【燃費レポート】なぜ今更?レクサスLS460の実燃費を徹底検証

【燃費レポート】なぜ今更?レクサスLS460の実燃費を徹底検証
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レクサスLS460 F SPORTの実燃費は6.4km/L|実燃費レポート結果まとめ

レクサスLS460 F SPORTにおける実燃費テストは、2017年4月27日から5月11日までの14日間で、一般道をおよそ600km、高速道路を400kmの合計1000kmほど走行した。

当然のことながら、燃費を意識して走らせたわけではなく、普通に流れに乗って走った結果であることを踏まえると、かなり優秀な結果だ。カタログ燃費(JC08モード)に対して、7割程度の達成率が平均なので、一般道で76%、高速に至っては136%と大幅に上回ったのは驚くばかりだ。

レクサスLS460 F SPORTにおける実燃費テスト結果
走行シチュエーション実燃費
JC08モード燃費8.4km/L
一般道6.4km/L
高速道11.4km/L

なぜ今更レクサスLSのテストをするのかと、大いに疑問を持たれる方も多いかもしれない。そこでまずはその理由から。

レクサスのフラッグシップサルーンであるLSは、2017年1月のデトロイトモーターショーで次期型がお披露目された。そのポイントはいくつもあるが、大きくドライバーズカーにシフトした事も変化と捉えていいだろう。そこで、その布石ともいえる現行LS460 F SPORTをテストすることで、次期型がどれだけドライバーズカーとして進化したのかを、日本発売時に正確に把握したかった事。

そしてもう一つは、現行がモデル末期である事。つまり最も完成度が高いモデルと考えられる事から、改めてレクサスのフラッグシップをテストしておこうという大きく2点からテストを実施した。また、今の時代では珍しくなった、ターボなど装着されていないV型8気筒4.6リッターエンジンがどの程度の燃費を記録するのかにも、興味が惹かれる所である。

レクサスLS460 “F SPORT”とは?

レクサスLSに“F SPORT”が追加されたのは2012年のマイナーチェンジの時点で、「ドライバーズカーとしてのキャラクター強化を図る狙いもあり、従来型のVersion SZを発展させる形で“F SPORT”を設定した」(広報談)。

走りの面において強化されたポイントは、ローダウン・エアサスペンションを採用することで車高を10mmダウン。同時に、トルセンLSDやbrembo製対向6ポットキャリパー・スパイラルフィン式フロントベンチレーテッドディスクブレーキ(高摩擦ブレーキパッド付)を装備。更に、高剛性のリアサスペンション・ブレースを組み込むことで、走る、曲がる、止まるというクルマの基本性能の向上が図られた。

エンジンは他の460と変わらず、V型8気筒4.6リッターエンジンを搭載。最高出力392ps、最大トルク500Nmを発揮し、8速ATとともに1990kgのボディを引っ張り上げる実力を持つ。

アイドリングストップは装備されておらず、カタログ燃費(JC08モード)は8.4km/Lとなっている。

実燃費の検証方法

・実燃費の測定は車両に搭載されている車載燃費費計を使用

・テスト期間は4月27日から5月11日までの14日間

・一般道をおよそ600km、高速道路を400kmの合計1000kmほど走行

レクサスLS460 実燃費レポート|一般道路編

・レクサスLS460 F SPORTの一般道路での実燃費:6.4km/L

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約606.5kmを走った今回の燃費レポート一般道路編。

LS460 F SPORTのキーを受け取りクルマに近付くと、ホワイトのボディカラーと相まってかなりのサイズ感だ。実寸は全長5090mm、幅は1875mmだが、もう一回りは大きく、一瞬ロングホイールベースモデルかと思ったくらいだ。

大柄のシートやミラー類を合わせて、エアコンパネルの右側にあるスターターボタンを押すと、レクサス独特の起動音と共に、エンジンは静かに目覚めた。今となっては珍しくなったゲート式のシフトレバーをDにセレクト。ゆっくりとアクセルを踏み込むと、意外にもふわっと軽く走りだした。

