4月から次世代車を買わないと大増税!? 改訂されるエコカー減税の実態(3/3)
- 筆者: 渡辺 陽一郎
クルマの税金をシンプルに分かりやすい制度へすべき
このように税金が全般的に高まる一方、電気自動車/プラグインハイブリッド車/クリーンディーゼル車は次世代自動車とされ、2017年度、2018年度ともに現在の免税が維持される。車両重量や燃費(電費)性能を問わず一律に免税だ。
これはクリーンディーゼルの多い欧州車には有利に働く。例えばメルセデスベンツEクラスのE220dアバンギャルド(価格は698万円)であれば、自動車取得税の17万4400円、自動車重量税の3万円が減税され、自動車税も3万8800円が減税されるから、減税総額は24万3200円だ。このメリットは2017年4月以降も存続する。
それにしても従来から分かりにくかったエコカー減税が、ますます難解になってきた。課税根拠を失った自動車取得税と同重量税を存続させ、暫定税率まで「当分の間税率(当分の間税率)」として残し、さらに減税率を下げている。
また初度登録から13年以上を経過した車両では、自動車税と自動車重量税を増加する制度が今後も続く。
自動車税は「財産税」に位置付けられ、高額な車両を活用することでさらに多くの利益を得られることから課税対象にされた。この趣旨を考えると、製造から時間が経過して財産価値の下がった車両は、税額も減価償却と同じく段階的に安くするのが本来のあり方だ。古くなった車両の税額を高めるのは、ツジツマがまったく合わない。
自動車重量税は、重い車両ほど道路に与える損傷が大きいことから道路特定財源として設けられた。古い車両の重量が増えるわけではないから、これも矛盾している。
自動車取得税は、消費税が徴収される今では税金の二重取りだ。
増税の趣旨は環境負荷が大きいことを理由にするが、古い車両の廃棄、新しい車両の製造や流通でも環境に負荷を与えるから、「新型車を買えばエコ」という発想に基づいた増税は短絡的すぎる。
そして古いクルマを使う多くの人達は、ヒストリックカーが趣味ではなく、新車を購入できずに仕方なく使い続けている。ユーザーには高齢者も多く(軽自動車の普及した地域は、人口に占める高齢者比率も高い)、そこに重税を課すのは、福祉の観点ではもちろん、常識や道徳にも反しているだろう。
エコカー減税を難解にすることより、クルマの税金をシンプルに、誰にでも分かりやすい制度にすべきだ。2019年からは環境性能割が導入されるが、この実態はエコカー減税を適用した自動車取得税に準じた内容だ。
排出ガスと燃費性能試験の方法として、国際基準のWLTPを導入する予定もあるが、あくまでもJC08モード燃費に代わる測定方法にすぎず、自動車税制が抜本的に見直されるわけではない。
ユーザーの感覚に合うのは、車両価格(あるいは流通価格)が高く、燃料消費量や二酸化炭素を含めた排出ガスの多い車種ほど、税額が高まるシンプルな税体系だろう。少なくとも生活するために仕方なく、小さな古いクルマを使っている人達から、多額の税金を巻き上げる仕組みはやめるべきだ。
[Text:渡辺陽一郎]
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