50年前に造られたボンネットバスが現役運行! 岩手の路線バスで今も大事に使われている理由とは

  • 筆者: 山本 シンヤ
  • カメラマン:小林岳夫 取材協力:岩手県北バス 八幡平営業所

高度成長期、バスはボンネット型からリアエンジン型へ

公共機関の一つである「バス」。かつて日本では一般的なクルマと同じくフロントにエンジンを搭載した「ボンネットバス」が主流だったが、高度成長期を境に箱型のデザインかつリアにエンジンを搭載した「リアエンジンバス」へと置き換えられていった。

全長のほとんどを客室スペースに使えるリアエンジンバスに対し、ボンネットの長さ分だけ客室スペースが短くなってしまうボンネットバスは、「輸送効率」と言う観点では不利なのも事実であり、置き換えは当然だったのだろう。

機能優先(!?)の四角いリアエンジンバスが普及するいっぽう、現在残っているのは、個性的で愛くるしい懐かしのデザインを活かし、観光用として週末などにイベント運行されるケースがほとんどだ。

しかし「冬季のみ」と言う条件付きながら、令和となる現在も通常の路線バスとして運行を行なうボンネットバスがある。

それが今回紹介する岩手県北自動車(岩手県北バス)の「いすゞTSD40改」だ。今回、ボルボ恒例となる北海道~東京の超ロングツーリングの途中で、なぜかこのために合流したT編集長と共に取材を行なってきた。

激レア! 特殊な全輪駆動式ボンネットバスは、いすゞ製トラックシャシーに架装

岩手県北バス所有のボンネットバスは、日本でも数少ない「全輪駆動」である。

実はこれ、いすゞが不整地走行に適したトラックとして開発した「全輪駆動トラックTS/TW」のシャシーを基にしたTSD40改にバスボディを架装したもの。トラックベースの名残りは、高めの最低地上高とフロントに装着された機械式ウインチからも解るだろう。

エンジンは6126ccで120psを発揮する6気筒直噴ディーゼル「DA120」に4速MTの組み合わせだ。通常運行に支障がでないように整備も念入りに行なわれており、電気系統などはオリジナルにこだわらず、現代のパーツを上手に流用しているそうだ。

ボンネットのバス車体はいすゞバス製造の前身となる川崎航空機工業 岐阜工場製だ。真四角で機能優先と言ったデザインの最新のバスと比べると、丸みを帯びた車体デザイン/窓の形状などは、どことなく人間的に温かみがあるように感じる。

所々に錆や補修の後も見られるが、過剰な手入れを行なっていない点も現役の証と言ってもいいのかも!?

昭和のままそこにある、懐かしいバス車内

高いステップを登って室内に入ると、木製の床に小ぶりなブルーのビニールレザーシート(座席は24人、立席16人の40人乗り)。上部の網棚や右折/左折/急停車を伝えるサインなどそこはまさに昭和(笑)。

ちなみにドア後ろの小さなスペースの意味が解る人はシニア世代……実はこれ、車掌用のスペースである。余談ながら、現在の路線バスに「ワンマン」と書いてあるのは、その昔運転士と車掌の2名で乗務する「ツーマン」路線バスがあった頃の名残りだ。

運転席は非常にシンプルだが、タコグラフや案内放送用の機器、更にはデジタルの運賃表示機、更にはドライブレコーダーなどアナログとデジタルが混在、これも現役である証拠だろう。

ちなみにシフトレバー以外に3つのレバー(右から四駆の切り替え/副変速器/機械式ウインチ)、シフトレバー先にはデコンプレバー(昔のディーゼルはイグニッションキーを切ってもエンジンが回り続けてしまうので、圧縮を抜くことで燃焼を止めてエンジンを停止させる機能)の姿も……。

ちなみに製造年は1968年(昭和43年)で、ナンバーは「岩2」と当時のまま。

つまり、50年以上を1オーナーで昭和→平成→令和を走り続けてきたと言うことになる。新車の頃からずっと岩手県北バスに所属していたようだ。

50年以上前のバスを今も大事に使い続けている理由とは

なぜこの全輪駆動のボンネットバスが、今も現役で走っているのか?

