トヨタ 新型スープラはこうやって復活した!│開発者インタビュー(3/3)
- 筆者: 山田 弘樹
- カメラマン:茂呂 幸正・和田 清志
今後の発展性次第では「M」シリーズのアップライトや足回りが流用可能
さらにスープラには、個人的な疑問もいくつかあったので、多田チーフエンジニアにこれを突っ込んで深掘りしてみた。
まずはそのひとつは、なぜフロントサスペンション形式がマクファーソンストラットなのか? ということだった。
これは当然、スープラがBMWのリソースを使うからに他ならないわけだが、ではなぜ彼らBMWが、長年ストラットを使い続けるのか?
「それは(コスト以外に)、重量的な理由が大きいようです」
フロントのアーム形状をダブルウィッシュボーンにすることで、横力に対する支持剛性は確かに上がる。しかし、多田氏も長年の経験から「アームが増えるだけで(バネ下重量において)かなりの重さが増える」ことを認めている。
BMWはもちろん、スープラがこだわったフロントとリアの50:50という重量配分を達成する意味でも、ストラット形式のサスペンションは有効だった。なおかつアーム類はアルミ製にするなど、軽量化が図られているのだという。
確かに近代的な大径タイヤを履かせた場合、ハブからは極太のアームがアッパーアームへと伸びてジョイントする「ハイマウントダブルウィッシュボーン」形式や、マルチジョイント式のアームが採用されることが多い。
対してストラットでも十分なフロントタイヤの応答性が出せるのであれば、それでいいというのも頷ける。
ちなみにリアのサスペンションアームは、空力を考えウイング形状になっているという。
さらに多田氏は付け加えた。「スープラがBMWと同じストラット形式を採用したのは、今後の発展性を見通しているからです。つまりそこには、「M」シリーズ(やGTS)のアップライトや足回りが、流用可能となるわけです」
なるほど! もはやこれ、クルマ好きの発想である。
そこで筆者が
「だとしたら、S55ユニットの搭載も可能になりますよね?」
と間髪入れずに質問すると
「ぎくぅ!」
と茶化しながらも、否定はされなかった。
ちなみにS55ユニットは現行M4を始めとしたBMW Mシリーズに搭載されるエンジンである。その最強の座はX3/X4 Mコンペティションに搭載された「S58」ユニット(最高出力510PS/最大トルク600Nm)に譲ったが、ともかくこうしたMユニットの搭載を、スープラは視野に入れていることになる。
となると気になるのは、トランスミッションだ。
ちなみにスープラは、MTをラインナップしない。これはその速さに対して「ハンドリングに集中して」スープラの潜在能力を引き出して欲しい、という願いがあるという。またもちろん、MTの販売数の少なさを予想した結果なのだと思う。われわれクルマ好きはとかく「MTがない」ことに文句を付けるけれど、実際にMTは、驚くほど売れない。
だが本家BMWがM仕様にはDCT(デュアル・クラッチ・トランスミッション)を使うのだから、せめてスープラにもこれを使ったらどうなのか? 本家もZ4は8速ATだが、Mが出たらきっとDCTを搭載してくるのでは?
この問いに対しても多田氏は、明確な応えを持っていた。
「DCTで一番気になるのは耐久性です。これまでDCTを主流としてきたメーカーも、そのコストや耐久性問題には頭を悩ませていると聞きます。
また現代のトルクコンバーター式ATは、DCTにひけを取らないくらいのレスポンスが実現できています」
つまり今後の発展性をも考えると、トヨタはトルクコンバーター式で、スポーツATを実現して行くことがベストだと考えているわけである。
実際レクサスIS Fのクラブレーシングである「CCS-R」も、そのトランスミッションはトルコン式ATだった。423PSのパワーを受け止め、しっかりとスリックタイヤに駆動力を伝えた走りから考えても、耐久性の高さには頷ける。
レクサスRC FやLCにしても、変速スピードやプログラミングの精度にはまだ課題が残るけれど、街中での扱いは変速ショックなども含め、DCTよりスムーズである。今後スポーツ性能面にさらなる改良がほどこされたら、確かにDCTいらずと言えるところまで来るのかもしれない。
ともかく重量的にも重たくなり、かつコストも掛かり、二つのクラッチを持つ構造ゆえの耐久性や熱管理の難しさが、トヨタにDCTを選ばせない理由だったようだ。
スープラ復活に他社も奮起したらとても素晴らしい
スープラというスポーツカーは、BMWとの協業によって生み出された。
多田チーフエンジニアも語る通りその要は、新規に作った専用プラットフォームであり、これはBMWにとっても新たなチャレンジだった。
そしてこうしたウルトラCを可能としたのは、「トヨタ86」でトヨタがスバルと提携した経験が活きていると思う。生産コストを抑え、その余力を走りの楽しさへと注ぐ協業マシンメイクは、今後他社でもさらに増えて行くかもしれない。スープラの出来映えを見て各社の心あるエンジニアたちが、「もう一度スポーツカーを作ろう!」と奮起したら、とても素晴らしいことだと思う。
“スポーツカーを復活させる”という道を切り開いたパイオニアとして登場したことも、スープラというスポーツカーの意義であったと筆者は思う。
[筆者:山田 弘樹/撮影:茂呂 幸正・和田 清志]
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