クルマもIT化へ!ソフトウェアダウンロードで簡単に自動運転車に!未来のカタチが現実に(2/3)
- 筆者: 清水 和夫
- カメラマン:茂呂幸正
テスラはクルマとして優れた性能を備えている
お手並み拝見とばかりに、私はモデルSを借り受けて、冬の名残が色濃い軽井沢に向かった。コックピットに乗り込んで最初に目に飛び込んでくるのは運転席と助手席の間に置かれた17インチのタッチスクリーンだ。とにかくデカい。ノートパソコンが丸ごと収まっているようなもので、カーナビやカーオーディオ、空調などの操作はすべてこのスクリーンで行う。
エネルギー消費量や航続距離予測もリアルタイムで確認できるし、カレンダーやGoogleマップなどはスマホに近い。さすがIT出身のイーロン・マスクが創ったEV、とにかくイマドキの機能が満載されている。ただ、あまりにスクリーンが大きすぎるため、慣れるまで少々気になるのが難点。ともあれ、こいつがドライブのパートナーなのだ。
走り始めてまずインパクトがあったのが、静かで、トルクフルで、高級スポーツサルーンと呼ぶにふさわしい走行性能だということ。特にアクセルレスポンスの良さには驚いた。どんなレーシングカーよりも良いのではないかと思ったほどだ。
EVは電気で制御しているので、ドライバーがペダルを踏めば、その意思を電気信号でダイレクトに末端まで伝える。ブレーキペダルにしても、エンジン車のように油圧をエンヤコラと動かすのではなく、瞬時にモーターで制御可能。さらに回生ブレーキも使えるから、アクセルを戻せばコンマ2Gくらいの回生ブレーキがかかる。自動運転の議論以前に、クルマとして優れた性能を備えていると感じた。
だからこそ、ハンドルの左下にあるボタンを押して、アダプティブクルーズコントロール(ACC)をオンにしてからも非常に快適だった。加速も減速も応答性が良いから、追従性も良い。追従走行だけを見たら、現在市場にあるモデルのなかでもピカイチと言っていいかもしれない。
実はこのスイッチ系はどこかで使ったことがあるようなデジャブ感覚を覚えたのだが、メルセデスと同じスイッチを使っている。その操作性は抜群で、ほかのどのクルマよりも使いやすい。
HMIの設計思想がテスラのアドバンテージ
自動運転の機能では自動で車線変更を行うオートレーンチェンジが最も注目すべきポイントだ。ドライバーがウインカーを出すと、システム側がソナーやカメラを使って前後左右の状況を確認し、車線変更可能な条件だと判断すれば、ウインカーを出した側の車線へ、スムースに移動するという。
本当に周囲のクルマに迷惑をかけることなくレーンチェンジが出来るのかと、免許取りたての娘の運転を見守るような冷や冷やした気持ちだったが、モデルSはなめらかにこれを実行した。
厳密にいえば、ウインカーを出したあと、移動したい方向にハンドルをソッと切る。それが人間からクルマへの合図になるのだ。このとき、ハンドルを強めに動かすと、ドライバーオーバーライド(ドライバーが自分で運転するという意思表示)が機能するからオートパイロットはキャンセルされる。
このような人間とシステムの接点に係る技術をHMIというが、この設計思想がテスラのアドバンテージになると感じた。テスラの開発チームにはメルセデスの元エンジニアがいて、許可を得た上でメルセデスと同じ部品を使っているという。人間中心の設計思想はそんなところから生まれたのだろう。
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