アウディ R8 スパイダー 試乗レポート/小沢コージ(2/4)
- 筆者: 小沢 コージ
- カメラマン:オートックワン編集部
スパイダーは開けて乗れ!
と、いきなり厳しいトーンで入ってしまったが、クルマは文句無しに素晴らしい。というわけでまずはディテール解説から行こう。
サイズは全長4445×全幅1905×全高1245㎜で、全高こそ幌の関係で5㎜低まっているが、横幅もベースであるV10モデルより狭まり、V8モデルと共通になっている。それはスパイダーがリアのガラス製エンジンフードの代わりに、幌が収納できるCFRP超軽量の炭素繊維強化プラスチック製カバーを付け、リアドア後ろのサイドブレードを外して処理しているからで、一体感は増している。
そもそも全長がカローラ程度で、幅がレクサスLS以上。今回のオープン化により、さらなる「低さ」を獲得したのだ。特に幌を開けた時の儚げな存在感は極まった。
そうでなくともアウディ車はすべてデザイン的にワンテーマで貫かれている。ワイルドなシングルフレームグリルはもちろん、全体のシンプルかつ優美な曲線はまさにモダンアート。R8にしても「アウディTTの大型版」と言ってもいいほど似ており、この統一感はブランドの強さと同時に、ある種の理想主義も感じさせる。
そもそもR8は、ルマンで優勝したレーシングカーから取った名前なのだ。これが他のブランドだったらもっとレーシーで「戦うクルマ」のイメージを実車にも投影したと思うがそれはしない。しかし、それこそがアウディの必要以上のマニア化を防ぎ、大人のブランドたらしめている要因だと思うのだ。
インテリアもそれは同じで、ふんだんにアルミパーツを使い、いかにもミッドシップカーらしい開放感のあるT字型インパネや、質の高いアルミ風リムのタコメーターやスピードメーターで美しさを演出。だが、エアコン操作パネルにせよ、一部はアウディTTと似たデザインコンセプトで、共通のフィロソフィーを強く感じさせる。
一方、意外だったのは、オープンルーフにあえて布幌を採用していることだ。もちろん構造はハイテクで、耐候性、遮音製はメタルトップ並みだし、19秒でワンタッチ開閉し、時速50㎞以下ならば走行中でも使えるが見た目はクラシカル。
だがこれまた独特の美意識であり、「スパイダーは開けて乗れ!」というメッセージかもしれない。実際、スタイリングは閉めた時より開けた時の方が断然カッコよく、そこにアウディのキモチが現れている気がする。
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