それはこのバスでなければダメな理由があるからだ。

ボンネットバスは、岩手県北バスの運行路線の一つ「盛岡バスセンター~松川温泉」の一部区間「八幡平マウンテンホテル~松川温泉」間で、冬季のみ運行を行なっている。

松川温泉は十和田八幡平国立公園の南東に位置し、開湯から約280年の歴史を持つ秘湯だが、ここに向かう一本道……八幡平マウンテンホテル~松川温泉間の道は道幅が狭い上に急勾配&急カーブが続く難所で積雪も多く、普通のバスでは安定した運行が難しい。

そこで全輪駆動のボンネットバス いすゞTSD40改の出番……と言うわけだ。

現在、全輪駆動のバスはどのメーカーからも発売されていないため、コイツを大事に使うしかないのだ。

実際にボンネットバスへ乗ってみた

せっかくなので、実際の運行区間にも乗ってみた。

運転手さんは「誰でも運転できますよ!!」と簡単に言うが、間近で見ていると、思わず「ご苦労様」と言いたくなってしまうくらいの大仕事である。

ステアリングは直進時も常に修正舵が必要なくらいアソビが多いし、カーブでは重ステかつロックtoロックが大きいので、操作はとにかく忙しい。

エンジンはさすがに苦しそうで、車内放送や運転手のアナウンスほとんど聞こえないくらいの音と、それに比例して増える座席への振動、そして路面からダイレクトに響くショックがあるが、それが不思議と不快に感じることはなく、むしろ「がんばれ!!」と応援したくなる。

ギア比の関係で2速だと吹け切り、3速だと失速してしまう状況のようだが、運転手さんの巧みなダブルクラッチによるシフト操作に思わず「お見事!!」と。

僅か30分の乗車ながら、その間の時の流れはもっとゆっくりに感じた。

今は何かと時間に追われる世の中だが、「ゆっくりと着実に」とバスに教えられたような気がした。そう、何かホッコリした気持ちになれる……。

ちょっとやそっとじゃへこたれない! 昭和の機械(マシン)は屈強だった

余談だが、松川温泉の到着し折り返しの出発の間にエンジンを見せてもらうと、運転手さんが「あれ、燃料ポンプからのパイプが1本折れている、どうりでパワーがなかったわけだ」と衝撃の告白。

と言いながらも走れないわけではないので、復路は5気筒で運行(驚)。この辺りは、最新のモデルと違い構造がシンプルなので、何とかなってしまうのだ。

ちなみに岩手県北バスのボンネットバスは例年3月いっぱいで運行を終了し、来シーズンの冬季まで休息に入る(夏場も、イベントや貸切用途などに稼働するときもあるようだ)。

シニア世代には若い時の懐かしさ、若い世代には古き良き昭和が体験できるボンネットバス。是非体験して欲しい一台である。

個人的にはこれに乗るためだけでも岩手・八幡平に行く価値があると思っている。

[筆者:山本シンヤ/撮影:小林岳夫/取材協力:岩手県北バス 八幡平営業所]

【動画】「昭和、平成、令和」を走る現役ボンネットバスに乗る

■岩手県北バス いすゞ ボンネットバス 諸元

年式:昭和43年(1968年)製/シャシー:TSD40改・前置きエンジン・全輪駆動/車体:川崎航空機工業製/登録ナンバー:岩2 く61-11/所属:岩手県北バス 八幡平営業所

>> 岩手県北バス 公式サイト

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山本 シンヤ
筆者山本 シンヤ

自動車メーカー商品企画、チューニングメーカー開発を経て、自動車雑誌の世界に転職。2013年に独立し。「造り手」と「使い手」の両方の気持ちを“解りやすく上手”に伝えることをモットーに「自動車研究家」を名乗って活動をしている。西部警察は子供時代にリアルでTV放送を見て以来大ファンに。現在も暇があれば再放送を入念にチェックしており、当時の番組事情の分析も行なう。プラモデルやミニカー、資料の収集はもちろん、すでにコンプリートBOXも入手済み。現在は木暮課長が着るような派手な裏地のスーツとベストの購入を検討中。記事一覧を見る

監修トクダ トオル (MOTA編集長)

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