ルノー 新型 メガーヌ エステート GTライン[2013年モデル]試乗レポート/渡辺陽一郎(2/2)
- 筆者: 渡辺 陽一郎
- カメラマン:茂呂幸正
スポーティな形状だがアタリの柔らかい「癒し系」シート
そこで「アレッ?」と思ったのがフロントシートの座り心地。GTラインという車名に相応しく、サイドサポートの張り出したバケット風なのだが、当たり方が柔らかく体に馴染む。座面が体に合わせて適度に沈み、スッポリと包んでくれる感じだ。おおげさに言えば、ちょっと「癒し系」な掛け心地だ。
もちろん適切な運転姿勢に調節したが、ドイツ車のように「背筋を伸ばして両脇を引き締めて運転するんだぞ、ほれ、バックレストをもっと立てなさいっ」と、上から目線で押し付ける印象はない。「バックレストの腰の当たり方を調節できるランバーサポートも付けたから、上手に調節してね」と優しい。
「はい、分かりましたマドモアゼル!」と何となく素直な気分になって発進。
アライアンスを生かし「日産の2.0リッターエンジン&CVT」を採用
エンジンはごく普通の2リッターだ。最高出力は140馬力(6000回転)、最大トルクは19.9kg-m(3750回転)。最近は輸入車といえば最大トルクが25kg-m前後の1.6リッター・ターボとか、35kg-m前後に達する2リッターのクリーンディーゼルターボなどを運転する機会が多いから、普通の運転感覚が妙に懐かしい。
「う~ん、何だか日本車みたいだね」と思ってカタログを見れば、シリンダーの内径/84.0mm×行程/90.1mmの数値は、エクストレイルやセレナが搭載するMR20型と同じ。加速を開始すれば、ATは無段変速式のCVTで、これもエクストレイルと同様の6速マニュアルモード付きだ。
「ルノーに乗ってエンジンとCVTは日産車ですかっ!」と思う半面、別の感慨も沸き上がった。1950年代から60年代にかけて、今はトラックメーカーになった日野が、往年のルノー4CVをノックダウン生産していたからだ。日野はルノーから技術を学んで、4CVと同じくリヤエンジンのコンテッサを開発している。いわば日本車の恩師だ。「日本のメーカーも、恩師に近づけたのかな」とちょっと嬉しくもあった。
日産のMR型とほぼ同じく、2000回転で最大トルクの87%を発揮する設定とあって、運転感覚は扱いやすい。面白みはないが、クセのないエンジンだ。
ドイツ車とはまた違う、カラダに馴染む乗り味
操舵感や走行安定性は良好だ。機敏に向きを変えるタイプではないが、4輪がしっとりと路面に接している感覚。シートと同様、体に馴染む乗り味に仕上げた。
背景には運転席の位置関係もありそう。運転席が前後輪の中央寄りにあるので、ドライバーを中心に旋回する感覚になる。ベースの5ドアに比べると、後輪が60mm後退しているが(エステートの方がホイールベースが60mm長い)、それでも操舵に対するクルマの動きが自然な印象だ。
その代わりデメリットもあり、ホイールベースが2700mmのワゴンとしては、リヤシートの膝先が少々狭い。身長170cmの大人4名が乗車して、リヤシートに座る同乗者の膝先に、握りコブシが2つは入らない。やや腰の落ち込む着座姿勢も気になる。
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