街中を走っていて最も魅力を感じたのは視界の良さだ。前方はもちろんの事、左後方の視界が良好なので、車線変更はもちろんの事、左折時の確認等が非常にやりやすく、このボディサイズを気楽に都内で乗り回せる。また、ステアリングフィールも良好で、ギア比可変ステアリングと相まって、街中でくるくるとむやみにステアリングを回すことなく、かつ、違和感なく確実な操舵が可能だった。

信号停止時などで、ブレーキペダルから足を離しても、ブレーキをホールドするHOLDスイッチが、ステアリングに置かれているのは、操作しやすくとても便利だ。例えばBMWなどはシフトレバー周りに配されるので、すぐに使いたい時に探す羽目に陥りがちなのだ。

そして、誰もがこのクルマに乗った時に感じる事は、乗り心地がソフトな事と静粛性の高さだろう。例えローダウンサスが組み込まれ、サイズアップした245/45R19(テスト車はBS TURANZA ER33)を履いていようとも、絶対的なセッティングはソフトで、その乗り心地はLSの性格をよく表している。更に静粛性も同様だ。初代セルシオは無音過ぎて不評を買ったといわれているが、LS460もさすがにそこまではないものの、静粛性はかなり高くこの太いタイヤであってもロードノイズの侵入は限りなく低く抑えられている。

しかし、この大径タイヤはデメリットも生んでいる。ひとつは路面の状態によってハンドルが取られがちになる事だ。同時にローダウンサスペンションの影響もあり、路面からの鋭い突き上げが直接乗員に伝わり、不快な思いをする事があった。これは、ボディ剛性の低さも原因に挙げられる。マイナーチェンジごとに補強は入ったようだが、大径タイヤとローダウンサスペンションがそれを助長してしまい、例えば歩道を超えてコンビニに入るときの段差や、少し深みのあるマンホールを通過する際などには、ボディの弱さを露呈してしまった。特にフロア周りの剛性が高く保たれれば、路面からの突き上げ等はサスペンション側のセッティングでかなり軽減できたに違いない。

F-SPORTは、専用の本革スポーツシートが採用されている。見た目は大型のソファのようでかけ心地は良さそうに見えるが、実際に長く座っていると徐々にその姿勢を保つことが出来ず、座面とシートバックの間に隙間が出来てしまい、腰の疲れを誘発してしまう結果となった。

もうひとつ、ISやRCのレポートでも述べたようにナビゲーションの使い勝手は決していいとは言えない。繰り返しになるが、まず、キノコのような形をしたリモートタッチのスイッチの位置が助手席側に配されているので、手を伸ばさないと操作できないし、その操作時の節度感もカチッとしたものではないため違和感を持ってしまう。また、PCでポインターをマウスで移動させる要領でリモートタッチを操作するのだが、クルマの中で、しかも左手での操作はかなり無理があり、どうしても、目的のメニュー位置を行きすぎて一度でタッチ出来ず、イライラすることが多かった。

さて、今回の街中を走っての実燃費の検証結果は、6.4km/Lを記録した。渋滞中のストップアンドゴーでは4km/L台まで低下することはあったが、これはやはりアイドルストップがないことが最大の要因だろう。少しでも流れ始めれば直ちに数値は回復するので、基本的には高効率のエンジンという事が出来る。直接の競合車にはならないが、BMW440iグランクーペ(直列6気筒ターボ、326ps、450Nm)の市街地燃費は8.7km/Lであることを考えると、この燃費はかなり優秀と評価できる。

レクサスLS460 実燃費レポート|高速道路編

レクサスLS460 F SPORTの一般道路での実燃費:11.4km/L

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 約400.9kmを走った今回の燃費レポート高速道路編。

あまり街中ばかり走っていてもつまらないので、高速道路へ乗り入れてみよう。料金所から一気にアクセルペダルを踏み込むと、少しだけフロントを持ち上げながら、豪快に加速を開始し、あっという間に制限速度を突破しようとする。そういった時、特に3000rpmを超えるとエンジン音が気になり始めるが、これはLS460 F SPORTに装備されているサウンドジェネレーターによる影響が大きく、あえてエンジン音を感じさせようとしているからだ。それ以外のクルージングでは、街中同様非常に静かで、かすかにエンジン音が聞こえるレベルに保たれている。

