S660の走行性能は軽史上「No.1」!ホンダ S660 詳細解説+試乗記/渡辺陽一郎(3/4)

S660の走行性能は軽史上「No.1」!ホンダ S660 詳細解説+試乗記/渡辺陽一郎
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S660の走行性能は、過去を含めても軽史上「No.1」

ホンダ S660

旋回時の挙動は扱いやすい。ミッドシップの場合、軽快感が伴う代わりにコーナーへ進入する時には十分な減速を行って前輪の荷重を増やす必要がある。前輪の荷重が少ないためだが、S660は接地性が削がれにくく違和感なく運転できた。

「アジャイルハンドリングアシスト」の効果もあるだろう。VSA(横滑り防止装置)のブレーキ圧を高める機能を生かし、旋回時には、必要に応じてコーナーの内側に位置するホイールにブレーキを作動させる。車両を自然に内側へ向ける仕組みだ。

雨天時も試乗した。運転感覚は乾燥路面とさほど変わらないが、強いていえば、後輪の接地性が少し勝って若干曲がりにくい。これも安定性を重視した結果で、後輪を駆動するものの横滑りによる運転の難しい状態には陥りにくい。

このように、S660はハンドリングと走行安定性のレベルがきわめて高い。全幅が1,475mmの軽自動車でありながら、高い速度で曲がっても挙動を乱しにくい。基本的には後輪の接地性を優先させながら、前輪のグリップ性能も優れ、外側に滑って旋回軌跡を拡大させる挙動を上手に抑え込んだ。

ホンダ S660

なのでS660の走行性能は、過去の車種も含めて軽自動車のナンバーワンに位置する。コペンやアルトターボRSも運転の楽しい軽自動車だが、S660のライバル車は、クラスを超えてマツダ ロードスターやトヨタ 86になると思う。

そして軽自動車の全幅であれば、狭く曲がりくねったカーブでも、アウト・イン・アウトのライン取りが行える。日常的な移動もスポーツドライブに変わるだろう。コンビニに出かける途中の、住宅街のちょっとしたS字コーナーでも、スポーツカーを操る実感を味わえる。毎日が楽しくなるに違いない。

なお、VSAの横滑り防止装置はカットできない(トラクションコントロールは解除できる)。むやみに振り回さず、滑らかに速く走ることを目指している。

S660専用のターボチャージャーを装着

ホンダ S660

エンジンは先に述べたようにS07A型の660ccターボ。基本的にはN-BOXなどと共通のエンジンだが、ターボチャージャーはS660専用。ベアリングハウジング、タービンなどは新開発され、吹き上がりを機敏にするとともに、12%の軽量化も達成している。

なお、VSAの横滑り防止装置はカットできない(トラクションコントロールは解除できる)。むやみに振り回さず、滑らかに速く走ることを目指している。

動力性能は、最高出力が64PS(6,000rpm)、最大トルクは10.6kg-m(2,600rpm)。これらの数値もN-BOXなどと同じだが、低回転域で10kg-mを超える最大トルクが発生するため、走行中は実質的に常にターボが作動している。アクセル操作に対する反応の仕方などは、1リッターのノーマルエンジンに近い。幅広い回転域で、動力性能に余裕を持たせた。

ホンダ S660
ホンダ S660

トランスミッションはCVT(無段変速AT)と6速MTを選択できる。実用回転域の駆動力が高いターボであれば、CVTとの相性も良い。CVT仕様にはスポーツモードを設定。CVTの変速比がローギヤード化されてエンジン回転が高まり、アクセル操作に対するスロットルの開き方も拡大する。スポーツモードでは、機敏な運転感覚を味わえるようにした。

しかし6速MTではこのスイッチがセレクトモードになり、メーターの色彩などが変化するにとどまる。6速MTはドライバーのコントロール性が重視されるため、アクセル操作とスロットル開度のバランスは可変式にしていない。その代わり6速MT仕様は、エンジンの許容回転数が7,700rpmと高い。CVTに比べると700rpm上乗せした。

6速MTのユニットはS660専用に開発。シフトレバーが前後左右に動く範囲も適度で、小気味良い操作が行える。CVTのギヤ比は、一部がNシリーズと共通化されるが、6速MTは独自性が強い。

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渡辺 陽一郎
筆者渡辺 陽一郎

1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年務めた後、フリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向。「読者の皆さまに怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も重要なテーマと考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を心がけている。記事一覧を見る

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監修者MOTA編集部

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