ホンダ クロスロード 試乗レポート

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純粋な“日本メーカー発の日本市場専用車”

日常を備えた非日常――何やら“形容矛盾”とでも言えそうなそんなフレーズが、実はホンダ発のブランニュー・モデル『クロスロード』開発のひとつのテーマと言う。ここで指し示す「日常」とは、3列のシートを備えて多人数乗車が可能である事に加え、取り回し性や燃費にも優れるという実用性の高さなど。一方、「非日常」の方はありきたりのミニバンやハッチバックモデルなどとは一線を画したスタイリングを備え、乗ってみればインテリアのデザインや視界の広がりなどに、これまでのモデルにはない斬新さを感じられる事、とでも解釈すれば良いだろうか。

そんなクロスロードで最も重要なキーポイントは、このクルマが久しぶりに純粋な“日本メーカー発の日本市場専用車”であるという事柄。確かに今でも、日本のために作られた日本のクルマは少なくない。が、振り返ればそれらの大半は軽自動車もしくはミニバン、というのが現実。そんな状況の中に久々に投入された小型車がこのモデル。停滞する日本の自動車マーケットに風穴を開けたい!という意気込みがそこには感じられる。

日本での優れた使い勝手を徹底して追求

クロスロードの全長は「日本市場を念頭に開発された初代CR-Vマイナス100mmをイメージしたもの」。一方の全幅は「1700mmを下回る“5ナンバーサイズ”も考えはしたものの、デザイン等の絡みもあって現状に落ち着いた」と言う。ただし、最小回転半径を5.3mに抑えると共にボディ前端左右を“隅切り”するなどで、「実質的な取り回し性は、この点で定評あるモビリオ同等以上を確保した」とアピールされる。いずれにしても、まずは日本での優れた使い勝手を徹底して追い求めたのがこのクルマの各ディメンションだ。

ガラスと窓枠をツライチ化するフラッシュサーフェスの処理やボディパネルとの一体化を進めたビルトインバンパーなど、昨今の流行には敢えて逆らったデザインキューを用いて仕上げられたエクステリアは、ちょっとばかりの無骨さがまたなかなかの存在感を演出。見やすい丸型メーターを収めたダッシュボードは、全体的に角ばったデザインがちょっとレトロなラジカセ(死語?)風だ。ちなみに、「亜流のミニバンとは絶対に受け取られたくなかったので、フロントシートは敢えてベンチ・タイプにはしなかった」と。サードシートでの居住性は「短時間なら何とか耐えられる程度と割り切った」というのも特徴だ。

好印象は「ほぼ期待通り」な2リッター 4WD

ホイールベースは40mmのマイナスとなるものの、クロスロードのボディ骨格/各種ランニングコンポーネンツのベースとなったのは現行のストリーム。エンジンバリエーションや駆動システムも基本的には「ストリームからの贈り物」。ただし、トランスミッションは5速ATのみで、ストリームの2リッターFWD仕様に採用されるCVTはクロスロードには使われない。

テストドライブを行ったのは2リッターの4WD仕様と1.8リッターのFWD仕様の2タイプ。まずは前者でスタートすると、決してパワフルでスポーティというわけではないが、全体的にはその走りはなかなかの好印象だ。率直なところ1.5トンほどの重量に対してはもう少しのエンジントルクが欲しい場面もあるし、フットワークのしなやかさ“極上”とまでは言いかねるもの。が、ハンドリングや乗り心地は「ほぼ期待通り」という印象。坂道発進時のずり下がり防止機能を含むESC(ホンダ名“VSA”)が標準装備で250万円を下回る価格から・・・となれば、これはなかなかに「お値打ち感」が高い。

一方、後者の仕様には個人的には今ひとつという印象を抱かざるを得なかった。前者に比べると走りのフラット感が大幅に落ち、どこかヒョコヒョコと常に挙動が落ち着かない印象なのだ。何よりも、この期に及んでオプション設定でもESCが用意されないのが痛い。まさか「日本専用車には時期尚早」などと考えてはいないはず、と信じたいのだが。

“密かにヒットの予感”が漂う

ウインドシールドとAピラー角度が立ち気味なお陰でフロントシートへの乗降性は良好。ワイド画面のTVを見るような前方視界の広がり感がなかなかに新鮮。Aピラーの生み出す死角が小さく、フロントフードの一部が視界に入るので狭いスペース内での取り回し性も良好・・・と、多くの点で「さすがは日本の事情に詳しい日本のメーカーが作ってくれただけの事はある」と好感を抱けるのがこのクルマのパッケージング・デザイン。海外市場をメインに開発されたものが片手間(?)に売られるという現在の多くの日本のモデルとは、やはり“生まれ”が違う事がそこでは実感出来る。その点では、久々に爽やかな印象を受けられるのがこのクロスロードでもある。

一方、少々残念なのは前出した仕様の差による乗り味のバラツキの大きさや、今ひとつ納得し難い装備の設定の仕方。しかし、「クルマの種類は数多くあるのに、どうも欲しいモデルが見つからない」という人の中にはこんなモデルを待っていた人も多いのではないだろうか? 実際、ぼくの周辺にもこれを「ちょっと気になるクルマ」と語る人は少なくない。密かにヒットの予感が漂うクロスロードでもあるのだ。

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河村 康彦
筆者河村 康彦

1960年東京生まれ。工学院大学機械工学科卒。モーターファン(三栄書房)の編集者を経て、1985年よりフリーランスのモータージャーナリストとして活動を開始し、現在に至る。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員、ワールド・カー・オブ・ザ・イヤー選考委員、インターナショナル・エンジン・オブ・ザ・イヤー選考委員 などを歴任。記事一覧を見る

樺田 卓也 (MOTA編集長)
監修者樺田 卓也 (MOTA編集長)

自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。

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