に開発され、エンジン自体も長さが短くて背が高い。ボンネットを短く抑え、室内を広げるためのエンジンだ。なのでS07A型をボディの前側に搭載すれば、ボンネットの低いクーペは造れない。
ミッドシップレイアウトは、S07A型エンジンを使う以上、必然の選択であった。それでも苦労は多く、開発者は「細かな空間の余裕を詰めて、狭いスペースに押し込んだ」と言う。
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