メルセデス・ベンツ CLクラス 海外試乗レポート(3/3)
- 筆者: 石川 真禧照
- カメラマン:ダイムラー・クライスラー日本株式会社
高級車らしい音の静かさと、高級スポーツモデルにふさわしい動力性能
試乗したのはCL600とCL500の2車種だ。用意されたCL500は、AMGルックのスポーティ仕様なので、タイヤサイズが19インチになる。
最初はCL600を指名した。これはV12のSOHC、ツインターボで、5.5Lエンジンは、従来モデルよりもパワー/トルクともにアップしている。パワーは380kW/517ps、トルクは830Nm/84.7kg-mを発生する。 CL600の車両重量は2,620kgになるが、それでもこのパワー/トルクは十分だろう。
ミッションは5速AT。ハンドル裏にマニュアルシフト用のスイッチが装備されている。カタログデータでは0→100km/hを4.6秒で走り切るという。実際に公道上で、手持ちのストップウォッチで加速タイムを計測してみたが、5秒台前半を出したのだ。
V12エンジンは5.5Lという大排気にもかかわらず、気持ちよく6,000回転まで上昇する。とてもスムーズなエンジンで、しかも5,000回転でも音の高まりは抑えられている。高級車らしい音の静かさと、高級スポーツモデルにふさわしい動力性能を備えている。なにしろ、5,000回転まで各ギアで回わすと2速で120km/h、3速で180km/h、4速で240km/hに達してしまうのだ。
一方、100km/hで日本的に走行すると(町中は別々にして、郊外に行くと誰もこんな低速で走っていない!)5速1,700rpm、4速でも2,000rpmなのだ。メーカー発表の燃費は約7km/Lとなっている。サスペンションはABC(アクティブ・ボディ・コントロール)サスペンションシステムを採用している。これはセンサー信号をもとに前後アクスルに設けた油圧シリンダーがボディのピッチとロールを抑えるというメカニズム。
しかしCL600は、最上級車という考え方からか、意外に横方向のユレが大きめ。ハンドルを左右に切ると、ボディはユラユラと動くのだ。ハンドルの操作力が軽めなので、余計にこの横ゆれは気になった。もっとも、このテの高額なクーペを購入する人たちは、おそらく誰もそんな運転はしないから、この横方向の動きは、気にならないのだろう。それよりも、重めだが、よく効くブレーキのほうを、重視するに違いない。
CL500は、V8のDOHC、5.5Lエンジンを搭載する。こちらは285kW/388psのパワーと530Nm/59.2kg-mのトルクを発生する。新開発のこのユニットは6,000回転まで軽々と上昇する。ミッションは7速で、マニュアルシフトモード付だ。
CL500は、エンジン音も4,000回転からクオーンという快音を発し、トルクも2500か5,300回転からグンと盛り上がるというスポーティなセッティング。ABCサスペンションも上下方向のかたさがCL600よりも強い。0→100km/h加速はメーカー値は5.4秒。手持ちの計測では6秒台前半を記録した。キビキビとした走りとスポーティなムードを楽しむのならば、CL500という選択だろう。
このCLクーペは、2ドアクーペとしては世界でもトップクラスに入るクルマだ。 試乗会場に来ていたCLの開発関係者に、ライバルを訪ねたら、おもしろい答えがかえってきた。
「ライバルというと、ベントレーやアストンマーチンと思うけど、CLを購入する人はすでにそういうクルマは所有しているから、買い足しだね。むしろ、ライバルは海の大型クルーザーかな」
そう!CLクーペはそういうクルマなのです。
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