ダットサン「GO」「GO+」試乗・インドネシア 現地取材レポート/松下宏(3/3)

  • 筆者: 松下 宏
  • カメラマン:松下宏/日産自動車株式会社
ダットサン「GO」「GO+」試乗・インドネシア 現地取材レポート/松下宏
インドネシアのダットサン取り扱いディーラーに展示されている「ダットサン GO」 インドネシアのダットサン取り扱いディーラーに展示されている「ダットサン GO」 ダットサン GOとインドネシアを取材中の自動車評論家 松下宏氏 取材したダットサンを取り扱うディーラーにて 取材したダットサンを取り扱うディーラーにて ダットサン GO 試乗走行イメージ ダットサン GO 試乗走行イメージ 日産 グランドリヴィナ 試乗走行イメージ インドネシアの日産 第二工場 インドネシアの日産 第二工場 インドネシアの日産 第二工場 画像ギャラリーはこちら

徹底して現地化が進められた「インドネシア第二工場」

取材したダットサンを取り扱うディーラーにてインドネシアのダットサン取り扱いディーラーに展示されている「ダットサン GO」

今回の取材でGOを扱うダットサンのディーラーを取材したが、現在の時点ではGOとGO+の2車種しか取り扱いがないことから、ダットサン専売ディーラーではなく日産ブランドと併売する形でディーラーが展開されていた。建物内では日産ブースとダットサンブースは明確に分けて展示されていた。

日産はインドネシア政府のLCGC政策に対応して、インドネシアに第二工場を建設した。第二工場は第一工場に隣接した敷地に建設されたもので、16haの敷地に6haの建屋を建設し、GOとGO+専用ラインおよび、GO用のエンジン組み立てラインを設置している。

日産はタイでもエコカー政策に合致するマーチの生産をタイミング良く始めたが、インドネシアでも投資のタイミングを的確につかんでいる。タイでもインドネシアでもそれまでのしがらみが少ないことが、タイミングの良い投資につながったのだろう。

インドネシアの日産 第二工場インドネシアの日産 第二工場

見学したインドネシア第二工場には3,000人ほどの従業員が働いている。聞いて驚いたのは、3,000人のうち日本人はわずか10人だけで、ほとんどがインドネシア人によって運営されている。東南アジアにはさまざまな国にさまざまな自動車メーカーが進出していて、タイを中心にいくつかの工場を見学してきたが、ここまで徹底して現地化が進められた工場は珍しい。

新興国の工場らしく、ラインが自動化されている部分はほとんどない。今回見学したのは組み立てラインだけだが、溶接ラインも含めて基本的に人間の手でクルマが運ばれ、組み立てられている。部品容器の回収など、付加価値を生まない部分ではごく一部自動化されているが、自動化はきわめて限定的である。

新興国では人件費のコストが安いこと、また現地で一定の雇用が求められることなどから、自動化よりも人間の手で自動車の生産が進められることが多いが、その中でも日産のインドネシア第二工場は人間にたよる方針が徹底している。

将来的に人件費が高くなってきたときに、あるいは生産台数の増加が求められる状況になったときに自動化が進められるのだろう。

「GO」「GO+」を試乗!車重の軽さで動力性能に不満は無いが・・・

ダットサン GO 試乗走行イメージダットサン GO 試乗走行イメージ

インドネシア工場の検査用のテストコースを使って、ごく短時間ながらGO、GO+、それに従来から販売されている「グランドリヴィナ」の3車種に試乗した。

GOとGO+には1,200ccのHR12型エンジンが搭載されている。このクラスのクルマには1,000ccエンジンが搭載されることが多いが、排気量に余裕がある分だけそこそこ良く走る印象があった。

また、GOもGO+も日本の軽自動車並みにボディが軽い。それが動力性能に不足を感じることなく、良く走るイメージにつながっているのだろう。エンジンの動力性能は50kWで、際立ってパワフルというほどではなく、ごく平均的な実力ながら、車両重量はGO+で812kgと相当に軽いので、ボディに見合った動力性能という感じで良く走った。

動力性能には特に不満はないものの、足回りについては何とも仕上がり不足の印象があった。試乗の条件が限られていたので、いろいろな走りを試したわけではないのだが、乗り心地や操縦安定性には物足りなさを感じた。特にチープなタイヤが装着されていたことが操縦安定性や乗り心地に影響している。

ダットサンは新興国向けのエントリーモデルといえど「安全性」に疑問が

日産 グランドリヴィナ 試乗走行イメージ

同時に試乗したグランドリヴィナも中国などの新興国向けに開発されたクルマだが、こちらのほうがはるかにまともなクルマに仕上がっているように感じられた。

GOとGO+は本当にエントリーレベルのユーザー向けのクルマである。またGOやGO+には横滑り防止装置のVDCはおろかABSも装着されていない。この仕様では、日本ではクルマとして認められない存在である。

また軽自動車並みに軽く作られたボディでは、衝突安全性についても日本で販売されているクルマのようなワケにはいかないだろうことは容易に想像がつく。なので、インドネシアのようにこれからモータリゼーションが発展していこうとする新興国では一定の意義があるにしても、普遍的な存在意義を持つクルマかどうかは疑問に思った。

新興国ではクルマを持つことによって幸せになれると思うユーザーはたくさんいて、そうしたユーザーが初めて買うクルマとしてGOとGO+があるのだが、新興国のエントリーユーザーもすぐにこの仕様では満足できなくなるのではないか。そんな風にも思った。

ただ、逆の考えもある。最初にダットサンに乗り始めたユーザーは、その後もダットサンに乗り続ける可能性が高いことだ。今後はダットサンブランドにも新しいクルマが投入され、ダットサンブランドの中でユーザーが上級移行していくことが考えられる。あるいはダットサンブランドから日産ブランドへの移行も十分に考えられる話である。販売店が併設されていることで、違和感なく移行するユーザーも多いはずだ。

ブランドロイヤリティを定着させるのはそう簡単な話ではなく、販売するクルマの品質やアフターサービスなど、いろいろな要素が必要である。これから日産はインドネシア市場でそれにチャレンジしていくことになる。

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松下 宏
筆者松下 宏

自動車そのものはもとよりクルマに関連する経済的な話題に詳しい自動車評論家。新車、中古車を含めてユーザーサイドに立った的確な購入アドバイスを語ることで定評がある。記事一覧を見る

樺田 卓也 (MOTA編集長)
監修者樺田 卓也 (MOTA編集長)

自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。

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