狙いは? 今年は全国各地で自動運転試験が一気に増える理由とは

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沖縄で連日、自動運転実証試験

自動運転

ここは那覇から車で40分ほどの北谷町(ちゃたんちょう)。地元の若者や観光客に人気のアメリカンビレッジがあることで有名だ。北谷町の沿岸部の歩道で、大勢の報道陣が見守るなか、自動運転の小型カートが走行した。

走行に先立ち、北谷町の野国昌春町長らがテープカット。その前には、『ラストマイル自動走行の実証評価出発式』という看板が掲げられた。

この前日、同じく沖縄県内の石垣島では、『石垣市におけるバス自動運転実証実験出発式』が開催され、石垣市の中山義隆市長らがテープカットした。こちらは、中型バスが16キロメートルに渡る公道で自動走行するものだ。

こうした自動運転の実証試験が最近、全国各地で始まっているが、今後さらにその数が一気に増える。しかも、実証試験の名目が様々ある。

いったいこれは、どういうことなのか?

自動運転には大きく2つの流れ

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そもそも自動運転とは何なのか、という点から整理をしてみよう。

自動運転という発想は、いまから80年ほど前に米ゼネラルモータース(GM)がニューヨーク万博で披露した『オートメイテッド・ハイウェイ』まで遡ることができる。

第二次世界大戦の後、1950年代にはGMが電気メーカーの米RCAと組んで実車による実験を始めている。その後も、自動車メーカーや大学、または欧米や日本の政府系研究機関などで基礎研究が黙々と進んできたが、大きなムーブメントは起こらなかった。

転機となったのは2000年代に、米国防総省の先進計画局(DARPA:ダーパ)が自動運転の賞金レースを3回実施した。ここに参加した大学の研究者らがその後、米グーグルや米アップル、さらには独メルセデス、アウディ、また部品メーカ―のコンチネンタルやボッシュの自動運転プロジェクトに引き抜かれ、量産化に向けた基礎研究を進めた。

そして、2013年あたりから、自動車メーカーや各国政府が自動運転の早期量産化を続々と表明。一気に世界的な自動運転ブームが訪れた。

こうした中、日本を含めて自動運転では現在、大きく2つの流れがある。

ひとつは、前述の沖縄県での実証試験のように、バスや小型コミューター、またはタクシーや荷物の配送事業などを対象とした、サービスカーに関するモノ。こちらは、無人走行を前提とした完全自動運転に近いかたちを2020年前後までに実現することを目指している。

もうひとつが、スバル・アイサイトや日産・プロパイロットなど、自動車メーカーが量産に搭載している、自動ブレーキ、自動アクセル、自動ステアリングなどの技術が徐々にレベルアップして、完全自動運転に到達するのは2025年から2030年にかけてを考慮しているモノ。こちらは、乗用の所有車を想定しているため、オーナーカーと呼ばれる。

ではどうして最近、日本でサービスカーによる自動運転の実証試験が増えているのか?

狙いは、2020年をキッカケとした成長戦略 

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これは、政府の成長戦略の一環だ。

そもそも成長戦略は、民主党(当時)政権時代から具体案が示され、第二次安倍内閣になってからより実効性が高い政策が次々と打ち出されてきた。

その中で、日本の技術力をマネタイズ(事業化して換金)することを前提に、世界各国との競争力強化となるの様々なプロジェクトの旗頭として、政府が自動運転を充填的にプッシュしているのだ。

その中核となっているのが、内閣府による『戦略的イノベーション創造プログラム(略称SIP)』で、前述の石垣島の事案が含まれている。

SIPの予算の中で、国土交通省がこれから実施するのが、全国各地の道の駅を拠点として行う実証試験。こちらは現在5カ所が選定され、今後さらに5カ所増えて合計10カ所になる。

そして、北谷町での実証は、経済産業省が主体となり国土交通省と連携する、『ラストマイル(端末交通)』に関するモノ。ラストマイルとは、駅やバス停などから自宅までの、1マイル(1.6キロメートル)など、徒歩では少し遠いが交通手段がない地域などを想定している。こちらは北谷町を含めて、全国4カ所で行う。

さらに、最近は加計学園問題で注目が集まる、内閣府の国家戦略特区で、ドローンによる実証なども連携するかたちでの秋田県仙北市の実証など、全国5カ所。その他にも、愛知県や福岡市など、地方自治体が独自の予算で実施する自動運転の実証試験がある。

筆者は世界各国、さらに日本の全国各地で様々な自動運転の実証試験の取材をしているが、そうした立場でも、最近になり急増している日本での自動運転の実証試験の実態をすべてカバーすることは難しい。それでも、なんとか対応しようと、全国各地を飛び回っている状況だ。

政府としては、2020年の東京オリンピック・パラリンピックを『ひとつのきっかけ』として、サービスカーによる自動運転の量産化、さらに自動車メーカーと連携したオーナーカーによる自動化の流れを加速させたい考えだ。

2017年、全国各地で始まる自動運転の実証試験。また、2018年になると国連による世界基準の変更によって自動車線変更が可能となるため、自動車メーカーによる自動運転を使った新型車がさらに増加する。

一般の方々には是非、こうした状況をサービスカーとオーナーカー、ふたつの自動運転のトレンドとして捉えて頂きたいと思う。

[Text:桃田健史]

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桃田 健史
筆者桃田 健史

日米を拠点に、欧州、BRICs(新興国)、東南アジアなど世界各地で自動車産業を追う「年間飛行距離が最も長い、日本人自動車ジャーナリスト」。自動車雑誌への各種の連載を持つ他、日経Automotive Technologyで電気自動車など次世代車取材、日本テレビで自動車レース中継番組の解説などを務める。近著「エコカー世界大戦争の勝者は誰だ?」(ダイヤモンド社)。1962年東京生まれ。記事一覧を見る

樺田 卓也 (MOTA編集長)
監修者樺田 卓也 (MOTA編集長)

自動車業界歴25年。自動車に関わるリテール営業からサービス・商品企画などに長らく従事。昨今の自動車販売業界に精通し、売れ筋の車について豊富な知識を持つ。車を買う人・車を売る人、双方の視点を柔軟に持つ強力なブレイン。ユーザーにとって価値があるコンテンツ・サービスを提供することをモットーとしている。

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