アストンマーティン ラピードS 海外試乗レポート/西川淳(1/2)
- 筆者: 西川 淳
追加グレードではなく、いわゆるマイナーチェンジ版
2010年にデビューした4ドアのアストンマーティン、ラピード。2013年春のジュネーブショーでラピードSへと発展し、4月26日(金)に日本でも正式に披露されたばかり。そんなラピードSの国際試乗会がスペインはカタルーニャ地方で行われ、ひと足早くその驚くべき進化を味わってきた。
「ラピードS」というネーミングから追加グレードのように思われるかもしれないが、そうではない。
アストンマーティンは“後継モデル”と言うが、いわゆるマイナーチェンジ版というべきだ。グリルが巨大になって、フロントマスクのイメージががらりと変わったため、“おやっ”と思った方も多いはず。けれどもシルエットはまったく変わらない。あとは、パフォーマンスアップに伴って、リアトランクリッドをつまみ上げたのみである。
チーフデザイナーのマレック・ライヒマンがいみじくも実車を前に言っていたのだけれど、インパクトの強いビッグマスクは、腹の長さを隠す効果がある。なるほど、見る者の視線はまず大きなグリルに向かい、それから初めて後ろへと目線を移すから、不思議と旧型よりも、低くワイドに構えているように見える。
大きくなったグリルには、見た目のデザインのインパクト以外にもう一つ、大切な機能が託されている。
衝突時の歩行者保護に積極的な役割を果たすよう、設計されているのだ。4つの回転式ピンでボディに取り付けられたアルミニウム製の巨大な一枚グリルは、万が一、歩行者と接触した場合、その衝撃でまずはピンが回転して外れ、グリル全体が内側へと押し込まれるように設計されている。つまり、アルミグリルが衝突時のインパクトを和らげる一枚の大きな緩衝材として作用するのである。
その次の段階、つまり頭部の保護はどうなっているかというと、他のブランドのように付帯システム、たとえば少量の火薬を使ってフードを持ち上げるポップアップ式などは採用していない。V12エンジンの搭載位置を、従来モデルよりも19ミリ下げたことで、アルミフードとエンジンとの間に十分な空間ができ、それがクッションとして作用して、規定の衝撃吸収を達成する、という仕組みだ。
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