フォルクスワーゲン ゴルフR32 海外試乗レポート(2/3)
- 筆者: 河村 康彦
- カメラマン:フォルクスワーゲン・グループ・ジャパン
スポーティだけじゃない“プレミアムなハイパフォーマンス・モデル”
R32は、ゴルフ・シリーズきってのスポーティ・グレードという位置づけの持ち主。しかし、そうなると「ちょっと待てよ」という人も現れるだろう。そう、最新のゴルフ・シリーズには、すでに『GTI』というホット・モデルがラインナップされているからだ。
エンジン気筒数には、GTIは4気筒でR32は6気筒という違いがある。前者がターボ付きで後者が過給機ナシというのも大きな相違点だ。それゆえに、絶対的なパワーでは250psを表示するR32が上を行くものの、排気量当りの出力ではGTIの心臓がR32用を上回る。GTIはFWDでR32は4WDというシャシーのデザインの違いも見逃せない。こうして、両者のハードウェア上の代表的な相違点は、その心臓部であるエンジンと駆動レイアウトに集中される事になっている。
確かにこうして、同じゴルフとは言ってもそのパワーパックを中心に両者の“中身”の違いは少なくない。けれども、いずれもが最高速が200km/hを大きく超える速さをアピールし、どちらも“スポーティ”という記号性を前面に押し出しているという点では共通だ。日本での価格は今のところ未発表ながら、すでに発表済みの本国ドイツではGTIに対して7,650ユーロ、すなわちおよそ100万円のプラスと小さくない差を打ち出すのがR32。
そう、VWではR32を単なるスポーティ・グレードとしてではなく同時によりゴージャスで、プレミアム性に富んだゴルフとしてもアピールしようとしている。「速くて豪華」なのがR32の売り物なのである。
開発陣のそんな狙いというのは、“ワッペン・グリル”部分がメタリックな光沢仕上げとされたり、テールパイプが専用デザインのバンパー下部から2本出しをされたりしている点からも推測が出来る。GTIの17インチに対し、18インチとより大径のアイテムが奢られたシューズも、やはり同様な意図によるものと判断出来る部分だ。R32はどこをとってもゴルフ・シリーズ中「ナンバー1の存在」でなければならないのだ。まずは見栄えでGTIに対する“100万円の価格差”を理解して貰おうというのが、VWの戦略の第一歩と考えられる。 そんな狙いが感じられるのはインテリアも同様だ。
GTIのそれに比べると、さらに華やかさを増したメタル調の加飾パネルを供えるダッシュボード/ドアトリムや300km/hまでの目盛りを持つスピードメーターが、GTIを凌いで「我こそがナンバー1のゴルフ」である事を無言のうちにアピール。その一方で、エクステリアにもインテリアにも『4WD』を示すものは何ひとつ存在しないのも逆にユニークだ。
VWでは「GTIは“スポーティ”で、R32は“プレミアムなハイパフォーマンス・モデル”」であると説明する。それでは、実際に乗るとそんな両者のテイストの差というのはいかなるものであろうか?
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