クルマでしか味わえない!辺境グルメ旅Vol.6「いすみ~安房鴨川/房総の春の恵みを”おらが丼”で食べ尽くす」(2/2)
- 筆者: トクダ トオル(MOTA)
- カメラマン:オートックワン編集部/いすみ鉄道
南房総・鴨川の新たな名物「おらが丼」って、どんな丼!?
さあ、クルマのサイトで存分に鉄道について語ったら、すっかりお腹が空きました(笑)。再び愛車に乗って、ドライブに戻りましょう。いすみ鉄道の本拠地、いすみ市をスタートし、房総半島を縦断して、鴨川市に向かいました。イルカやシャチのショーでお馴染み「鴨川シーワールド」や、最近ではロボットアニメ「輪廻のラグランジェ」の舞台としても話題を呼んだ、南房総の観光拠点として栄える街です。こちらで、近年話題を呼んでいる「おらが丼」を目指します!
え、おらが丼って、何?
「おらが」とは、鴨川の方言で『我が家』という意味。我が家・我が店の自慢のどんぶりをご賞味あれ、という由来なんだそう。そのため、おらが丼はお店によって出てくるメニューが全然違う! これは楽しみです。
「おらが丼」のオキテは、食の基本を指し示す
おらが丼、基本的なルールはあらかじめ決まっています。
1.素材は、鴨川のブランド米「長狭米」をはじめとした新鮮な地元の海の幸、山の幸を主体とすること。
2.季節感を失わないこと。
3.健康を意識した商品づくりを忘れないこと。
4.入荷がなければ、その日は欠品であっても致し方なし、下手な小細工は禁物。
(参考:千葉県鴨川市ホームページより)
ほう、シンプルながらなかなかイイこと書いてある。
天然素材の逸品を用いた地物の料理が、いつの季節でも一定の量で常に出せる状態って、本来ヘンだもの。そこをしっかり明記してある点、とっても好感が持てます。もともと新鮮な海産物や農作物が至近で豊富に獲れる房総の場合、基本的な素材の良さがベースにあるワケで、尚のこと期待が高まりますね。まさに地産地消。あ、千葉の場合これを「千産千消」って言うんですよ。
このおらが丼、前出の鴨川市ホームページによれば市内53店舗のお店が賛同。海鮮モノを扱う磯料理・寿司店はもちろんのこと、居酒屋、旅館・ホテル、観光施設のレストラン、街の中華料理店までが、それぞれ自慢のオリジナル丼メニューを開発しているのです。
3種の食べ方が楽しめるミラクルなお味、その名も「三楽流丼(みらくるどん)」!
鴨川市商工会食文化研究会のWebサイト(かもがわナビ)を観てみると、旬の地魚を用いた海鮮丼の類にはじまり、アワビ丼、サザエ丼に伊勢エビ丼(伊勢エビって、伊勢がある三重県より我ら千葉県のほうが出荷数が多くて、日本一のシェアを誇ってるって知ってました?)、さらには地鶏の鶏ネギ丼に地元産のお肉を用いた牛丼・カツ丼まで、ふむふむなるほど、それぞれのお店が自由に創造しているのが分かります。
さて、前置きが長くなりました。今回わたくしが「おらが丼」を食べに訪れたのは、鴨川から少し上った天津小湊(あまつこみなと)の漁港近くにある、お寿司屋さんと民宿を営む「中乃見家(なかのみや)」さん。
都内での修行の後、奥様の実家がある天津小湊でこのお店を開業。以来25年に渡り地元で営業を続けるご主人の上村 恵司サンは、とってもお茶目でアイデアマンなんです。今回ご紹介するおらが丼は、房総の漁師料理「なめろう」をどんぶりにした、その名も「三楽流丼」(単品1600円/スペシャルセット付きで2800円)。三楽流丼と書いて『みらくるどん』と読ませます。
なめろうは、アジを始めとするその時の旬な地魚の刺身と、味噌やしょうが、ネギ、大葉などと混ぜ、丁寧に叩いた房総独自の料理。あまりの旨さに、皿までなめてしまうほどだ!・・・というのがその由来らしいです。
