スズキ 新型スイフト ”フル”ハイブリッド試乗レポート|2種類のハイブリッドが併売される理由(3/3)
- 筆者: 渡辺 陽一郎
- カメラマン:島村栄二
スイフト マイルドハイブリッドとフルハイブリッド、損得勘定で冷静に比較してみる
ただし、新型スイフトのフルハイブリッドは、魅力が分かりにくい。JC08モード燃費は前述のように32km/Lだから、アクアSの34.4km/L、ノートe-POWER・Xの34km/Lと比べてさほど見劣りしない。しかしスイフトは27.4km/Lのマイルドハイブリッドも設定するから、ユーザーとしては選びにくい面がある。
またマイルドハイブリッドのCVTと、フルハイブリッドの5速AGSを乗り比べると、単純に扱いやすいのはCVTだ。5速AGSはスムーズだと言っても少しクセが強い。
そこで損得勘定の観点からも、新型スイフトの2つのハイブリッド、マイルドハイブリッド/フルハイブリッドを比べたい。
スイフトハイブリッド SLの装備は、マイルドタイプのハイブリッド ML セーフティパッケージ装着車とほぼ同じだ(ハイブリッドSLにはPTCヒーターなどが備わる)。
価格はハイブリッド SLが22万7880円高いが、エコカー減税の違いで(ハイブリッド SLは免税/ハイブリッド ML セーフティパッケージ装着車は減税)、19万4580円に縮まる。
一方、レギュラーガソリンの価格を1リッター当たり130円、実用燃費をJC08モードの85%で計算すると、1km当たりの走行コストはハイブリッド SLが4.8円、ハイブリッド ML セーフティパッケージ装着車は5.6円だ。
そうなると19万4580円の実質差額を燃料代の違いで取り戻すには、約23万kmの走行を要する。マイルドハイブリッドの燃費も優れているから、フルハイブリッドは割高感が生じる。
しかしスイフト フルハイブリッドの魅力は損得勘定だけにあらず
それでは、その価格差を置いてもスイフトのフルハイブリッドを選ぶ理由とは何か。ひとつには、モーター駆動の支援、5速AGSの操作感覚などがクルマ好きに受ける特長となるだろう。CVTのマイルドハイブリッドと乗り比べて「これは楽しい、面白い」となれば、フルハイブリッドの選択理由になる。
しかしそうなると、グレード展開としてスポーティなRSははずせない。スイフトは全体的に雰囲気が地味だから、ユーザーが得られる魅力を分かりやすく表現すべきだ。フルハイブリッドのスポーティな感覚とRSのコンセプトは親和性が高いし、ユーザーにとっても魅力が伝わりやすいだろう。ぜひフルハイブリッド版スイフトRSの追加にも期待したい。
新型スイフトのハイブリッドSLには、単眼カメラと赤外線レーザーを使ったデュアルセンサーブレーキサポートが標準装着され、ミリ波レーダー方式のアダプティブクルーズコントロールも備わる。クルーズコントロールは主に高速道路で使われ、この時はエンジン回転数が下がるため、フルハイブリッドのモーター駆動が走りを滑らかにする。
このようにスイフトのフルハイブリッドは、燃費だけでなくスイフトの総合性能を高めてくれる付加価値が得られる。ユーザーがそこをどのように判断するかが選択の分かれ目になる。
[レポート:渡辺陽一郎/Photo:島村栄二]
スズキ 新型スイフト HYBRID SL[FF] スペック(主要諸元)
全長×全幅×全高:3840×1695×1500mm/ホイールベース:2450mm/車両重量:960kg/乗車定員:5名/駆動方式:前輪駆動(FF・2WD)/エンジン種類:直列4気筒 DOHC 16V ガソリンエンジン/総排気量:1,242cc/エンジン最高出力:91ps(67kW)/6000rpm/エンジン最大トルク:12.0kg-m(118Nm)/4400rpm/モーター種類:交流同期電動機/動力用主電池:リチウムイオン電池/モーター最高出力:13.6ps(10kW)/3185~8000rpm/モーター最大トルク:3.1kg-m(30Nm)/1000-3185rpm/トランスミッション:5速AGS(オートギアシフト)/燃料消費率:32.0km/L[JC08モード燃費]/メーカー希望小売価格:1,949,400円(消費税込)
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