「働き方を変えたくない」都民たちが東京オリンピック・パラリンピックのスムーズな道路交通を妨げる!?

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来たる2020年、いよいよ東京オリンピック・パラリンピックが開催される。すでに観戦チケットをゲットし、開幕が待ちきれないという人もいるだろうが、一方で東京で生活や仕事をしている人は、期間中の交通がどうなるのか不安に思っているはず。

オリンピックのマラソンと競歩は札幌開催になったほか、セーリングは神奈川県、サーフィンは千葉県など一部の競技は東京以外での開催になるものの、多くはやはり都内で行われる。道路や鉄道が混雑するのは誰もが予想するところだが、実際カギとなるのは、交通規制ではなく「気持ち」の問題だった…?

>>首都高入り口を封鎖! 予行演習中の首都高で見た、驚きの光景はこちら

目次[開く][閉じる]
  1. 東京都さん、大会中の道路はどうなるの?
  2. 大会1年前の大規模テストは、驚きの結果に
  3. ロンドンオリンピックでの成功には、4つのカギがあった!
  4. 会社に行くために会社に行く日本人
  5. まとめ:交通と働き方、そして生き方を問うオリンピック

東京都さん、大会中の道路はどうなるの?

首都高は交通量30%減で対応

東京オリンピック・パラリンピックにまつわる公式ウェブサイト「TOKYO 2020」には、大会中の交通マネジメントの説明がある。MOTAは自動車メディアなので道路交通に絞って紹介していくと、一般道路では大会前の交通量の10%減、重点取組地区と首都高速道路は30%減を目指すという。

ちなみに重点取組地区とは、競技会場が集中したり、通過交通が多く混雑したりという場所で、16地区が選ばれている。また首都高速は選手や大会関係者の移動ルートにも設定されている。

>>「TOKYO 2020」東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会(公式サイト)

大会1年前の大規模テストは、驚きの結果に

首都高は関係者の移動ルートにうってつけ

大都市の中心部に高速道路が走り回っているというのは、実はヨーロッパにはほとんどない。対して首都高には料金所があり、交差点がなく、さらに歩行者や自転車が通らないため、交通のコントロールがしやすいといえる。これは、大会関係者の移動ルートとしては理想的だろう。

さて、そんな首都高の交通量30%減を目指すために導入するのが、「TDM(トランスポーテーション・デマンド・マネジメント)」だ。日本では交通需要マネジメントと呼ぶのが一般的で、公共交通への転換、経路変更、時差通勤、テレワークなどによって交通行動を変えてもらい、道路交通の混雑を減らす取り組みのことをいう。

働き方は、変えたくない

2019年夏には、ちょうど1年後となる大会開催を想定して実験も行われた。

首都高速の一部の入口閉鎖や料金所ゲート制限、環状7号線内側の一般道の通行制限など本番さながらの大規模な規制が実施され、選手をはじめとするオリンピック・パラリンピック関係者の円滑な移動がテストされたのだ。

もちろん並行して、働き方を変えてもらうなどのお願いもした。しかし結果は約7%減と、30%にはほど遠い結果になった

ロンドンオリンピックでの成功には、4つのカギがあった!

8割が移動手段を変えた理由は、1日フリーきっぷ?

東京のような大都市でのオリンピック・パラリンピックというと、2012年のロンドンが思い浮かぶ。

インターネットで当時の報告を見ると、ロンドン中心部を移動する人の8割近くが移動の手段や経路などを変えたとのことで、道路交通量は朝のピーク時で15%以上減少したという。

では、なぜロンドンの交通マネジメントは成果を収めたのか。

それには、大まかに4つの理由が挙げられる。まず1つめは、ロンドン交通局が道路交通と公共交通の両方を管轄する組織であること。そして2つめは、観戦チケットに公共交通の1日フリーきっぷが付いており、とても便利だったこと。

規制でなく、気持ちによる対策

続く3つめ、4つめは、首都高速がない代わりに一般道に設定した専用レーンの存在などを多くの住民が理解したこと、そして、官公庁や大企業を中心に約150万人がテレワークに切り替えたという、開催地の地元住民の協力が挙げられる。

なるほど、しかしこれを東京で実行しようとしても、今から交通組織を変えるのは不可能だし、東京の公共交通は多くの事業者が関わっているので、全線乗り放題のフリーきっぷも簡単には作れない。

そうなると残りの2つ、つまり規制ではなく気持ちでの対策が大事になるのだが、夏のテストの結果を見ると、あまり期待できないかもしれない。

会社に行くために会社に行く日本人

曲げずに頑張るのは美徳?

自然災害のニュースを見るたびに思うのは、いつもの生活を変えられない、変えたくないという気持ちの人が目立つことだ。

「変えられない国ニッポン」はこれに限った話ではないけれど、大型台風が来ても避難しないで被害に遭ったり、公共交通の運転再開の数時間前から駅に殺到したり…。仕事があるから会社に行くというより、会社に行くこと自体が目的になってしまっている人が多いというのは、本当かもしれない。

このノリで大会本番を迎えたら、首都高速の閉鎖されている入り口に長い行列ができて、周辺の道路まで渋滞し、地域生活がマヒするのは目に見えている。

まとめ:交通と働き方、そして生き方を問うオリンピック

値上げによる締め出しでしのぐ行政

首都高速では東京オリンピック・パラリンピック期間中に、都内の日中の通行料金を1000円値上げすることを決定した。高すぎて使えないという声を見るけれど、これはむしろ使えない状況に持っていくことが狙いなんだと思う。

一般道は、ロンドン都心部のようなロードプライシング(有料道路)はないけれど、各所で規制が入る予定だ。

鉄道もいつもより混雑するだろう。できるだけ移動せずに生活するにはどうするか。

東京で暮らすひとりひとりが、このテーマを真剣に考える時期に来ている。

[筆者:森口 将之]

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森口 将之
筆者森口 将之

1962年東京都生まれ。モータージャーナリスト&モビリティジャーナリスト。自動車専門誌の編集部を経て1993年フリーに。各種雑誌、インターネット、ラジオなどのメディアで活動。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。グッドデザイン賞審査委員。記事一覧を見る

樺田 卓也 (MOTA編集長)
監修者樺田 卓也 (MOTA編集長)

自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。

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