上村さんいわく、舌の肥えた天津小湊の漁師サンたちは、地物の鯛やヒラメを出してもちっとも喜ばないけれど、ウチのなめろうだけはお金を出して食べに来てくれる・・・そうおっしゃっていました。なるほど自慢の逸品らしいです。
出てきた三楽流丼には、なめろうが三山、たっぷりと盛られていました。これを3種類の食べ方で味わって欲しいというのが中乃見家流の食べ方。さあ、さっそく頂いてみましょう。
味噌味がキツ過ぎない、丼に最適チューンされたなめろうに驚く
まずはそのまま。ここのなめろう、味噌の味が強くなくって、新鮮なお刺身の味が前面に出てる!こりゃあ旨い。ホント、今日水揚げされたばかりのピチピチ、ってのが分かります。その分、人によっては少し薄味に思えるくらいかもしれません。そんなときには醤油をたらり、でグッとシマりますよ。
僕の中でなめろうというと、もっと味噌の味が濃いぃイメージ。酒飲みがチビチビと、それこそなめるようにツマむにはいいんだろうけど、丼にしたら濃過ぎてご飯3杯あっても足らないくらいになってしまいそうだから、まさにどんぶり向きに最適化されたチューニングといえましょう。
しかもスゴイのはココから。通常だとなめろうはアジがメインの料理で、ちょっとアジに、いや味にコクが足らない。ならば、と上村さんは考えた。脂ののった赤身なんかを加えることで、適度なこってり感をプラスし、味わいを深めたのです。この日は天然モノのブリとマグロをプラス。これがとても効いていて、従来味わったことのない新感覚のなめろうを体感出来るのです。
そのプラスがより良く分かるのが第二のなめろう「酢なめろう」。お酢をたっぷり浸して食べるのです。地元では結構こうやって食されるそう。で、中乃見家の酢なめろうの場合、外はさっぱりと、中は脂のしっとり感と二重のハーモニーが合わさって、こりゃあステキな複合ワザ。
シメの一品が、類稀なる「逸品」だった!
そして最後はなめろうをお茶漬けにした、その名も「まご茶」。漁師サンが船上で食して、あまりの旨さに(お、また出たこのフレーズ!)「孫にも食べさせたいぜ!」という由来なんだそうな。
尾張・名古屋のひつまぶしみたいね。最後はさっぱりと頂くのよね。と受け流したアナタ。はい、僕もそう思っていました。ところがまたここでアイデアを効かせてるのが中乃見家流。
ダシはダシでも、味噌仕立てのダシ汁なんです。隠し味には豆板醤を効かせ、ほんのりピリ辛。これが半なまのなめろうと実に良く合うんだなあ。うわあ、やられた。 故郷に帰ってきたかのような懐かしい味噌仕立ての汁。これで残ったなめろうとご飯をさらさらとかき込む。でもまだなめろうの充実した味わいも残しつつ、名残りを惜しみつつ。そうして壮大な料理のエンディングへと向かっていく、この充実感は一体なんなんだろう!
そう考えるとひつまぶしの場合は、何をどうやっても鰻+タレの味が強いから、最後はダシ汁でさっぱりと、と言いながらも、やっぱりどこか口の中がこってりしてて、ワサビのツーンで、ムリに清涼感を求めてたりしてたことに、ここ房総の地で改めて気付かされるワケです。これだから食べ歩きは止められないんだなあ。うん、満足満足・・・ごちそうさまでした。
◎地魚 寿司 民宿 中乃見家
住所:千葉県鴨川市天津3253-3 /電話:0470-94-0551/駐車場:有(無料)[普通車8台分]※お店から少し離れていて、大きな看板が目印/部屋・座席:20席(宴会~20名)/営業時間:昼11:30~14:00(夜の営業は予約制)/休業日:不定休/ホームページ[http://www.awa.or.jp/home/amakomis/nakanomiya/index.html]
[レポート:トクダ トオル(オートックワン編集部)]
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