4月から次世代車を買わないと大増税!? 改訂されるエコカー減税の実態(2/3)
- 筆者: 渡辺 陽一郎
『当分の間の税率』ってナニ? ワケの分からない制度の矛盾
またもうひとつ、重量税の算出方式にも注意したい。
エコカー減税に該当する車種は、購入時、購入後も継続的に「車両重量500kg当たり2500円」の本則税率が適用される。例えば車両重量1300kgの車両が購入時に納める税額は、「2500円×3(500kgごとの区分だから)×3年分=2万2500円」。この金額をベースに減税される。継続車検を受ける時に納める税額も「2500円×3×2年分=1万5000円」だ。
ところがエコカー減税対象外の車種は、計算式が2種類に分かれる。
従来のエコカー減税で見ると、平成27年度燃費基準達成車の場合、購入時のみ上記の「500kg当たり2500円」だ。3年分なら1300kgの車両で2万2500円が適用される。
それが初回車検から適用される2年分は「500kg当たり4100円」の「当分の間の税率(当分の間税率)」になってしまう。車両重量が1300kgなら「4100円×3×2年分=2万4600円」だ。エコカー減税車の1万5000円に比べて9600円多い。また購入時の3年分よりも、初回車検時の2年分の方が納める税額が増えてしまう。
平成27年度燃費基準非達成車は、購入時から500kg当たり4100円の「当分の間税率」で課税され、「4100円×3×3年分=3万6900円」を納めねばならない。
2017年5月以降は、上記の平成27年度燃費基準達成車が、平成27年度燃費基準プラス5%達成車に変更される。従って平成27年度燃費基準達成車は、購入時の3年分が従来の2万2500円から、3万6900円に増えてしまう。
この「当分の間税率」は、常識的にはワケの分からない制度だろう。もともと自動車取得税と同重量税は、道路建設を目的とした道路特定財源として創設された。500kg当たり2500円が本則税率であったが、道路財源が足りず、暫定税率(暫定的な税率)として500kg当たり6300円を徴収する時代が続いた。
この道路特定財源制度は2009年に廃止され、今では自動車取得税と同重量税は課税する法的な根拠を失っているが、一般財源化されて徴収が続いている。これだけでも矛盾しているのに、暫定税率まで「当分の間税率」という稚拙な名称に変更して、500kg当たり6300円を4100円に値下げしながら存続しているのだ。
このようにエコカー減税の損得は、購入時にとどまらない。減税ハズレの車種を購入すると、車検のたびに納める自動車重量税も64%多く納め続けることになる。
また自動車税のグリーン化特例も変更を受ける。従来は平成27年度燃費基準プラス20%以上であれば、購入の翌年度に納める自動車税が50%、平成32年度燃費基準プラス10%以上なら75%が減税される。
これが2017年4月からは、平成32年度燃費基準プラス10%以上が50%の減税、同基準プラス30%以上が75%の減税だ。エコカー減税と同様に、燃費数値が変わらなければ減税率が下がる。
2017年4月以降は、燃費数値が突出して優れたハイブリッド車を除くと、大半の車種で増税になる。特に注意を要するのは、最低レベルの減税を達成している平成27年度燃費基準プラス5%の車種だ。自動車取得税の20%、自動車重量税の25%減税が廃止され、初回車検時以降の自動車重量税が、500kg当たり2500円の本則税率から4100円の「当分の間税率」に引き上げられてしまう。
平成27年度燃費基準プラス5%に該当するのは、例えばトヨタ車ならC-HRの1.2リッターターボを搭載するG-TやS-T、オーリス150Xや150X・Sパッケージ(アイドリングストップ装着車はプラス10%)。日産であればスカイライン200GT-t、エルグランド250ハイウェイスタープレミアム(ただし、オプション装着し、車両重量が2000kgを超えるモデル)。ホンダはフィット15XL。スバルならインプレッサ1.6i-Lアイサイトや2.0i-Lアイサイトなどだ。
C-HRのG-Tであれば、自動車取得税の減税(1万3800円)、自動車重量税の減税(5700円)が廃止され、購入後に納める2年分の自動車重量税が従来の1万5000円から2万4600円に増額される。5年間で見ると3万8700円の増税だ。
エルグランド250ハイウェイスタープレミアムは、従来は自動車取得税が2万700円、自動車重量税が7500円の減税だが、この総額2万8200円の減税が行われない。さらに2年分の自動車重量税は、従来は2万円だが、2017年4月以降の購入では3万2800円に増える。5年間では5万3800円の増税だ。
今はほぼ全車が免税になるハイブリッドも、減税に変更される場合がある。例えばヴェゼルハイブリッドZホンダセンシング(2WD)は、平成32年度燃費基準プラス20%は達成しているから従来は免税だが、プラス30%は達成できない。従って2017年4月から、自動車取得税が60%の減税、5月からが同重量税が75%の減税にとどまってしまう。2万6600円の自動車取得税と、5600円の重量税が発生して、合計3万2200円の負担増加だ。
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