“スバル好き”視点から見るスバル レヴォーグ 新型車解説(中編)/マリオ高野(4/4)
- 筆者: マリオ 高野
発売直前まで煮詰められているレヴォーグは、実に稀有な日本車だ!
今年1月下旬にツインリンク茂木で自動車メディアが試乗したプロトタイプでは、多くの人から標準グレードの「GT」は脚の硬さが指摘され、よりスポーツ度を高めたビルシュタインダンパー採用の「GT-S」のほうがしなやかであると評されました。
自分もおおむね同じ感想で、
「初代~2代目インプレッサWRXなどのガチガチ世代のスバル車から乗ってきた人にとっては、GTグレードの硬さでも違和感なし。ただし、新規スバルユーザーにはちょっと硬すぎと思われる懸念あり。GT-Sがベスト」
という感じでしたが、プロトタイプはその後さらに熟成し、3月に鈴鹿サーキットで販売会社の関係者が試乗した改良版では、基準車のGTのしなやかさが大幅に増したとのこと。
販売会社関係者から集まった意見を元に、最終型の市販仕様ではさらに熟成を極めるようですが、発表が4月というのに、3月の段階でさらに足回りのセッティングが熟成されたという事実には、激しく驚愕しました。
従来の新型車開発の常識では、足回りの仕様なんてものは発表の1年ぐらい前には決定しているというイメージですので、それほどギリギリまで煮詰められているクルマはレヴォーグをおいてほかにないでしょう。普通なら、とりあえず決まった仕様で出しておいて、微細な修正点は2年後のマイナーチェンジあたりで反映するものです。
スバルは1年ごとにアプライドを進化させ、時には乗り味を大幅に変えることも珍しくない欧州メーカーのようなメーカーですが、レヴォーグは発売直前の超ギリギリの段階までエボリューションしている希有な日本車といえるでしょう。
個人的には、1月時点でのプロトタイプでも十二分に悶絶できる甘美な味わいとなっていましたが、最終の市販版の乗り味を確かめるのが楽しみです。
スポーツ性重視のユーザーは、迷わず2リッター車を選ぶべし!
AWDシステムについては、レヴォーグの1.6リッターエンジン搭載車には「ACT-4」と呼ばれるアクティブトルクスプリット式、2リッターエンジン搭載車には「VTD-AWD」と呼ばれるATのトップスポーツグレード向けに用意されてきたお馴染みのシステムが組み合わされます。
筆者が昨シーズンの冬、雪上/氷上路面にて、現行レガシィではありますが「ACT-4」と「VTD-AWD」の乗り比べテストを実施したのですが、両者の個性はかなり異なっていました。
1.6リッターに採用される「ACT-4」は、基本的には前輪への配分が多めなことからFF的な挙動を示すも、後輪のトルクが欲しい場面ではしっかり後ろから蹴ってくれる感触が伝わり、極めて安定しながらも退屈させないところが他のFF的AWDと明確に一線を画すポイントです。超低μ路ではVDC(横滑り防止)の制御がクルマを旋回させる方向にも働くなど、電子制御の緻密さに感動しました。
一方で2リッターに採用される「VTD-AWD」は、前45対後65の駆動配分を基本としFR的な挙動が出るのが特徴ですが、その特徴は超低μ路で如実に現れ「よりスポーツしたい人には断然!“VTD-AWD”」との結論に達しました。
この結果をふまえて考えると、レヴォーグは採用されるAWDシステムの違いでも明確に個性を分けており、やはり、GTとGT-Sのグレードによる違いよりも、排気量の違いでクルマの個性を大きく差別化していることがわかります。
したがって、何よりもスポーツ性を重視したい人は迷わず2リッター車を選ぶのが良いでしょう。
さらに、レヴォーグには、VDCによる衝動の安定制御の考えをさらに一歩進めた「アクティブトルクベクタリング」を全車に採用。これはコーナリング限界付近において、内側前輪にブレーキをかけ、よりニュートラルステアに近づけてコーナリング限界を高めてくれます。
1月時点でのプロトタイプ(ドライ路面のサーキット)では、実は正直言ってその効能をハッキリと実感はできなかったのですが、現行型のレガシィやインプレッサシリーズ(G4/スポーツ/XV系)でも実感できるVDCの制御の巧みさを思うと、低μ路では相当な効果が発揮されるはずです。
さらにレヴォーグは、新世代のプレミアムモデルとして納得の高い静粛性を実現。空力面も入念に煮詰められており、プロトタイプ試乗ではアウトバーン的な速度域でもハイレベルな静粛性が確保されているのです。
[後編へと続く]
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