ステアリングコラムから生えているアクティブクルーズコントロールレバーで、クルーズコントロールをセットしてしまえば、あとは、ステアリングを操作するだけという、安楽なクルージングが開始される。因みに100km/hで走行時、エンジンは1500rpmあたりをゆるゆると回っているに過ぎない。しかし、ドライバーにとって、良いことばかりではない。街中で感じたシートから来る疲れはやはり高速でも同様で、腰痛まではいかないが、長時間座り続けると腰がだるくなることがあった。

また、直進安定性もいまひとつで、微妙な修正舵が必要になりがちであった。この辺りは、前述のボディ剛性を高めれば、解決するはずだが、このプラットフォームの古さから、この辺りが限界なのだろう。

高速での燃費は、カタログ値を大幅に上回る11.4km/Lを記録。カタログ燃費は市街地、高速等全てを含めた平均値なので、項目によっては上回ることはあり得るが、130%超とは恐れ入った。トランスミッションを含め、高速巡行での効率が非常に高いのだろう。これまで述べなかったが、このトランスミッションの性能は素晴らしく、シフトショックはほとんどなく、どんな場合でも望んだだけのシフトアップ、ダウンを得ることが出来、活発に走りたければ、そのように、そうでない場合は、早めのシフトアップでゆったりとした走行を楽しむ事も可能だった。

少しだけワインディングロードも走ることが出来た。今回はテスト期間にゴールデンウィークを挟んだことから、一般車が多く積極的に走ることは難しかったが、僅かばかりの経験では、やはり、これまで述べて来たゆったりしたサルーンの域を出ておらず、積極的にドライビングを楽しみたいところまでは至っていなかった。例えば、コーナー手前でシフトダウンし、フロントに荷重をかけ、ステアリングを切りながら、徐々にアクセルをオンにしていくシーンでも、ステアリングから伝わってくる路面のフィールが弱く、また、サスペンションのダンピングが弱いので、安心してアクセルを踏み込めないのだ。もちろん基本性能は高いので、コーナリングスピードは高いのだが、それと愉しさとは別次元で、不安を感じながらのドライビングは決して愉しさにはつながらないということなのだ。

気になるスイッチ類の使い辛さ

全体としてスイッチ類は整然とまとめられているが、エアコンやオーディオ系のものは少しサイズが小さく、ブラインドタッチは難しい。また、表示自体も小さいので、ユーザー層を考えるともう少し大きい方が望ましい。

ステアリングの右側にあるDISPボタンを押すと、メーター中央のディスプレイが順番に代わり、平均燃費→瞬間燃費→給油後平均燃費→給油後走行距離→走行時間→平均車速→タイヤ空気圧→カスタマイズ(上段の固定表示と下段の組み合わせ変更)が表示される。

メーター右下には、ドアミラーの調整スイッチやオートライト、ステアリングヒーターなどのスイッチ、そして、安全支援システムのブラインドスポットモニター、クリアランスソナーのスイッチが配される。その反対側には、パーキングブレーキスイッチとそのオート解除ボタン(自動でパーキングブレーキを作動させる)があるが、こういったもののうち、一度設定すればそのまま使い続けられるようなもの、例えばパーキングブレーキスイッチのオート解除ボタンは、モニター内で設定できるようにすれば、スイッチの数を減らすことが出来るだろう。もう一度、スイッチ類の優先順位付けと整理を行うことで、かなりすっきりとしたインパネ周りが実現出来そうだ。

センターコンソールには、左右前席のシートヒータースイッチも置かれる。これもスイッチ自体が小さく、涼しい風を出したいと思っても、間違って暖かい風を出してしまうミスを犯してしまった。これももう少し大きくし、例えばローラー式のものがわかりやすいと思われる。

ここで一番目立つのはダイヤル式のドライブモードセレクトだ。半時計まわりではECO ModeとCOMFORT Modeが選択でき、時計まわりではSPORT S ModeとSPORT S+が選択できる。そのまま上から押すと、NORMAL Modeとなる仕組みだ。このスイッチも果たしてこの位置が適切なのかが疑問だ。このスイッチとナビなどを操作するリモートタッチのスイッチの重要度と、操作頻度を考えると少なくとも右ハンドルでの配置は逆なのではないか。

