トヨタ 新型スープラはこうやって復活した!│開発者インタビュー(1/3)

  • 筆者: 山田 弘樹
  • カメラマン:茂呂 幸正・和田 清志

我々も彼らから学ぶことは多かったが、彼らにも新たな発見が沢山あった

トヨタ スープラの最上級モデルである「RZ」を目の前にしたとき、チーフデザイナーである中村暢夫氏は「最初BMW側からは、我々のデザインに対して『このままだと冷却性能が足りないはずだ』と言われたんです」と教えて下さった。

3リッター直列6気筒ターボから発するパワーは340PS/5000rpm、最大トルクは500Nm/1600~4500rpm。ちなみにこれは、兄弟車であるZ4 M40iと全く同じ出力値である。

なるほど、これは面白い……と思った。つまりBMWは、あの巨大なキドニーグリルありきでエンジンを開発しているわけだ。年々巨大化して行く鼻の穴は、確かに空力性能を追いかけるために時折塞ぐようにもなってきたが、ターボエンジンが高性能化している証でもあったのである。

しかしトヨタは、TMG(Toyota Motorsport GmbH:トヨタ・モータースポーツ有限会社)などの手を借りて、独自にスープラの空力性能や冷却性能を煮詰めた。その成果としてフロントグリルは、むしろ開口部をフラップで狭めるほどになった。そうした方が吸入空気にタービュランス(渦)が起こり、ひっぱり効果が生まれるのだという。また若干のフロントリフト抑制にもつながったという。

ちなみに「SZーR」と「SZ」は、さらにフロント周りの開口部が小さい。つまりメッシュ部分のダミーが多くなっている。

これは当然ながら搭載される2リッター直列4気筒ターボの発する熱量が3リッターよりも少ないからであり、空力的に抵抗となる部分を塞い結果なのである。

「これにはBMWも驚いていました。我々も彼らから学ぶことは多かったですが、彼らにも新たな発見が沢山あったと思いますよ」

そう中村氏は教えて下さった。

というわけでここでは、チーフエンジニアである多田哲哉氏と、チーフデザイナーである中村 暢夫氏から聞いた話を元に、新型スープラをさらに掘り下げて行こうと思う。

>>様々な想いを乗せ復活した新型スープラを画像で見る

ダミーのエアスクープは“わかるヤツだけ開けて使えばいい”

中村氏との会話でさらに興味深かったのは、エアスクープの話である。

スープラはそのフロントフェンダー(というよりもボンネットか)と、リアフェンダーに、ダミーのエアスクープを付けている。しかしこれは単なるダミーではなく、今後の発展性を求めた“本物のダミー”だったのだ。

具体的に言うと前後フェンダーの開口部は、タイヤハウス内の空気を引き抜くことに活用できる。袋状のタイヤハウスから空気を抜けば車体のリフトは減る。ブレーキの冷却にも当然役立つだろう。

しかしこれを必要としない人々(一般ユーザー)のことも考えて、市販状態のスープラはこれを塞いでいる。

トヨタくらいの大メーカーになるとたとえスポーツカーでも乗り手の理解は様々。走行後フェンダーに付いた泥や汚れを見て残念に思う人もいる。だったら「わかるヤツだけ開けて使えばいい」というメッセージが、このダミースクープには込められているというわけなのだ。

ニュル24時間耐久レースを走ったスープラの写真を見る機会があれば、それを確かめてみて欲しい。きっとそこには、このエアスクープが機能しているはずである。

中村氏によれば開発段階からスープラは、活躍の場にレーシングフィールドを想定しており、いざその段階で特別なモデルを出すよりは、こうした工夫を最初からしておく方がコスト的にも賢い選択だったという。つまりスープラは、本当に「走るために生まれた」スポーツカーなのである。

>>開発当初、スープラにあまり空力要件を盛り込みすぎないようにしていた[次ページへ続く]

トヨタ/スープラ
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新車価格:
499.5万円789万円
中古価格:
149.8万円1,903.9万円
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山田 弘樹
筆者山田 弘樹

自動車雑誌編集者としてキャリアをスタート。輸入車雑誌 副編集長、アルファ・ロメオ専門誌編集長等を経て、フリーランスのモータージャーナリストに。レース参戦なども積極的に行い、走りに対する評価に定評がある。AJAJ会員。カーオブザイヤー選考委員。記事一覧を見る

樺田 卓也 (MOTA編集長)
監修者樺田 卓也 (MOTA編集長)

自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。

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