トヨタ 新型ポルテ・新型スペイド 試乗レポート／渡辺陽一郎(2/3)

豊富なシートアレンジとリアシートの広さが新型ポルテ・スペイドのメリット

だが、ポルテ＆スペイドのメリットもある。

それはチャイルドシートを装着したリアシートの前側に広い空間ができることだ。筆者は、右折時に対向車から左サイドに側面衝突を受けた場合の危険を考えて、チャイルドシートを常に右側へ装着していた。

これだと運転席の後部になるから足元空間は広がらないが、畳んだ助手席の後部に中腰になって作業すれば、座らせるのは容易だ。雨に濡れた体を拭いたりするのも簡単。

中級と上級グレードのY／F／Gについては、リアシートの座面を左右独立して持ち上げることも可能だから、作業スペースがさらに広がる。

また、幼い子供と買い物をすると、親子共々かなり疲れる。クルマを発進させる前にちょっと休憩したいこともあるだろう。そんな時にもポルテ＆スペイドは便利。

畳んだ助手席の背面がテーブルになり、ジュースやビスケットなどを置ける。リアシートの左側にはドアが備わらないので、カップホルダーや小さな収納ボックスも付く。絵本を読んであげたりして、しばらくマッタリするのも良いだろう。

このポルテ＆スペイドの世界観を巧みに表現しているのが、左中央のピラー（柱）の内側に刻まれた床面からの高さを示す目盛りではないだろうか。

「柱のきずはおととしの～」というノリで、子供の身長の伸び具合が分かる。「ずいぶん背が伸びたねぇ」などと子供との話のタネにもなるだろう。

以上がポルテ＆スペイドのユニークな機能。

リアシートの座面を持ち上げれば、前述のようにスライドドアから自転車なども積める。

ただし、この時には自転車を固定せねばならない。

フックなどは特に用意されておらず、開発者は「自分でそろえてフロントシートのヘッドレストの支柱で結び、自転車を固定して欲しい」と言う。できればディーラーオプションで用意されるとありがたい。

また、スライドドアの開口部付近には、子供も握れる位置に乗降用のグリップが付いていると安全だ。

大人4名が乗っても快適な居住性は、さすが“プチバン”

居住性はどうか。

まずはフロントシートだが、グレードに応じてベンチシートとセパレートシートが設定される。子育て世代向けのクルマとしては、車内の移動性に優れたセパレートシートが良いだろう。Y以外のグレードは、すべてセパレートタイプになる。

座り心地は両タイプとも快適。座面の奥行が十分に確保され、ボリューム感も不足していない。バックレストは腰の部分が少し硬めで、肩の周辺もしっかりとサポートされる。

座った印象としては、ベンチタイプは座面の前端が少し硬く感じた。身長170cm程度の乗員が座ると快適だが、小柄なドライバーは膝の裏側を押された感覚になりやすい。購入時には座り心地に注意したい。

リアシートは足元の空間がかなり広い。

身長170cmの大人4名が乗車して、リアシートに座る同乗者の膝先には握りコブシ3つ少々の余裕がある。ゆったりと足を組めるほどだ。座面の奥行も長く、前側を少し持ち上げたからサポート性も良好。大人4名が乗車して、長距離を快適に移動できる。

取りまわし性は、全長が3995mm、全幅が1695mmのコンパクトなボディだから、基本的には運転がしやすい。

ただし、前述のように床を低く抑えたこともあり、コンパクトカーとしては着座位置に対してサイドウィンドウの下端やインパネの位置が少し高く感じる。

水平基調のデザインだから四隅の位置は分かりやすいが、小柄なドライバーは前方や側方の視界に注意したい。それでもフロントピラー（柱）の形状が工夫されていて、斜め前方は見やすい部類に入る。