レクサスLS460 実燃費レポート|総合評価

今回、高燃費を記録した背景には、テスターの癖があるかもしれない。それは、車間距離を比較的長く取って走るようにしていることだ。これは、緊急回避のためということが最大の理由だが、アクセルオフによる滑走時間が増えることもある。

例えば、前走車がアクセルをオフにして速度が落ち始めた場合、車間距離が近ければブレーキを踏まざるを得ないシチュエーションでも、車間距離を長く取っていれば、こちらもアクセルオフで車間距離を縮めながら、速度を落とすことが可能になるのだ。そして、前走車が加速を始めれば、こちらも元の車間距離になったころにゆっくりと加速を始めればいい。また、車重をうまく利用することで、アクセル開度を減らすことも十分可能だ。

もし、燃費が今一つ伸びないと思われた方は、一度、今の車間距離よりも1.5倍ほど長く取ってみてはいかがだろう。その時に強引に割り込んでくるクルマがいてもイライラしないことを付け加えておきたい。

閑話休題。こういった背景を除いたとしても、効率の良いプラットフォームであることは間違いない。ストレスなく回るエンジンに、スムーズなトランスミッションが組み合わされていることがその理由だ。その結果、機械的な損失が減るとともに、ドライバーも無駄な加減速を行わなくなるので、必然的に燃費が伸びるのだ。残念ながら、アイドルストップが付いていないため、この辺りが限界だろうが、間もなく出る次期型では、更なる燃費の伸びを期待したいと思う。

今回のテストを通して、ボディ剛性の低さを取り上げたが、これは、設計の古さから来るものも大きくあるだろう。本来ショーファードリブンも視野に開発されていることを踏まえると、しなやかな乗り心地と引き換えにこの程度の緩さは許容範囲だ。そこにF SPORTを作ったわけだから、無理は出てしまう。それが、路面からの突き上げや、直進安定性の甘さとなって表面化してしまったのだ。

つまり、現行モデルをドライバーズカーとして購入するなら、見た目のスポーティさは魅力ではあるが、F SPORTは外した方が良いかもしれない。その方が、ゆったりとした余裕のあるLSらしい乗り心地を味わうことが出来るだろう。テスターとしても、大型のハイパワーセダンは好きなジャンルなのだが、長距離を走ることを考えると、F SPORTとは真逆のVersion Lを選ぶ。

次期LSではなぜ、ドライバーズカーに振ったのか。それは、ユーザー層の若返りが大きい。更に、ニューヨークオートショーで発表されたF SPORTは、かなりスポーティなモデルに仕立てられていることが予想される。

残念ながら、今回テストしたモデルは、積極的にドライブを楽しめるところまでは至らなかったが、次期型ではF SPORTのトップモデルとして、素晴らしい走りを期待したい。

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レクサスLS460 F SPORT 主要スペック

レクサスLS460 F SPORT 主要スペック
グレード LS460 F SPORT
駆動方式 FR(2WD)
価格(税込) 10,151,000円
JC08モード燃費 8.4km/L
トランスミッション 8速AT
全長 5,090mm
全幅(車幅) 1,875mm
全高(車高) 1,455mm
ホイールベース 2,970mm
乗車定員 5人
車両重量(車重) 1,990kg
エンジン V型8気筒DOHC
排気量 4,608cc
エンジン最大出力 288kW(392PS)/6,400rpm
エンジン最大トルク 500N・m(51.0kgf・m)/4,100rpm
燃料 無鉛プレミアムガソリン

▼レクサス 新型LSがフルモデルチェンジでクーペのような流麗なシルエットに(公式動画)

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内田 俊一
筆者内田 俊一

1966年生まれ。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を生かしてデザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。また、クラシックカーの分野も得意としている。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員記事一覧を見る

樺田 卓也 (MOTA編集長)
監修者樺田 卓也 (MOTA編集長)

自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。

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