シルビアや180の復活はないのか?日産が86やスープラに続かないワケ(2/2)
- 筆者: 桃田 健史
プレミアムスポーツカーがあるとシルビア的なクルマは生まれにくい
そのほかにも、シルビア復活の可能性が低い理由が幾つかある。
ひとつは、大手自動車メーカーは今後、モデルラインアップを縮小する動きが明確になっていく点だ。そのなかで、スポーツカーを2種類以上揃えることは難しい。ご時勢として、スポーツカーの販売数が大きく伸びるとは期待できないため、メーカーとしては少量でも利益率の高い高級スポーツカーを尊重する。それがホンダ NSXや、日産 GT-R、さらには量産化の噂が絶えないマツダ RX-9だ。
このなかで、マツダの場合、小型スポーツカーのロードスターはマツダのDNAであり、会社のシンボルのため作り続けることが必須という、特別な事情がある。そして、マツダ第七世代の終わりまでは、モデルラインアップが続くことも日系メーカーとしては珍しい動きであることを付け加えておく。
また、トヨタの場合、スープラ復活がほぼ確定と噂されるのは、トヨタらしい『各セグメントでの取りこぼしをなくす』という戦略の一環だ。
第二に、海外市場の日産の商品戦略だ。アメリカでは新型ローグが好調など、アメリカでのオーソドックスなセダンとSUVの路線をキープ。欧州では、小型SUVのキャッシュカイがロングセラー。中国でも若い世代を中心に、これまで常識的だったセダン需要がSUVやクロスオーバーに転移している。
こうしたなかで、シルビアが復活してもハマる余地が見当たらない。
単なる復活劇ではなく、まったく新しいクロスオーバーに期待
以上のように、日本及び世界各地の自動車産業の情勢や、他銘を含めた商品構成を鑑みると、“シルビア復活”の可能性は極めて低い。
仮に筆者がいま、日産の担当役員で、最終的な販売を下す立場にいたとするならば、『シルビア復活企画書』にGOの印は押さない。
それよりも、神奈川県厚木市と追浜市のNTC(日産テクニカルセンター)に対して、デザインと走行機能で革新的な要素を取り入れた、250~350万円程度のまったく新しいクロスオーバーの早期量産化を指示するだろう。
日産シルビアを愛する者としては、シルビアの思い出は心の中にそっと置いておきたいと思う。
[Text:桃田健史]
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