池袋暴走事故で話題となった車の記録装置“EDR”で何がわかる!? クルマの自動化が進む中、搭載義務化は喫緊の課題だ

  • 筆者: 萩原 文博
  • カメラマン:BOSCH・TOYOTA・Honda・SUBARU・MOTA編集部
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2019年4月、東京・池袋で発生した乗用車による暴走死傷事故。2021年6月21日、事故車両の製造元であるトヨタ自動車は、被告が主張する車両側の異常に対し『異常や問題はなかった』と通信社などに声明を発表した。車両に搭載されていた記録装置、通称“EDR”(イベント・データ・レコーダー)の解析などからわかったという。国土交通省では、新車におけるEDR搭載の義務化も検討を行っている最中だ。

果たしてEDRはどのようなデータが取得出来て、何がわかるのか。そして普及に向けた課題などはあるのだろうか。モータージャーナリストの萩原 文博氏がレポートする。

目次[開く][閉じる]
  1. クルマに備わる“EDR”は、事故発生時の車両情報を克明に残す記録装置
  2. “EDR”のデータをメーカー以外の第三者が読むためには、専用のリーダー機器“CDR”が必要だった
  3. 自動車事故の原因が人為ミスか故障なのか!? 先進運転支援機能が普及する今だからこそ、要因解析ツールの義務化は急務だ

クルマに備わる“EDR”は、事故発生時の車両情報を克明に残す記録装置

ドライブレコーダーは映像と画像による記録、EDRはその時の車両データを克明に記録する

国土交通省は、EDR(イベント・データ・レコーダー)と呼ばれる運転記録装置を、2022年7月から販売する新車に搭載を義務化する検討に入った。EDRというのは、事故などでクルマに衝撃が入力される5秒前から事故発生からSRSエアバッグが展開完了するまでの状態を記録する装置を指す。

事故などの時に記録する装置というと、ドライブレコーダーを思う浮かべる人が多いと思うが、ドライブレコーダーは、映像および音声データを記録するもの。

一方EDRは、映像や音声ではなく、事故を起こしたときに、アクセルやブレーキの状態をはじめ、速度、エンジン回転数、そしてどのような角度から衝撃が入力したのかという情報が記録される。

EDRの解析にはデータを抜き出す装置と、高度な専門知識による解析が必要となる

このEDRの解析は、専門的な知識が必要なため、一般的には自動車メーカーが行うが、筆者が所属しているAJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)の菰田 潔(こもだきよし)会長をはじめ、11名のBOSCH(ボッシュ)認定CDR(クラッシュデータリトリーバル)の資格保持者がおり、EDRの記録を引き出すことが可能だ。

今回は自動車のサプライヤーメーカーである、BOSCH株式会社が行ったCDR/EDRの技術と活用についての勉強会で学んだことも交え、ご紹介する。

“EDR”のデータをメーカー以外の第三者が読むためには、専用のリーダー機器“CDR”が必要だった

BOSCHグループは、1886年に創設され1911年(明治44年)から日本で事業展開を開始した自動車のサプライヤーメーカーだ。現在、ボッシュ・グループはモビリティソリューションズをはじめ、産業機器テクノロジー、エネルギー・ビルディングテクノロジー、消費財)という4つの事情領域において、強固な基盤を築き上げてニーズに応じたサービスや製品を提供している。

BOSCHグループと自動車産業の関わりは非常に深く、自動車のABS(アンチロックブレーキシステム)を1978年に開発したのをはじめ、今後の自動運転化、電動化に向けて事業拡大を進めている。

“EDR”は飛行機における“ブラックボックス”(フライトレコーダー)の役割を果たす

まず、あまり聞き慣れないCDRとEDRについて紹介しよう。EDRはイベント・データ・レコーダーというもので、エアバックECUなどにもう20年以上前から装備されている装置だ。

よく航空機事故の際に原因解明のため、ボイスレコーダーとフライトレコーダー(別名アクシデントデータレコーダー)の入ったブラックボックスが回収される。EDRの機能は、この航空機のフライトレコーダーと同じ機能があると思えばわかりやすいだろう。

交通事故など一定条件を超えた衝撃がクルマに入力されると、事故発生の5秒からのプレクラッシュデータ、そして事故発生から展開完了までの状態となるポストクラッシュデータがEDRへ記録されるという訳だ。

事故の際の多面的な情報が記録されるEDRと、そのデータを読み出すCDR(クラッシュデータリトリーバル)

このプレクラッシュデータには車両速度やアクセル操作、エンジン回転数、ブレーキペダル、クルーズコントロールの作動など様々なデータが記録され、衝撃の原因となった事故が起きた際、自動車がどのような状況だったのかが記録されている。

また、ポストクラッシュデータは前後衝突なのか、側面衝突なのか、横転なのかが記録されたもの。これら、EDRに記録されたプレクラッシュデータやポストクラッシュデータを読み出し、第三者にリポート化する機器が、BOSCHのCDR(クラッシュデータリトリーバル)である。

自動車事故の原因が人為ミスか故障なのか!? 先進運転支援機能が普及する今だからこそ、要因解析ツールの義務化は急務だ

米国では2017年時点で既にEDRが新車の99.3%に装着

このCDRは、すでに2000年からアメリカでスタートしている。当初はゼネラルモータースの一部門だったが、2003年からボッシュが加盟した。

そして2017年度の米国における新車販売台数の99.3%がEDRを搭載。そのうちボッシュのCDRに対応しているメーカーが約86.9%と高い割合を占めている。その後2019年よりスバルや三菱も追加され、90%以上が対応するようになった。

米国ではこれだけ普及しているにも関わらず、日本ではまだ未対応となっていることは驚きを隠せない。

EDRとCDRによって、自動車事故の原因追究がもっと科学的に行われる

池袋の重大事故に限らず、ペダルの踏み間違いによる事故や、煽り運転による交通事故が毎日のようにニュースとなっている。その対策としてドライブレコーダーが注目を集めているが、ドライブレコーダーでは踏み間違いや衝突軽減ブレーキの動作状況はわからない。

ドライブレコーダーに加えて、EDRデータの解析を行うことで、原因がクルマの故障なのか人の操作ミスなのかが明確にわかるようになる。

これから自動化、電動化が進むクルマにおいて、事故の原因が人間なのかそれともシステムなのかなどの判断が必要となるケースがますます増えると予想される。現在よりさらに多くのデータを記録し、そのデータ解析に関する法整備を早急に行う必要があるといえるだろう。

[筆者:萩原 文博]

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樺田 卓也 (MOTA編集長)
監修者樺田 卓也 (MOTA編集長)

自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。

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